15 Mystic Letters ― ヒトとアヤカシの手紙 ―
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【妖】 作家 添木(ソエギ)
[その後には、彼の経歴を含んだ本の感想が綴られていた。
彼の故郷の妖精界の話。
作品を通して彼が感じた事。
手紙で問うた、彼の故郷での“巡り合わせ”の言い方。
異国について詳しくない付喪神が書かれなかったことわざに辿り着くのは、いつになるだろうか。
綴られた文字を読み終えると、添木は丁寧に便箋を畳んだ。]
あぁ、これを忘れていましたね。
[鞄から取り出したのは、新しい便箋と封筒。
早速、出番がありそうだ。
そっと表紙の表面を撫でる。]
【秘】 【妖】 作家 添木(ソエギ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
人からアヤカシになる方もいますが、妖精界にも帝の一族のような方々がいらっしゃるのですね。
それを知って少し勇気づけられたような思いがいたします。
私の来歴は人間界なので、本物の異界の事は同胞から話に聞いたり、書物などを読んだりといった方法でしか知らないのです。
いつか自分の足で取材しに行ってみたいと思いますが、担当さんは人なので同行できないのが悩みですね。
海の異界に住むアヤカシからも感想を頂きましたが、やはり海の異界はまた別の文化を築いていらっしゃるようで。
教えて頂いたお話を活かす事が出来ればいいなと思っております。
この国も、アヤカシが大手を振って歩けるような時代ではなくなってしまいました。
昔は当たり前のようにお話したり、飲食を共にしたり、一緒に本を書いた事もありました。
私の描く世界には、そんな時代への懐古の念が入っているのかもしれませんね。
【秘】 【妖】 作家 添木(ソエギ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
チェンジリング、という話は聞いた事があります。
この国のアヤカシも人を攫うという話が幾つも残っていますので、人に惹かれるのは国を越えても共通なところがあるのかもしれません。
勿論、今の時代で起こされたら、大事になってしまうでしょうが。
なくなった貴方の人であった頃の記憶はそれを代償としたのか、あるいは自ら捨ててしまったのか。
モノからアヤカシになった私には、人から妖精になった貴方がその時に何を感じたかは分かりませんが、誰かに強いられたのではなく、貴方が望んで妖精となったのであれば良かったです。
【秘】 【妖】 作家 添木(ソエギ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
「四葉のクローバー」。
見つけられた試しはありませんが、低い割合でしか存在しないからこそ、幸運の象徴とされているのでしょうね。
魔法使いや妖精の魔法を解くのに使われる、というのは聞いた事があります。
そろそろ第五巻が書店に届く頃合でしょうか。
数多くある本の中で推して頂けるのは有難い限りです。
今回もデザイナーさんがよい装丁をして下さいましたので、貴方や読者の方の手に届くのが楽しみです。
名残惜しいですが、長くなってしまいましたのでこの辺りで。
極寒の候ではございますが、貴方のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
添木 芳文
【秘】 【人】 学生 蛍籠(ホタルカゴ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
雉笛さんへ
新年のご挨拶と、素敵な便箋での祝いをありがとうございます。
こちらも、猫の切手やその下の干支のイラストに心躍りました。
可愛らしくて、和んじゃう。
中々、不器用なもので
肩肘を張ってしまうことは多々ありますが、
ご忠告を心に留めておこうと思います。
妖精界の女王様に喜んでいただけるのは嬉しくもあり、
その方のご様子に思いを馳せてしまいます。
大祓おばあちゃんの民宿。雉笛さんもお泊りになられたんですね。
じゃあ、其処で暮らしているあの子にも
……逢ったことがありますでしょうか。
素敵な偶然に、頬がゆるみっぱなしです。
【秘】 【人】 学生 蛍籠(ホタルカゴ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
疲れてしまったとしても、
打ち明ける勇気を抱けなかったことも、
一因ですので。其処は受け入れて
慣れるしかないのかなともおもっております。
――雉笛さんの仰られる様に、物語の中のように。
友情がはぐくめましたら素敵なのですが。
現実は、中々相手を思い、
自分を思えば難しく感じてしまいます。
昔の、人と妖精が触れ合った時代のように
未来がそうであればとも思いつつ
それが為せるよう、小さなところから
まずはかいよりはじめよ、ではありませんが
自身はこうであるよう、勤めていこうとは思っております。
【秘】 【人】 学生 蛍籠(ホタルカゴ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
妖精界の雨は、降ったりやんだりなのですね
長く、ではなくその繰り返しなのか
それともからっと一過性なのか。は気になるところです
多分湿気などとは無縁なのかしら。
密林のような多湿にはご縁がなかったのならば、
この世界の梅雨は大変だったでしょう。お疲れ様です。
なるほど、そんな事情が。
お弁当が作れるというのはすごいですね。
おにぎりとかのかしら。それともサンドイッチの？
想像が膨らみます。
もし、一緒に街を食べ歩きできたら素敵ですね。
それが叶えばと夢見てしまいます。
そんなあなたが、自身の存在のことを打ち明けられ
それを受け入れることが叶う方を見つけられたこと
とてもうれしく思っております。
【秘】 【人】 学生 蛍籠(ホタルカゴ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
優しいお気持ちを受け取りつつも――以前、
何かに害されるようなことがあったのでしょうか。
心配です。貴方のように心優しい妖精さんが
悪であるとは思わないですが、どうかご自愛ください。
雉笛さんのご迷惑にはならないように
もう少しだけ、頑張ってみようかなって思っています。
貴方の手紙は、きっと
今の私にとってはよすがですから。
一年の最初の幸は貴方からの返信でした。
今年もよろしく、おねがします。
蛍籠
【秘】 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ) > 【妖】 作家 添木(ソエギ)
[それは白い紙に赤い縁取りが施された封筒で、金色の小さな梅の花が下部に印刷されている。
便箋も封筒と同じく、白地に赤い縁取りの紙。
切手の絵柄は、落ち着いたベージュ色の背景に湯気立つマグカップを描いたもの。
便箋に綴られた妖精界の文字は、以前よりも少し軽やかな筆致で綴られている。
文字の形自体に馴染みがなくとも、筆致の変化には気づけるかもしれない。]
【秘】 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ) > 【妖】 作家 添木(ソエギ)
確かに人間の担当さんまでは共に行けませんよね……。
昔においてもチェンジリングは人間に厭われましたし
この国の神隠しのことも聞いた覚えがありますが、
アヤカシの存在を表に出せない今の時代では猶の事、
これらはあり得ざる凶事とされてしまうでしょう。
ヒトとアヤカシが共に歩んだ時代への懐古は、
妖精界に住まう妖精たちからもよく耳にします。
先生が人間と共に筆を執っていた頃のお話も、
エッセイの形で……すみません、これはボクの我儘でした。
こう思ったくらいには、その頃のお話も気になっています。
ボクが人としての記憶をなくした経緯は
女王様に聞けば分かるとは思うのですが……。
記憶の事も、妖精と化したこともまた、
あの頃の己の願いだったのだろうと思います。
思いたいだけ、かもしれませんが。
【秘】 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ) > 【妖】 作家 添木(ソエギ)
追伸
先生のお手紙に使われた切手は、
民芸品をモチーフにしたものでしょうか。
封筒や便箋の和紙と合わせて、まるで旅のお土産のようで、
仕事終わりの疲れも癒されるくらいに和んでしまいました。
ボクからも、ポストカードを一枚同封してお送りいたします。
××町で輸入品として買ったものなので
厳密にはお土産とは言い難いのですが、
ボクら妖精と縁深かった人々が昔いた地で作られたものです。
魔法を解く力は特にない、ごく普通のカードですが、
ご友人に送られても、部屋に飾られても良いと思います。
【独】 【妖】 作家 添木(ソエギ)
[今回の便箋は和便箋ではあるが、どちらかといえば愛らしい印象を受ける。
鳥の子紙であるのは前々回と同じだが、前回より少し赤みの加わった灰梅色。
左上に紅梅と、それに留まるシマエナガのイラストが描かれている。
シマエナガは“雪の妖精”と呼ばれているようだと知った為。
妖精であるという彼を連想して、つい買い求めてしまったのだ。
便箋は便箋と同じ材質と色で右下端に梅の枝が描かれている。
貼られている切手はお汁粉のイラストだ。
彼の貼ってくれたマグカップのイラストに似たものを探していたが、和便箋との相性を考えてこれにした。]
【秘】 【妖】 作家 添木(ソエギ) > 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
[今回の便箋は和便箋ではあるが、どちらかといえば愛らしい印象を受ける。
鳥の子紙であるのは前々回と同じだが、前回より少し赤みの加わった灰梅色。
左上に紅梅と、それに留まるシマエナガのイラストが描かれている。
シマエナガは“雪の妖精”と呼ばれているようだと知った為。
妖精であるという彼を連想して、つい買い求めてしまったのだ。
便箋は便箋と同じ材質と色で右下端に梅の枝が描かれている。
貼られている切手はお汁粉のイラストだ。
彼の貼ってくれたマグカップのイラストに似たものを探していたが、和便箋との相性を考えてこれにした。]
【独】 【妖】 作家 添木(ソエギ)
/*
ハイ、独り言と内緒話を間違えました。
便箋がちょっと可愛らしいチョイスかもしれませんが、シマエナガ＝雪の妖精からの雉笛さん……となってしまったんです。
シマエナガ成分は可愛いですが、紅梅が美しい和便箋でした。
（これまで書いた便箋はモデルありです）
>>-108
切手のデザイン、参考になるのはないかと、村中に何度か公式サイトを見に行っていました。
付喪神なので、モノがいいかなと。
第五巻は肉付けしてみました。
ワダツミ（三神）と住吉三神は、神話上、一緒のタイミングで生まれている神様なので、出せて良かったです。
PLは夜行バスで九州に行った際、壇ノ浦にバスが止まった事がありましたね。
夜なので、アナウンスを聞きながら今、壇ノ浦にいるのか……と思いを馳せていました。
また九州や壇ノ浦の辺りに行ってみたくなりました。
【独】 【人】 女将 大祓(オオハラエ)
［小さい頃に、とても仲が良かった子が妖だった。
日常的に〝視える〟わけでもなし、何故その子が見えて関わることができたのかは分からない。
ただ、その時は人間だと思っていたし、そういった類があるというのを耳にしたとしても 自分の身近にあるものとは考えもしていなかった。
だから、 また明日も遊ぼうねと 夕暮れ時の橙に染まった空の下で振り返ったあの時も、親友の頭の上に角が生えていたのを見て 目の錯覚かと思った。でも、何度も瞬きしても、 目を擦っても消えないその異物と 意を決したように言葉を紡ぐその様に これが現実だと脳がそう判断したその時に。
咄嗟に出てしまった一言。
その場に背を向けて 何処までも、何処までも足を動かし、 逃げ去った。
走っても、逃げても、頭の中から離れない。
自分のその一言を聞いた瞬間の、親友の表情は
目を伏せて 静かに薄くただ笑っていた。］
【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
[さて、その日に書店に届いた、南天と雪が彩る封筒。
ペット禁止のアパートの部屋で、切手とシールとにそれぞれ描かれた柴犬に目元を緩ませる。
封の口を守る柴犬を破いてしまわぬよう、はさみで封筒の上部を切って、中の手紙を読み進め――]
え、 ええっ！？
[思わず挙げてしまった大声は、その時風呂に入っていた秋鳥には聞こえなかったようだが、隣室にまで声が響いていないとは限らない。
努めて落ち着きを保ちながら、続きの文字を静かに目で追う。]
（ それっぽい子……
いた、気はする、けど…… ）
[民宿のアルバムの写真、そしてあの宿で女将以外に出会った者の記憶を引っ張り出してみるが――。
妖精の忘れっぽさがこの時に災いして、これだ、と確信に至れる記憶に辿り着けない。]
【秘】 【妖】 書店員 雉笛(キジブエ) > 【人】 学生 蛍籠(ホタルカゴ)
そういえば妖精界の雨の話、ちゃんと書いてなかったな。
一過性のこともあるし、断続的に繰り返しもする。
ボクら妖精には気まぐれなところがあるのだけど、
雨の降り方にも少し似ている節があるかな。
そして労わりの言葉、ありがとう。
次の梅雨の時は、覚悟して頑張ってやり過ごすよ。
そしてお褒めいただいて鼻が高い……なんてね。
おにぎりを作るのが一番簡単だったから、
今のところは昆布おにぎりのお弁当ばかりかな。
サンドイッチも作れるようになってみたいけれど
綺麗な形に切る自信はまだないな……。
【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
[雉笛は鳥呼びの笛。
雉に似せた音色で雉をおびき寄せる、狩人の道具。
狩りの名手であるのみならず、ヒトを惑わす魔性をも有する妖精にこの名を授けた森の女王は、蛍籠が記した通り、人の世界とその妖精とをよく見聞きした知者に違いない。
雉笛の君が己の本質を自覚してなお、ヒトの前で「雉笛」を名乗り続けるのは、自らへの戒めのため。
それでもこれから行く――否、「帰る」先では、狩人の名から暫く離れてしまっても良いと「りょうま」は思う。
いい加減な気まぐれで名乗った名が、今はその妖精に肩の力を抜かせていた。]
【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
[道中の電車の窓際で、黒いフーディーを羽織った雉笛は便箋を広げ、記された文字に改めて視線を落とす。
その一瞬にあった姿と記憶を切り取り残していくのが写真であれば、文字によって綴られた手紙は、時間をかけて心の動きや在り方を残していくものか。
ヒトとしての大元の記憶を失い、アヤカシと化してからの記憶も時にいい加減になるこの妖精は、褪せた記憶の色を辿ることさえ難くなっていくというその人の経てきた生を思う。]
『また是非、女将さんと 写真を撮りたいです。
去年の春とはまた違う その時を
残せたら と 楽しみにしています。』
[出立の前に雉笛が書き記した手紙には、そんな一文がある。]
【妖】 書店員 雉笛(キジブエ)
[……そしてもう一通、とあるもうひとりからの手紙も携えている。
正確には、一通の手紙と二枚の写真。
鳥の子紙の封筒の中に、紅梅に留まる「雪の妖精」と共に、丁寧に折りたたまれて在る。]
（ 実は添木先生と手紙の遣り取りしていた……
って言っても自慢ったらしくならない、よな？
折角だから、女将さんに写真も見せたいし……。 ）
[かの人、もといかのアヤカシから「私と友人になって頂けたら」と伝えられたことまでは、流石に畏れ多さが勝って打ち明けるのを憚られるも。
添木に対しての雉笛の答え自体は、「よろこんで！」以外に無い！]
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