3 ― 星見る手紙 ―
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次期当主 レグルス
─アッサ防衛軍某基地・医務室内個室部屋─
[意識を戻した将は、肉体機能修復再生装置による治療を受け意識不明の翌日には左脇腹の傷を塞いだ。
（しかし、まだ完全では無い）
二等兵から手紙受け取った軍医が将に手渡す。
変化した宛名に、獅子面の下、
僅かな笑みを浮かべていた。
自分の執務室付新兵を呼び出すと]
執務室付新兵。便箋と封筒、万年筆に封蝋。
此れらを執務室より持って来てくれ。
後は斥候隊隊長の大尉に此れを。
[新兵に渡したのは１枚のメモ。
役者が属する（……属していたが正しいか？）
一座の座長の所在地を調べよという指示を暗号で記したもの。>>5:-23]
次期当主 レグルス
[現在一座は軍部の保護下にあるものの、
将自身は一座全てのものの所在地を
瞬時に把握している訳ではない。
このように、一座の者に用件がある際や
何らかの理由で連絡が必要な時は
保護・監視・護衛の兵に連絡を取るか
斥候隊の情報通信班に確認する方が早い。
案の定大尉から一座座長の所在地を直ぐに報告された。]
次期当主 レグルス
[手紙の返事、王からの言葉に答えるのは然程問題ないのだが、自らの頼みについてどう触れようか。
将は悩んでいた。
手紙の内容を見て、役者に頼みたい事柄が出来たのだがそれを暈して伝える方法が思い付かない。
自分の頼みは別に拒否されても良い、
引き受けてくれてば幸いというだけのもの。
役者としての復帰も考慮すると多忙にさせてしまうか？と慮っているのもある。
会いたい者もいよう、やりたいこともあろう。
自由を経た後は本人の好きにさせてやりたい。
彼の星へ赴いてから出来なかったこと全てを。
暫く唸っていたせいで傷口が開いたかと看護兵がやって来たり、一斉摘発の件で部下が頻繁に訪れたりと色々あったがやがて万年筆を取り書き始める。]
次期当主 レグルス
─狂気に堕ちた復讐の女神、今此処に眠れり─
[時は、来た。一斉摘発当日。
将は毅然とした態度で第一艦隊をはじめとするアッサ防衛軍・ウル銀河同盟軍の一斉摘発精鋭達を見据えた。
惑星アッサ防衛軍、ウル銀河同盟軍の両軍司令長官名代であるからこそ普段以上の兵力を動かせた。>>0:172>>0:47>>0:53
戯曲を執筆したのは人工知能「復讐の女神」
そして製本・データ化し発行する発行元。
──役者へ戯曲を差し出した差出人達。
>>2:31>>2:32>>2:37>>4:37>>4:45>>4:48
一同が戯曲発行に必要な機材を詰め、
惑星プルシャンブルーに
進行しているとの情報は既に取得済み。
亡霊の王の手紙があったから、
>>3:-50>>3:-51>>3:-52
大尉より此の情報を得られた。>>4:40>>4:41>>4:42]
次期当主 レグルス
斥候隊情報通信班に
人工知能ニミニッツの“使用”を許可する。
『閉鎖史書』を執筆した人工知能「復讐の女神」を
搭載し惑星プルシャンブルーへと進行する
彼奴等の航宙船の操作部を制御し、
人工知能「復讐の女神」と
『閉鎖史書』のデータ全てを破壊せよ。
全宇宙各地に散りばめられたバックデータも
銀河間警察・協力関係にある銀河星系全てと協力の元
全て破壊せよ、大元さえ断たれれば
脅威は二度と生み出せん。良いな？
[アッサ防衛軍所持の人工知能ニミニッツ。
普段は戦闘補佐にナビゲート・情報照会と
多岐に渡る軍務を受け持っているが、
ハッキング及びデータ・人工知能破壊工作と敵艦操縦権掌握等は司令長官権限が無いと行使出来ない。将は今、正にその権限を持ち合わせていた。]
次期当主 レグルス
[艦隊を率いステルスで目標の航宙船に接近。
銀河間警察・他軍部の艦隊により包囲網が完成すると、全艦ステルスを解除し一斉摘発の勧告と投降を呼び掛ける。
勿論相手の親玉格が指示を出し、
攻撃しようとするものの主砲は動かず。
それどころか自動操縦機能に異常発生、
目的地の航路を大幅に外れ始めたことに気付くと大急ぎで解析に慌てふためく様を、将は監視カメラ越しに見ていた。]
・・・・・・・・・
……遅い、既に手は打っているのだよ。
どうやら我らの攻撃と制圧を警戒して
対策を練っていたようだが、当てが外れたな。
其方は銀河警察と他銀河星系軍部の役目。
我らの真の役目は、此れだ。
[人工知能ニミニッツがハッキングした航宙船内部の監視カメラデータを眺める将。アッサ防衛軍側の役割は操縦機能のハッキングと操縦権奪取。人工知能「復讐の女神」にアクセスと権限を上書きし無力化した上でデータとともに完全破壊。
つまり武力制圧に見せかけた破壊工作担当なのだ。]
次期当主 レグルス
「航宙船の操縦権権限、人工知能ニミニッツに移行！
人工知能「復讐の女神」破壊工作開始！
バックアップデータ作成及び救援電波妨害、
現在進行度は56%！銀河間警察、乗組員及び
関係者全ての無力化に成功とのことです！」
よし、後は人工知能「復讐の女神」だけだな？
このまま破壊工作を続けろ。
権限を再び奪い返されるな、敵の攻撃に注意しろ。
肉体及び精神的影響を与える可能性があるからな。
[全ては順調に行われているとの報告を受け、
指示を返す将。
此方側が有利な攻勢に、
他軍部及び銀河間警察からも
勝利を確信するかのような反応が散見し始める。]
次期当主 レグルス
・・・・・
（……可笑しい、全てが順調過ぎる……。）
[拭えない違和感。抵抗感の無さに妙な予感を覚える。
ざわつくような胸騒ぎに警戒を強めた、その時。]
次期当主 レグルス
『うわ！？』
[兵の悲鳴と殺気に瞬時へ其方に向くと、
其処には一体の女性型アンドロイド兵。]
なっ！？何故アンドロイド兵が……まさか！？
諸君！警戒値を最大に引き上げろ！！
此れは只の最新型アンドロイド兵ではない、
人工知能「復讐の女神」の
戦闘機能搭載型バックアップだ！！
つまりは動く『閉鎖史書』も同然、油断するな！
精神汚染に注意しろ、通信機能は全部切れ。
絶対に操縦部と通信部の権限を奪われるな！！
[突如現れたバックアップ体に混乱するも、急ぎ体制を立て直す。某銀河系最新型の戦闘特化アンドロイドに人工知能バックアップデータを移植したものかと推測を始める。]
次期当主 レグルス
（突如現れた理由は恐らく座標転移。
此方がバックアップデータの破壊と
同データ新規作成妨害に走ったから
大元を潰そうと残ったバックアップデータを
此方に寄越した？
しかし座標転移は高コスト、１体が限度だろう。
他艇に此れが向かった可能性は低い。
なら此処で撃破するのが一番か。）
[その時、将が乗る戦艦レーヴェの外にて
“人工知能「復讐の女神」破壊完了”の合図の光が見える。]
次期当主 レグルス
大元となる人工知能は破壊されたようだな。
残るは此のバックアップ体のみだ、艦内より……
[そう言いかけた途端、突如扉がロックされた。]
くそ！援軍対策か！……全員、戦闘準備！
目標！バックアップ体の無力化及びドアロック解除！
[バックアップ体対、
将と護衛兵の攻防戦が今幕を開けた。]
次期当主 レグルス
[将を初めとする閉じ込められた戦艦レーヴェ戦闘員数名は、無力化狙いで急所を狙うものの思うように行かない。
弾切れやエネルギー切れに焦る中、
将が投げた粘着弾が右脚に当たった。]
よし、動きは抑えた。左脚も……良し！
両脚はこれで封じた。狙撃系武器には気をつけろ！
私達同様あちらも弾には限度があろう。
バッテリーを狙え、
エネルギー自家供給部は破壊済みだ。
完全停止してから人工知能部を破壊するぞ。
[此れにより形成は逆転。
予想通り弾切れとバッテリー部の破壊により、
見る間に動きは鈍っていく。]
次期当主 レグルス
[猛攻を続け、完全に機能を停止し
ガクリと崩れるバックアップ体。
機能停止を確認し、総員で
人工知能部を破壊しようとしたその時。]
ぐ 、 ぁ ………… っ ！
[アンドロイド体は気力を振り絞り、
残る電力を将の胸部に向けて放った。
感電の衝撃により、将は倒れた。
アンドロイド体もまた
抵抗出来る程のエネルギーを残してはいなかった。]
次期当主 レグルス
[次に将が目を覚ました時、
目にしたのは安堵する部下と
機能を停止したバックアップ体。
心肺停止状態に陥った将に対し、
部下は残るエネルギーを電力化し
再度電気ショックを与え蘇生したらしい。]
……手間を掛けたな。
人工知能部を破壊するぞ……核を。
[立ち上がった拍子に立ち眩み、
左脇腹が痛んだものの部下が核を発見し、
破壊する光景を見届ける。
狂気の戯曲の大元が、完全に断たれた瞬間だった。]
次期当主 レグルス
[援護に駆けつけた関係者側の人間及び、
各地に散らばる関係者も一気に摘発された。
その際、原稿も見つかり次第破棄され
全てのリストに線が引かれたことを確認すると、
銀河間警察が終息宣言を発令し、
各軍や警察組織は引き上げた。
その後は各星での取り調べを受けるのち、
銀河間の司法裁判に恐らく掛けられるであろう。
後に将は語る。「後処理が一番面倒だった……」と。]
次期当主 レグルス
大尉だけでも何とか軍籍を残せぬか
色々と模索してみたが……
私だけではどうにもならぬ事が分かった。
[アッサは軍人も民間人も等しく裁判所にて裁かれる。
軍籍の者は軍刑法に則って裁かれる違いのみ。]
何とか財産没収までは
行かぬよう取り計らってみせる。
大尉の裁きが先に行われ、私が将のまま
大尉を訴えないことを伝えれば何とかなろう。
だが、私が軍籍を失ってからだとまずい。
軍刑法適用外となると重罪が課される。
私の年齢のせいで、それはならん。
[将は大尉を責めてはいなかった。むしろ軍に有益で優秀な人物が軍籍剥奪される可能性を憂いた。]
次期当主 レグルス
私も、大尉と同じ思いを抱えていたと
伝えるべきであったな。
悔やんでも何も生まれんが……。
[些細な擦れ違いが実った結果生まれた誤解と銃声。
しかし大尉は覚悟の上で憎んで、撃ったと言う。]
大尉よ、私が憎いか？
[大尉はふるふると首を振った。]
次期当主 レグルス
[二人、切なげに笑ったところで新兵が入室する。
執務室付きの新兵は書類の山を見て
「うわっ」と声を上げる。
将は獅子面越しにゲラゲラ笑った。
目の前の紙束を退けて新兵に話しかける。]
新兵、新兵は全てのことが神の恵みであり
恩寵であり神と恩寵の疑念や否定は許されぬ。
例え誰かを傷付けたとしても、
恐らくは大切なものの死に対する
悲しみや痛みすらも。
「閣下、其れは何処ぞの物語でありますか？」
知らぬか？惑星ロサという星の民の生き方だ。
物語ではない、真に存在する星よ。
次期当主 レグルス
かと思えば統一された価値観、
統一された文化で生きる民の文化もある。
後で知ったが能力の適正に合わせ
仕事が振られる星よ。
「……アルカディアの話でありますか？」
正解だ、よく分かったな？
[正解を導き出した新兵に感心し、
大尉はどうだ？と尋ねる。
どうやら大尉も知っていたようだ。]
他にも文明の発展が著しい星、
民の心を見抜く星、武器持たぬ星……。
色んな星と景色、文化がある。
次期当主 レグルス
かと思えば、良いことばかりではない。
……此れを見ろ。
[新兵と大尉に示したのは或る銀河系星の新聞。
反政府側の武力行使、政府側の制圧。
反政府側の処刑と将が手にする記事にはあった。>>29]
時折、忘れてはならん事がある。
我らは民を制圧する、若しくは制圧可能な
武力そのものを持ち合わせていることを。
武力の衝突と主張は、大抵人の心に届かん。
労力に見合う影響力を伴わんばかりか
離反や反発の可能性まで孕む。>>0:177
ならば何故、我らのような軍部は存在するか。
何の為に軍部は武器を、力を持ち其れを行使するか。
次期当主 レグルス
新兵……いや、“メッセンジャー”よ。
貴公の宿主に答えられぬまま、
宿主たる新兵は散ったのだったな。
[俯く新兵こと“メッセンジャー”。
アッサでは“演者”の名は通じない。
メッセンジャーがその意味を持つ。
斃れた旅人や軍人、大切な者の家族を癒し
想いや心を伝えに来てくれる存在。
異星文化交流の地、旅人が多く訪れる地として
宿主の関係者に会いに行ったり、情報を集める彼らを
アッサは好意的に受け止めるのだ。]
次期当主 レグルス
[アッサ防衛軍にも極少数だが、
メッセンジャーを宿した兵が所属している。
軍務の最中に殉職した者、
死を迎えメッセンジャーが宿ってから
宿主の夢を叶え士官・兵になった者。
宿主の言葉を伝えて去るつもりが
周囲に居ていいと言われ、そのまま所属し続ける者。
勿論遺族とメッセンジャー本人の同意を経て、
なのだが。]
次期当主 レグルス
“メッセンジャー”、貴公はどう思う？
何故軍部は存在するのか、軍人の意義は。
……はは、急には難しかろうな。
[獅子面の下、将は笑う。
慈しみの声色で「先の一斉摘発では助かった」と
礼を告げた。
執務室付きの新兵は或る深夜、『閉鎖戯曲』で狂いし者が
異星で老婆を襲おうとしたところを目撃し、
老婆をかばおうと立ちはだかり……斃れた。
最期に発行元たる人間の顔を目に焼き付けて。
そこにメッセンジャーが宿り、
軍部の試験を受けて新兵になったのだ。
一斉摘発時も宿主の記憶を提供し、
多大なる貢献を果たしてくれた。]
次期当主 レグルス
[アッサに戻る頃には新聞や雑誌、ニュース等でも
以下のことが報じられる。
“『閉鎖戯曲事件』の全貌公開”
“舞台役者シェルタン復帰に「お帰り」の声”
“舞台役者シェルタン失踪の原因は“赤獅子”？”
““赤獅子”が判断を誤らなければ
役者は舞台を続けられたとの声も”
“過去の“赤獅子”の極秘任務に批判殺到”
“アッサ防衛軍、軍刑法に乗っ取り“赤獅子”の軍籍剥奪
役者の保護が遅れたことによる損失期間の責任”]
次期当主 レグルス
─余談・惑星アッサの街─
[惑星アッサでは
１年中開花すると言う不思議な花がある。
北部リィン湖にしか生息しないガラス睡蓮リィン。
黄の柱頭盤に七色の
透明な花弁の睡蓮はガラス細工のよう。
風が花を撫でるとリィン、リィーンと高く澄んだ鈴の音のように聞こえるのが由来だとか。
リィン湖周辺では虹ガラスによる、ガラス睡蓮リィンを模したペンダントやブローチ、イヤリング、グラスやオルゴール等のガラス細工が有名。]
次期当主 レグルス
[『星の駅』周辺直ぐには
キャラメルソースで煮た林檎を詰めた
キャラメルアップルパイバニラアイス添えが
有名なカフェ『猫足』に
旅の疲れを癒す無料足湯などの施設。
仮拠点の寝具なら何でも揃う「羊の根っこ」
広場では旅芸人の芸や誰かの楽器演奏が
毎日何かしら響いている。
そもそも芸術が盛んな一面があるので
アッサでは高確率で何かしらの楽器や歌等の演奏を観れるのだが。芸術関連施設も多い上観光客は割引が効く。]
次期当主 レグルス
[春のように温かい地、夏のように熱い地。
秋のように穏やかな気候の地。
アルカディアほどではないが冷涼な地。
雪降り積もる寒冷地、式が存在する地。
様々な地と文化が存在する、
惑星アッサヘ皆様ようこそ。]
ただの子 レグルス
わー待て待て、今日はごはんないってば。
[朝、出勤に向かった子に群がる猫数匹。
しかし大きさは殆どが手のひら大で中にはハムスターと同じ程の大きさの猫も紛れている。
アッサにいる２種類の猫の１種類、“妖精猫”達だ。
某惑星の人間が猫と聞いて思い浮かべる猫達の他に、
このように小さな猫がアッサには存在する。
妖精の用に小さいから妖精猫。実に単純。
今日の彼らはおこぼれに預かろうと群がって来たようだ。]
もー！いつも旅人さんとか観光のお客さんから
いっぱいごはんもらってるでしょ？
後で何かあったらあげるから、ほら広場行って行って！
[妖精猫に行く手を遮られたね子は何とか職場に辿り着き、臙脂のベレー帽に白シャツ、臙脂のソムリエエプロンに臙脂のパンツに着替える。
職場の制服……新しく子が生きる場所。]
ただの子 レグルス
─子は、将だった者は想う……
人を、アッサを、宙たる全てを─
お待たせしましたー！
キャラメルアップルパイバニラアイス添え単品と
ブルーベリーパイバニラアイス添え、
ローズティーのティーセットです！
[将が将で無くなった後。子は直ぐ『星の駅』周辺にあるカフェ『猫足』で働き始めた。>>154
二階建てログハウスのカフェにはオープンテラス席もあり、床には黒い足跡が奥へと続くように描かれている。
店主夫婦は最初、「働かせてください！」と頼む子に困惑したものの試しに仕事を教え店に出してみると真面目に働いた為、そのまま雇われる。
客に対しにこにこと笑顔で接客する子は、
店主曰く客を和ませるとか何とか。]
ただの子 レグルス
[デザート類はティーセットの注文も多い。
温かなポットの紅茶やコーヒーはまず人気の定番。
（勿論冷たいものも）
ドリンクも薔薇の蕾を乾燥させたローズティーやラベンダーティー、ペパーミントにカモミールなどのハーブティーを筆頭に
オレンジジュースにアップルジュースなどのジュース類、ソーダや炭酸水もある。
好きな飲み物に自家製バニラアイスクリームを乗せた
フロート類も単品で注文する客がいるほど。]
ただの子 レグルス
[キャラメルソースで煮た林檎の香りと
バターをたっぷり使用したパイの香ばしい香り。
大粒のブルーベリーがぎっしり詰まった
断面の青紫の美しさ。サクッとしたパイ生地。
添えられた自家製バニラアイスクリームの白と
アップルパイにはキャラメルソース、
ブルーベリーパイにはブルーベリーソースで
小さな猫の足跡が幾つか描かれていた。
“
モンブランに苺のタルト、フルーツタルトにチーズケーキと他のデザート類も充実しているが、
やはりこの中で一番人気は名物のキャラメルアップルパイバニラアイス添えを含めた焼きたてのパイ達だ。]
ただの子 レグルス
ごゆっくりどうぞ！
[パイを運び終えた後、入り口のベルとは違うベルの音に子はパタパタと裏口の方へと向かう。]
いらっしゃいませ！今日はお１人ですか？
今エレベーターを動かしますので
少々お待ちくださいね。
[店裏手の目立たないドアからやって来たのは、
杖をついた上品なご婦人。
彼女は花を専門とする油彩画家、
アガサ・チャールストン。
このドアは２階個室席を利用するお客さん専用。
防音設備がしっかりしてるので、著名人がお忍びで訪れたり内密な商談や赤子を連れた家族などプライベート空間が欲しい客層によく利用されている。
なおエレベーターがあるのは足が悪い客の為。]
ただの子 レグルス
[エレベーターを操作し、
ご婦人を2階個室席へと案内する。
別荘地のような風通しの良い部屋の中に
大きな楓製のテーブルと椅子、
杖をつくご婦人の手を引いて介助し、椅子を引いて負担にならないよう座るタイミングに注意を払う。]
「ありがとう、小さな紳士さん。
貴方いつも綺麗な姿勢ね、素晴らしいわ。
背筋の伸び方と丁寧な接客……
そこらの大人より貴方の方がずっと大人よ。」
え、いやあはは……そうですか？
[ヤバい、内心子は静かに冷や汗を垂らす。
士官学校の教育の賜物がこんなところで弊害を出すとは。
笑って誤魔化しながらも子は注文を取る。]
ただの子 レグルス
お待たせしました！
トマト・メルフェンパスタと星人参のサラダ、
リィン湖の星鱒のソテーです。>>153
ティラミスとコーヒーは食後にお持ちしますので
卓上のベルを鳴らしてお知らせください。
本日もご利用ありがとうございます、
ごゆっくりどうぞ。
[ご婦人のいつものメニューを運び、
子はぺこりとお辞儀して部屋を後にした。
余談だが２階は他にも個室部屋がある。
椅子がハンモックになったハンモックの部屋、
調度品が猫で象られた猫の部屋、
子供達が安心して遊べる玩具が豊富な積木の部屋、
トランプやボードゲームなど人数を使った遊びも出来る遊戯の部屋、などなど。]
ただの子 レグルス
[ご婦人のお帰りもエスコートし、
エレベーターを使った後はお見送り。
１階の接客に戻ると、本に夢中な客を見つけた。
カプチーノのカップは既に空。
しかし本に集中するその目は、キラキラと輝いていた。
子は厨房に向かった、奥様にかくかくしかじか説明した。]
お客様。
[子が声を掛ける。長居したのを咎めに来たと思い客が本を閉じようとすると、子は軽く手で制し首を振る。
トレーには温かなカプチーノが乗っていた。]
ただの子 レグルス
[きょとんとする客に、子はカプチーノをサーブする。]
本日仕入れたコラーダ星の新豆です。
楽しい御本のお供に、よろしければどうぞ。
[子はにっこりと笑い、
小さな猫の砂糖菓子と共に差し出す。
お店からのサービスです、と
人差し指を口に近づけ右目でウィンク。]
ただの子 レグルス
[客はぽかんとした、カプチーノを見遣った、子を見た。
カップと子を交互に見比べ、子の気遣いなのだとようやく気付いた。]
「……ありがとう。」
──ごゆっくりどうぞ。
[子は再度笑った、「ごゆっくりどうぞ」と笑った。
子は他にも同じようなことをした。
手紙を読み耽る客、待ち人待つ客、時間潰しの客にも。
泣いてる客がいたらハンカチを差し出した。
長く席を取って申し訳なさそうな客には
気にしないように告げ、笑った。
そんな彼らは、大抵次もまた来てくれた。]
ただの子 レグルス
いらっしゃいませ！
[客に文具店のお勧めを尋ねられ「ここをまっすぐ曲がって右にあるロック・シーザー・ペーパーが品揃えも豊富で充実してますよ」と告げ、簡単にメモへ地図を書く。何を探してるのか聞いて見たら手紙を書くための道具らしい。]
お待たせしました！骨付きチキンのトマトスープと
パンのセット、デザートとお飲み物はお食事と共に
マスカットのパンナコッタパフェと
リィンの花蜜シロップのスフレパンケーキ、
パイナップルジュースフロートです！
[別の客へ食事と共にと頼まれたデザートやドリンクを共に一同へサーブする。シェア用の皿とカトラリーを共に出したら喜ばれた。]
ただの子 レグルス
[すぐに別の客に呼ばれ、子は注文を取る。]
ジダーズ牛の赤身肉ステーキ、赤ワインソースに
ライスのセットとコーヒー。
スイートポテトと黒胡麻のグラタンに
コーンツナコロッケ、
ポーチドエッグのキーマカレー。
マッシュルームと玉ねぎのポタージュに
デザートは『猫足』パフェどら猫サイズ、
クッキーはプレーンで食後ですね。
かしこまりました、少々お待ちください！
[伝票に注文を書きつけ、厨房に向かえばまた別の客の元へ料理を運んで行く。]
ただの子 レグルス
お待たせしました、南部名物コシードです！
壺の中のスープを別添えのパスタにかけ、
具は添えられた別皿に移してお召し上がりください。
南部では具を先に食べる地域、
スープを先に食べる地域に分かれますが
お召し上がり方はお客様のお好みでどうぞ！
別皿に粒マスタードもございますので
お好みに合わせてどうぞ。
[コシードは骨付き肉の鳥腿肉に牛の脛肉、ベーコンと豆に数種の腸詰肉や人参ジャガイモ、蕪にキャベツ玉ねぎなど数種の野菜とニンニクを生ハムの骨の出汁で煮込んだスープ。
固めに茹でた細いパスタにスープをかけ、
具と別々に食べるのが主流。]
ただの子 レグルス
「レオンくん！ボンゴレとカルボナーラ、
白身魚フライとポテトのタルタルセット、
『猫足』バーガーも持ってって！」
はーい！
[パタパタと子は店内を忙しく回る。
その姿に、将としての面影はどこにも存在しなかった。]
ただの子 レグルス
[そうこうしてるうちに別の注文の品を別客に運ぼうとしたところで声がかかる。>>235
が、子が大量に注文の品を運ぶ姿に驚いたか一瞬ぎょっとしたようで。
しかし子の反応は慣れたもの。元軍人の体力と腕力は未だ健在だが、自分のような子が大量に物運んでたら驚かれるであろうことは流石の子にも分かるから。]
あっ、大丈夫ですよー！少々お待ちくださいね！
すぐに伺いますので！
[言葉通り子は注文の品を直ぐに届けると、
声をかけられた客の元へと向かった。
「お待たせしました！」とにっこり笑顔で話を待つと、
先程熱心げに眺めていたチラシの役者のことだった。>>235]
ただの子 レグルス
[申し訳なさげな言葉に「全然大丈夫ですよ」と告げ、話を伺うと>>235演劇そのものは関心が薄いようだが、役者の写真に惹かれたらしい。
的を射たような発言に、思わずクスリと笑ってしまった。>>235>>236]
このお写真の方はですね、ルキウス一座に所属する
シェルタンさんと言って今や多くの銀河や星で
ご活躍中の有名な役者さんなんですよ。
ええ、僕も何度か拝見したことがあります。
素晴らしかった……本当に、役本人が
まるで「本当に居る人」みたいでした。
[ただの劇ではない、
強烈な印象という言葉に言い得て妙だと思いつつ。
心底から確信しているかのような表情で
面白かったかの問いに頷く。]
ただの子 レグルス
[ちらりと腕時計を見やる様子に、夜公演の当日チケット扱いについて思い出し>>235]
お客様、当店ではルキウス一座舞台の
前日券・当日券も取り扱っておりまして。
本日夜の公演であれば、
当日券のお取り扱いがございますが
１枚、ご用意いたしますか？
[『猫足』でも前日券と当日券の取り扱いがあることを告げ、購入希望であれば子は引換券を差し出すことだろう。店で会計と共に代金を払えば引換券と当日券を交換する旨を告げて。]
『閉鎖史書』事件で大変な思いをされたみたいですけど、
こうして頑張ってらっしゃるのはすごいですね。
[しみじみと噛みしめるように呟く子。
写真の役者は疲れを伺えたが、それでもオーラは衰えてないらしい。奇しくも客が覚えた役者の満ち足りたような表情を子も感じ取っていた。]
ただの子 レグルス
─この地に憧れを抱く人と子─
いらっしゃいませ！お席空いてますよー！
１名様ですか？
[首からお守りらしきものを下げた客ににっこり笑顔で接客する子。>>252
自分が送ったものともし知ったら目を丸くして「あー、あのお手紙の方！」と改めて歓迎の意を伝えていたかもしれないけれど>>239今は分からぬことだから。]
当店自慢の焼きたてキャラメルアップルパイ
バニラアイス添え>>154>>196をはじめ、
甘味も軽食も多数取り揃えておりますよ！
お席は屋内のテーブル席の他に
テラス席もございますがどちらにいたしますか？
[希望する席があれば子は其方に案内することだろう。お任せならばテラス席に面した店の奥、テラスと店内全体を見渡せる子のオススメ一押しである席に。]
ただの子 レグルス
こちらお水とメニューです。
ご注文お決まりの頃にお伺いしますので、
御用の際はご遠慮なくお申し付けくださいね。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
[その間のやりとりが何か、
間にあるかもしれないけれど。
そんなこんなで席に案内したら水とメニューを差し出し、
一度下がろうとするだろう、呼び止められぬ限りは。
勿論呼び止められたら快く応じるのが子である。]
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