25 【R18】異世界の門と恋の彼方
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【念】 桐木虹介
[”そうか、わかった。”
YESでもNOでもなく、
リオさんはそれだけ言って、頷いた。
こちらをみながら リオさんがゆっくりと葉巻を燻らせる。
いつもは好ましい香りのするその煙が室内に漂う間、
まるで死刑宣告をうける囚人のような気持ちで次の言葉を待つ。]
【念】 桐木虹介
[なるほど。何かを得るには対価が必要。…等価交換だ。
魔法だけでなく、食だけでもなく --- 気持ちも、だろうか？
--- あの優しい腕は俺がうけとっていいものではなかった。
でも、受け取るべきだった人は、もう、いないのに。]
【念】 桐木虹介
[さてさて。俺に課せられた課題は、”リオさんを討ち取る”。
いったいどうしたもんだろう。
元の世界いたなら、「意中の人を落とす方法」なんてすぐに検索をかけてしまったんだろうけど、残念ながらここではそんなわけにもいかないし、誰かの助言をもらうわけにもいかない。]
【念】 桐木虹介
[健全な肉体にこそ、いい魔力が宿るなら。まずはそれを目指すのがいいだろう。
筋トレの名前や器具はこっちと元の世界でも違うのだろうけれど原理は似ている。
ストレッチ、スクワット、ベンチプレスーーー
激しい運動をしているわけでもないのに息が切れるし汗はだらだら。走るのは好きなんだけど、室内で走り回るわけにはいかないから
――朝、リオさんは寝てていいから、外で走りたいってお願いしてみたけれど、まぁ多分これは通らないだろう。
休憩がてら、文字を習ったりもしただろうか。
書けるものなら、ラブレターだって書いてみたいし。
スケッチの片隅、覚えた文字を書きつけたり。
そんなときに、奥様の名前がどんな意味を持つのかも教えてほしいとねだったかもしれない]
【念】 桐木虹介
[ほかにも、市場に出かけたときにも
怪しげな店で惚れ薬だと言って売っている怪しげな液体を買いたいと、寄って行っては怒られたりしたかもしれない。
そんな風にして体を鍛えることに注力し始めれば
風呂が沸くのを待つ間に力尽きて その辺に転がっていることもあっただろう。
それでも、目標のある日々は、いつもよりもずっと深い眠りを与えてくれた。]
【念】 桐木虹介
[朝は朝で、ルーティンのように寝込みを襲っただろうけれども
警戒されてしまった今では、はじめのようにうまくいくものだろうか。]*
【念】 彫金師 スカリオーネ
───稽古？
[こちらの答えを待つ間、まるで罪状を言い渡される囚人のような顔をしていたコウが
男の言葉の後に囁いたのはその一言。
まさかの言葉を反芻して。]
ッ、ふはははは！！！！！
[店の中にはあまりにも珍しすぎる男の爆笑が轟いた。]
【念】 彫金師 スカリオーネ
[コウは自分の気持ちを口にした。
言葉にするには若い恋心の芽だったであろう、まだ摘み取るのは容易かったはずだ。
それでも逃げずに口にして。
その上で、引く気もないというのなら。
応えてやる以外の選択肢など、存在しない。]
稽古な、確かに…ックク。
それなら手始めに、一緒のベッドを使ってみるか？
[部屋にあるベッドは男二人並んでも余裕のありそうなサイズだ。
半ば冗談のように笑いながら言ったが、反応はどうだったろう。
兎にも角にも、毎朝の奇襲はなんだかんだ続いていて
毎度組み伏せては、まだまだだなとあくび混じりにこぼす毎日。
三日に一度くらいの割合で、そのままコウ抱き枕にして二度寝したかもしれない。]
【念】 彫金師 スカリオーネ
[あれから毎日身体を鍛えだしたコウには、感心しかない。
これは自分の気を引くための努力、なのだろうか。
普段男でもやらないようなメニューを時折こなし
それでも体力が続かず、風呂までの間にどこぞで眠ってしまっていることもあった。
そんな時は軽々──とまでいかずともコウを抱き上げてベッドまで運んでおく。
きりの良さそうなタイミングで再び起こし、きちんと汗を流させた。
外を走りたいなんてことにはさすがに許可を出せなかったが
ならば自分も起きて付き合えばいいだけの事。
毎日とはならなかっただろうが、時折ランニングをする朝もあったかもしれない。
文字を習いたいというのなら、勿論この世界の文字を教えただろう。
残り僅かな期間でどれだけの文章を書けるようになるのかは分からないが
なにか大事そうにしている紙束に、文字を書いている背を何度か見た。]
【念】 彫金師 スカリオーネ
[文字を習い、身体を鍛え、毎朝奇襲をしかけてくる。
一体、異世界の者に何を教えているんだと言われてしまいそうな生真面目すぎるとも言える不思議な生活ではあるが
男は幾分と、表情に分かりにくいながらも楽しんでいた。
今日も文字を教え終わった後に
焙煎した豆を引き、茶を入れる。
朝はコウが淹れてくれることが常だったが、夜は男が淹れることが多かった。]
さて、どうする。
一緒に寝るか？
[そんなふうに告げると、大きなベッドを指さして。
どんな反応をするかなと、答えを待つ。]
【念】 桐木虹介
[稽古をつけて、って言った、よね、俺？
お店の中にリオさんの大きな笑い声が響いて、俺は盛大に頭に？を浮かべる羽目になる。
二十日のうちにリオさんを討ち取るという課題をだされたはず。
だから、それをこなす為の方法を考えて、
そのスキルを身に着けるためお願いをした－－－つもり。
なのに－－－ なのに、なんで俺は今笑われているんだろう？？
それでも。
拒否をされたわけではないことに、ほっと大きく息を吐いたのに、続いたリオさんの言葉にまた息を飲む羽目になる。]
【念】 桐木虹介
い、一緒に、寝…！？
[この人は！！
手始めにって、何？ 何の稽古なの？ 俺の忍耐力？？ 襲っていいっていうこと？？
俺初めに聞いたよね、襲われると思わないのかって…。嫌じゃないかって。－－－俺が、リオさんをすきだと知っても、その提案がでるって、そう思っていいってこと？？]
それは、お布団として？
それとも、リオさんとして？
[どちらだったとしても、それ以外だったとしても、俺が否というわけがないんだけれど。せめてそのくらいは抵抗してみても？]
【念】 桐木虹介
[さて。
試されてるのは俺の忍耐力かと思ったけど、体力のほうだったかも。
せっかく一緒のベッドで寝るチャンスを得たというのに、
体温とかすかな煙の香りとを間近に感じながら 二言三言、言葉を交わすうちに、
睡魔との戦いに敗れて気が付けば朝を迎えている。
朝は朝で、ルーティンのように 起き抜けに奇襲をかけるけれど
（―― もちろん、鬨の声はあげずにね。）
毎度毎度組み伏せられて。
抱き枕にされるのを、少しだけ、楽しみにしている自分がいたりもする。]
【念】 桐木虹介
[文字の練習が終わった後、夜の飲み物はリオさんが淹れてくれることが多い。
道具に慣れてるからとか、夜だから、とかではなく
――好きな人が淹れてくれる飲み物は、自分で作るよりもずっと美味しい気がする。]
―― 寝ます。
[”一緒に寝るか”と、揶揄うようにリオさんがベッドを指さす。
そういう意味じゃないと思いつつも、顔を赤くしてしまうのは致し方ない。
もう気持ちを何も隠してはいないから、いつだって何だって、リオさんから誘われたものに否と答えることはないのだけれど]
【念】 桐木虹介
[期限まで、あともう少し。
こころの天秤はもう「帰らない」ほうに傾いている。
還れと言われない限り、ここに残りたい。
――もしも、リオさんを討ち取れなかったとしても。]
【念】 桐木虹介
[討ち取るなら、明日の朝がラストチャンス。
明日の朝の俺には、
さっき思いついた、とっておきの秘策があるのだ。
こっそりその下準備を済ましてから、くふくふと含み笑いを隠せずに、ベッドのほうへと向かうだろう]*
【念】 彫金師 スカリオーネ
俺は布団のつもりで生きてないぞ？
好きと言っておいて、動揺するのか…ックク…！
[本当に面白い。
どうやら“討ち取る”という言葉に、僅かすれ違いが起こっているとも思わず
動揺した反応にはそんな風に返した。
それももう気付けば数十日前になるか。
体力ギリギリまで動いて、落ちるように寝てしまう。
そんなコウを毎夜とベッドまで運んで結局は簡易ベッドに横になる日々。
朝は懲りない襲撃をやり来るめて、勝鬨を奪い。
たまに走りに行けば、菓子をねだる子供を引き摺るように連れ帰る。]
【念】 彫金師 スカリオーネ
[そして、コウが来てからそろそろひと月が経とうという今日も変わらず文字の勉強を終わらせる。
少しはかける文字も読める文字も増えただろう。
労いにと淹れていた温かな飲み物は、やがて習慣のようになってしまった。]
ふっ…今日も寝落ちそうだが？
[いちいち顔を赤くするのが面白い。そして可愛い。
なんて思うようになっている時点で充分に絆されている気はしなくも無い。
大きなベッドに寝転んだなら、迷いなく腕を伸ばして腕枕を作った。
頭を乗せてくるかはコウ次第だが、なんだかんだと拒否しない奴だ。]
【念】 彫金師 スカリオーネ
[この夜がすぎたなら、翌日には決断の時が来る。
知ってか知らずか、なにか秘策を企み笑うコウを見ながら、]
よく笑うようになったな。
[本当にころころと表情の変わる奴だ、と。
嫌味のように聞こえるそれが嫌味でないことは、もう言わずとも分かるだろう。
素直に腕の中にコウを包んでしまったなら、やましい事をするでもなしに抱き込んで
眼鏡を外して、ゆっくりと目を閉じた。]
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