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これが誰に届くかもわかりません。
返事もそう望みません。ですが。
誰かに聞いてほしかったのかもしれません。
私はコルデリア。滅びに瀕した終の場所、エンデにて
ひとりで暮らしている住人です。
むかしは、たくさんの人がいて、とても賑やかで。
木々のもたらす恩恵にあずかって、皆豊かに暮らしていました。
けれども幾年か前に突然変異が起き、この小惑星はほかでもないその木々に侵食され、住民たちのほとんどは離れざるを得なくなりました。
今はもう、ここには日の光も覆われてしまい届きません。
こんなことをいきなり書かれても困る、とは思います。
けれど、恐れていたことが現実のものとなり、
全ての終わりを考えたときに、……既にこの星を出た者が
存在は知っているでしょうが。
どのような終わりと迎えたかを知るのは誰もいないと思って。
ただの私の未練です。
どうしてくださってもかまいません。そのまま忘れてくださっても。
遠くよりあなたに幸せがあらんことを祈っております。
マーチェンド
まさかそっちから手紙が届くとは思ってなかったので
勇み足でこっちから手紙を書いてしまいました。
先立って手紙が届くかもしれないけれど
その手紙の事はなかったことにして下さい。
…海賊の事は不運だったと思うけれど
本当に無事で何よりです。
船舶情報で無事なのは知りましたけど
こうして手紙で安否を告げてもらった方が安心しますね。
あの子も役に立ってるようでなによりです。
あの子ともども、余裕が出来たら顔を見せにきて下さいね。
こっちの調子はぼちぼちですよ。
変わったことと言えば、貴方がやってくると踏んで
用意してた掘り出し物、何時までたっても来ないから
売り払ってしまいましたよ。
なので掘り出し物に出会える機会は持ち越しですね。
こっちは変わりありませんね。相変わらずのんびりしてます。
クレーターに潜ったり、クレーターを潜る人たちの為に
ヴィジランツの真似事をしたり、前と変わらず、です。
辛気臭いって言われたので
次に会える時はもう少し除湿できてるように
頑張ることにします。
私が辛気臭くなくなる代わりに
パンパス・コートならではのお土産(話)
楽しみにしてますね。
イオニス
追伸:そういえば、パンパス・コートといえば下層民街にある
漢中飯店のアップルパイがとても美味しかったですよ。
甘いものが嫌いでなければ是非食べてみてください。
あ、でも何年も行ってないので、ひょっとしたら店自体
なくなってるかもしれません。その時はごめんなさい。
インクにしては妙に茶色い、
粘性のある物体が
拙い文を描いている。
コルデリア へ
こんばんは こんばん は
■ の なま えはコルデリア ■■■■■ だれ
がぁど と いう なまえが
あ った とおもいます
ここ は しず かな すなはまです
そらでは かぜ が ないて います
うみでは さざ なみが おいかけて きます
にゃあにゃあ、にゃあにゃあ とりがなきます
おおきな やし のき がゆらぎます
あなた は みたこと ありますか? こるでりあ
■ は おしまいのばしょを
たくさん しっていま す
この うちゅう には
たくさん の おしまい が あって
■ は おしまいの ひとりです
おしまいのほし えんでのほし
たくさんのひとがたびだった ほし
すこしずつ すこしずつ
きぎやどうぶつたちにかえされるほし
たびだちの ふねは
ぶじにたびだっていきました
■ は それを みとどけま した
あなたは それに のりません でした か
あなたはその おしまいに のこり ましたか
[この手紙の宛先の住所はゲッカの煙霞山、宛名は「蓬儡様」と記されている。
差出人の住所記載は、マーチェンド所有のシップ名である「トーチバード」および、その船体識別番号になっている。
切手の図柄は、赤と白の洋薔薇を象った模様だが――。
封筒自体は生成りの無地の紙で作られており、便箋に使われている紙も封筒と同種。
元々横書き用の便箋を90度傾ける形で、黒いインクの文字が縦書きで綴られている。]
蓬儡山主へ
ご無沙汰しております。マーチェンドです。
山主様からのお手紙、嬉しく拝見いたしました。
私がゲッカを訪れてから、はや三年になりましょうか。
この間も幸い天運尽きず、元気にやっております。
お手紙を拝読したところ、山主様のほうも
あれからお変わりなくお過ごしかと存じます。
山主様がまた機械を壊してお弟子さんに追い出されたと伺い、
失礼ながら、思わず苦笑してしまいました。
それと同時に、妖魔としての山主様の
揺るがぬ本質にも改めて触れたような心地で、
そのことに、嬉しさを感じもいたしました。
商人の身としては有難いことに、
山主様は機械に興味をお持ちくださいますが、
正直に申し上げれば、かのゲッカの山河に
外来の機械を持ち込むことは正しかったのか、と
数多のリージョンの神秘の多様さに惹かれた身としては
考え込んでしまうこともあるのです。
とはいえゲッカや、他所の民にとって
優れた電動の機械がありふれたものになったとしても、
この世から術の存在意義が無くなることは
おそらく無いのではないか、と私は存じます。
山主様もご存じのことかもしれませんが、
リージョンの中には、魔法、或いは磁気の影響で
機械がまるで動かなくなる地もあるとのこと。
私も一度、そうした地を訪ねたことがあり、
精神修養による術がなければ命を落としていた……
という事態にまで陥った経験があります。
それに加え、妖魔の多くがそうであるように、
生来の性質として、機械を上手く扱えない生命も
この世には少なからず存在します。
そうした存在にとっては術こそが、己や、
己の愛するものを生かし、守るすべとして
役立てられるものになるのではないでしょうか。
さて、この手紙を記している今、
私はパンパス・コートに滞在しております。
かの王国のリージョンは、妖魔ならぬ人間たちが、
「美貌」を至高とする妖魔にも劣るまいとばかりに
美を服飾の形で表すことを至上とする地です。
かの王らの誇る美が、果たして格高き妖魔の目に
如何に映るかは、私には思いも寄りませんが……
私のトーチバードも、かの王国の民の手によって
少々煌びやかな外観に仕上がってしまいそうです。
次にゲッカを訪れる時には、ぜひ山主様にお知らせいたします。
その際、もしご所望の品があればお持ちしますよ。
麓の街で、ゲッカの地の美味と旅の土産話を肴に、
山主様と酌み交わせる日を楽しみにいたします。
最後になりましたが、私の身を気にかけてくださり
お手紙をくださったことに、深く感謝いたします。
山主様のご健勝を、心からお祈り申し上げます。
マーチェンド
コルデリア
あなたは あなたのほしは すきですか
あなたののこった そのほし に
あなた の しあわせ は ありま すか
あ なたの おしまい の ものがた り
おわってしまわないように
どう か ■ に きかせて ください
……メッセージの裏側には物語が書かれている。
どうやら、裏側の文字を書いた人とは違うようだ。
ガタンゴトンと揺れる列車のコンパートメントの中
憂いを帯びた表情の助手に向かって、
探偵はムスッとした顔を向ける。
「なんだね、ノックス君。何が不満なのかね
せっかく倫敦を離れてぱあっと旅行だというのに!」
「何言ってるんですかウィル。不謹慎ですよ
行方不明者を追いかけてるってのに…
その先で何があるのかわかったもんじゃない」
「それはそうだが…ほら、旅は楽しまなきゃ損だろ?
これから凄惨な真実が明かされるかもしれないからこそ、今のうちに楽しいことは楽しんでおくべきじゃないかね?…ほら、車内販売が来たぞ!サンドイッチを買おう!紅茶はいかがかね!!!」
「それは…まあ楽しんでおいたほうがいいのはわかりますが…
やっぱり僕は、倫敦の街が過ごしやすいんだよなあ……」
…端の方に、茶色い文字の走り書きがある。
あな た は
たびに でたい で すか
それとも
あな た に しあわせ が ありますように
■■■■■・がぁど■■■
植物の香り、それからどこか薬のような香りのする封筒。
筆跡はふるえている部分が時折目立つ。
力があまり入っていないのか、擦れたインクだが
丁寧に文字を書こうとしているらしきことはわかる。
便箋の端には蒲公英の押し花があしらわれている。
それから、なにか水気のあるものが垂れたらしい跡も。
この手紙が届いてしまったあなたへ
ごめんなさい。はじめに謝っておきます。
きっとここに書き連ねるは嬉しい話題は無く、
現状の──私の、身体に障るような、
あまり考えたくもないことを記しますので。
もし読んでしまってもふかく考えないでください。
私は過去を悔やんではいません。
私の選択も、それしかありませんでした。
だからこのまま1人でいるのも覚悟はしていました。
現実に文句のつけようは、ありません。納得をしています。
でも、── 私の大好きであったはずの人々が。
私の事も母星のこともさっぱりと忘れて、
きっと今は幸せにしているだろうことが。
私はそれを望んでいたのに、そう願っていたのに、
時折どうしようもなく薄情な仕打ちをされている、
そんなようにも思えてしまうことがあります。
恨みなど、何ひとつないのに。誰も悪くないのに。
そう思ってしまう事もまた、苦しくて。
考えることをしたくなくて。書きました。
悪態を吐こうと私に帰ってくるだけ。
こ■まで書いてわかりましたが、忘れ■どころか
書けば書■ほど思い出■てしま■■
やっ■り駄目■■■、私■馬鹿■■■■
忘■■くだ■■。
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