46 ― Blood on Letters ―
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【秘】 ギタリスト モーラ > E：旋風 カペーシア
[眷属の鴉が首から手紙を下げて舞い降りる。
和紙に灰色の薔薇染めのされた手紙の上、
相変わらず豪快な筆さばきで手紙が書かれいている。
しかも今日は更にド派手に朱色の墨が使われている]
その心意気や天晴れ！
いつかお前の愛と可愛さが
世界平和を巻き起こす！！
PS.うおおおお！なんだその文字！粋じゃねェか！！！
しかも俺の事まで知ってるたァ、そのマブは粋なヤツだぜェ！
俺はおもしれーヤツが大好きだ！！
これからも仲良くしよーぜ、カペっ子！！
[筆跡は迷いがないどころかノリノリで勢いがある]
【秘】 ギタリスト モーラ > E：旋風 カペーシア
笑ってたのかよ！まあ俺もド派手な文に笑ってたがな！
んで、カペっ子は人間や吸血鬼の知り合いもあんまいねェのか。
吸血鬼ってなァ人間とは違うからな。
孤独になりやすい生き方だよなァ……。
よっしゃ！じゃあ今日から俺がカペっ子のダチになるぜ！
困った時は俺になんでも聞けよ？
俺も吸血鬼のダチが増えるの久しぶりで嬉しいねェ。
で、俺の身の回りの話かァー。
俺のラブは今のとこギターとロックって感じだな。
人間はバンドメンバーやらライブ中は現地スタッフなんかとも繋がりがあるな。俺が吸血鬼設定で売ってるから頼めば割と普通に血をくれるヤツが多くて助かるぜ。
吸血鬼の数は東じゃ俺以外はあんま見かけねェなぁ。俺を吸血鬼にしたのも海を越えてやってきた吸血鬼だったし。
そう思うと東の吸血鬼ってなァ、レアなのかもな。
【秘】 ギタリスト モーラ > E：旋風 カペーシア
俺の話はこれくらいかねェ。
風の吹くまま気の向くままに生きて来た俺だ。
でも、こうして偶に出会えるダチってのはいいモンだねェ。
よかったら今度カペっ子の話も聞かせてくれよ。
その粋でド派手な文字の書き方とか、「メロい」？とか。
俺も人間世界の流行りを取り入れてより粋になってやるぜ！
一緒に愛で世界を救おうぜ！！
らぶ・あんど・ぴーす！！
メロくド派手なモーラ様より。
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
[また月のような瞳の鴉が飛んでくる。
灰色の花びら染めの和紙が数枚。
筆で綴られた筆跡は、今回はいつものような気ままで奔放な筆跡ではなく長考したように所々滲んだ墨の痕がある]
ヴィブラトへ
お前が元気で無事そうならよかった！
困った時はお互い様だからな、変な研究所のヤツらもなんとかしてセーフハウスで匿えた時はほっとしたぜ。
この灰色の薔薇の手紙も同胞同士のやり取りに便利だろ？
仲間との連絡はこまめにやっておいたほうがいいぜ。
なんかあった時、助け合えるからな。
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
正直、家族の話を聞いて俺ァ驚いたぜ。
ヴィブラトは吸血鬼になるまでは幸せに生きてたんだな。
親や家族に愛された記憶とか、すげー幸せそうでさ。
チョコレートカップケーキ、美味いよな。
疲れてて冷蔵庫にあったら食べたくなるよな。
でも、小さい娘の大事なモンだったんだなァ……。
それで喧嘩して、でも翌日にケーキを買って仲直りできりゃ御の字だったのによォ……。
死んじまうたァ、悲しいじゃねェか。
もう娘にも妻にも会えなくて、幸せな日常も戻って来なくてよォ。
こんな悲しい話、俺ァ初めて聞いたぜ！！！
誰も悪くねェのに、みんな悲しそうでよォ……。
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
きっと生きてりゃ娘の成長も傍で見れたはずなんだ。
妻と一緒に支え合いながらよォ……。
俺は自分が死ぬ間際そんな未練が一切なかった。
ずっと天涯孤独だったからな。
でも、そんな俺でも野垂れ時ぬくらいなら、もっと自由に生きれるならと縋ったのが今の吸血鬼の生だ。
そう思うと……勝手な憶測だが。
ヴィブラトは死の間際、生きたいと思ったのかもしれねェな。
どんな形でも生きて、妻や娘に会いたい……ってな。
それが愛や家族に縛られてるってェ見方もできるし。
もう一方じゃ、まだ家族と繋がれるチャンスをどうしても掴みたかったヴィブラトの家族愛の強さにも感じるんだ。
他の同胞とも盛り上がったが「愛は世界を救う」ってな！
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
[長考の多かった筆さばきが徐々にまた奔放に文字を綴る]
俺は馬鹿だからよく分かんねェけどよ。
どうせ死ぬはずだった二度目の生なんだ。
妻から否定されても、家族として会えなくても。
なんとかして会ってやれねェかなぁ？
あっ！サンタクロースって手があるじゃねぇか！！
クリスマスにこっそりプレゼント送りに行こうぜ！
サンタなら怪しまれない、大丈夫だ！！
なんだったら俺もトナカイ役として手伝うぜ！！
……って、一人で先走りすぎたな。悪い。
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
でもさ、ヴィブラトももっと自由に生きたらいいと思うぜ。
家族を忘れる自由じゃなく。
家族に愛を伝える自由がまだ残ってるって話だ。
人間は寿命が短いから悔いのないよう心のまま自由に生きたっていいじゃないか。
……それが家族を知らない俺の愛と自由だな。
心のままに、命尽きるまで愛を伝える。
そういうのが、ロックってヤツだ。
お陰で愛や家族のことが少し分かった気がするぜ。
ありがとう、ヴィブラト。
後悔がないように生きるんだぜ。
【秘】 ギタリスト モーラ > C＃m：宵月 ヴィブラト
PS.そういえばもうすぐ海外遠征でそっちに行くかも。
下見旅行中は手紙の返事が送れないけど元気にやってるぜ！
“宵月小堂”も行けたら行ってみたいな！
おもしれーヴィブラトの同居人の顔も見てみたいし。
吸血鬼の素性を秘密にするの把握したぜ！
じゃあ、網羅時代に贔屓の豪商にもらったからくり時計でも鑑定してもらおうかな。
なんか当時からすげー値段するって聞いてはいたけど結局、鑑定もなんにもしないまま持ち歩いてたしな。
なんにせよ、お互い愛と自由に生きていこうぜ！
モーラより。
【秘】 E：旋風 カペーシア > Am：朋義 グリッサ
[灰色のバラで染められた便箋には、
前回と同じく丸っこい女性らしい文字が連なる。
しかし、今回は前回の手紙とは異なり、
おちゃらけた感じは鳴りを潜め、
少し真面目そうな、申し訳なさそうな
強い筆圧のかかった文字と言葉が綴られる]
【秘】 E：旋風 カペーシア > Am：朋義 グリッサ
グリッサさんへ
お返事くれてありがとござます！
誰かに届け〜って思って送っただけだったから、
誰にも届かない可能性もあったけど、
無事にお手紙が届いて何よりハッピーうれぴーです
同行者さんと旅暮らし…それいいですね！
なんというか縛られない感じっていうの？大事なものだけ持って自由にどこにでも行ける感、チョーハイカラって感じで素敵です！
アルジ様ももしかして吸血鬼なのかな、それに各地にコミュニティがあるってことは知らなかったな。
アタシの住んでる街では吸血鬼はほぼ都市伝説も同然って感じというか。ホラーマンションの幽霊のほうがずっと信じられてるくらいだもの。もしこの街の近くにあるコミュニティ情報とかあったら、知りたいです。
…実は今ちょうど大家さんに家から追い出されそうになってたり、将来のこととかで悩んでるから、コミュニティにいく伝手があるだけ違う気がして。よかったらお願いします
[…その後、少女が住んでいるらしき住所が続く。スカイスクレイパーの溢れる現代的な街だが、アンダーグラウンドも格差も広い街だ。もしかしたらその近くにもコミュニティがあるのかもしれないが、少女はそれを知らないため念の為聞いてみる]
【秘】 E：旋風 カペーシア > Am：朋義 グリッサ
ついでの確認なんですけど…
そのコミュニティに入ったら最後、
『人間』たちとの交流って、
無くなっちゃったりしますかね…？
いや、アタシ、別に人間が好きとかそういうんじゃないんですけど…なんて言えばいいかわかんないけど…すごい、後ろ髪引っ張られる感じがするんです。
戦いだの戦争だの争いだの
競争だの格差だの蹴落としだの
そういうことやってる人間たちのことは
大大大大大大大嫌いなのに、
昔の人間の友達がくれたものとか、
パパ活でもらったものとかすてらんないし、
今の大学で出会った『友達』なんて、卒業したらそれまでなのに、別れるのがなんか惜しいって感じちゃう。
アタシのこの気持ち、何なのかわからないから余計に気持ち悪くって。
アタシは、『人間』をどうしたいのかわかんないんです。ただの餌だと思うようにしてるのに、みんなアタシに優しくしてくれて。けどそんな人たちから死んでくから馬鹿みたいに感じちゃうんです
【秘】 E：旋風 カペーシア > Am：朋義 グリッサ
だから、コミュニティとかって
普段どんなとこにあって、
どんなことしてすごしてる人が多いのか、
知りたいな…って感じ
グリッサさんは、
ゴシュジンサマと旅してるらしーけど、
その旅は楽しい？人間とはどんなふうに関わってるの？
…なんか、人間に未練たらたらなアタシのままで、
コミュニティでやっていけるか、ちょっと心配。
だからもしよかったら、教えてください。
返事いつでもダイジョブです！また旅が落ち着いたときにでも連絡ください。
進路に迷いちゃんな
カペーシア・ウィールウィンドより
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
[それは、灰色の薔薇で染められた封筒。
表面にはクマのぬいぐるみを描いた切手が貼られ、
「カペーシア・ウィールウィンド」の宛名が
濃紺のインクで綴られている。
宛名書きの字体は、丁寧で畏まった筆致のブロック体。]
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
[収められていた便箋もまた灰色の薔薇染め。
真っすぐに引かれた罫線の上に並ぶ文字は
濃紺のインクを用いた丁寧なブロック体。
ただしこちらは、宛名書きのほうと比べてみると
文字の線に幾らか、筆記体めいた撥ねがみられる。]
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
カペーシア・ウィールウィンド
こんにちは。
俺はブレンダン・クレセンツだ。正確に言えば、ブレンダン・クレセンツという人間だった。
今は、 “お仲間” として世話になった長老から賜った「ヴィブラト」の名で通している。
まずは、カレンへの手紙をこちらに返送してくれたことに感謝する。
誤配送で驚かせたなら悪かったが、届いてしまった先がカペーシアさんの元で良かったとも思っている。
今までも誰かが俺らの手紙を届けてくれていたんだろうが、君からの祈りがまた、あの子のもとに手紙を届ける力になってくれると信じている。
さて、カペーシアさんが気づいた通り、俺は吸血鬼で間違いない。
もちろん天国で暮らしてもいない、れっきとしたこの世の存在だ。
灰色の薔薇で染めた便箋についても知ってはいたんだが、そこまで “お仲間” に手紙を出す機会もなくてあまり使っていなかったんだ。育てるのはやはり大変なんだな……。
こちらについても、わざわざ教えてくれてありがとうな。
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
カレンのことだが、最近の手紙を読む限り、おそらく戦火に直接遭っている訳ではないらしい。
ただ近頃の戦争を身近に感じるくらいには、戦争の影響を強く受けている地域にいるんだろう。
前には国外出張が続きそうだとも書いていたから、今の忙しさや辛さもそこから来ているのだと思う。本当に、色々な意味での戦争だな。
カレンとジェニー（妻のことだ）のことを案じてくれて、無事を願ってくれて、ありがとう。
妻の住む国では戦争も紛争も起こっていないし、カレンの手紙を読む限り引っ越してもいないようだから、そこは安心してほしい。
人間が戦争なんてしなけりゃ……と俺もうんざりしているが、実際に戦時下を肌身で知っている人間や人間以外に比べれば、こんな嫌気も甘っちょろいのかもしれない。
カペーシアさんが戦争を嫌い、その災禍に遭っている人々を心から想うのは、過酷な戦時を生きた人々が友達にいたこともあってなんだろうと思う。
前の文章で、手紙が届いた先がカペーシアさんの元で良かった、と書いたが……。
これは君が妖力を辿れる “お仲間” というだけじゃなく、誰かの痛みに心を寄せられる人（吸血鬼だが）だと思えたから、というのもある。
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
カペーシアさんの謝罪を受け取った上で、君の厚意に甘える形で、妻のジェニーについても少しだけ書かせてほしい。
実を言うと、俺は吸血鬼になってから一度だけ、ジェニーに会いに行ったことがある。
一度死んだ身でも、たとえ「人の生き血を啜る化け物」であっても、人間の頃と同じように家族と共に暮らしたいと望んだんだ。
その望みが叶わなかったことは、あの手紙を読んだ君ならとうに解っているとは思うが……。
ジェニーにしてみれば、俺は死者以外の何者でもなかった。
吸血鬼は生ける屍だとか悪霊だとか、それでもちゃんと生きているとか、そういう話じゃない。
あの人は「ブレンダンは死んだ」「ブレンダンはもういない」という事実を受け入れていたんだ。
（そう言い切れるくらい、俺はかなり無残な死体になっていたらしい。今の俺にもそれらしい傷跡がある）
だからジェニーは、「生きている」俺の存在をきっぱりと否定したんだろう。それで、俺のほうからあの人に言葉を届けることができなかった。
「夫の偽物」としての俺が現れることで、あの人の心をまた傷つけてしまわないか、と。
またあの時みたいに、俺は拒絶されるんじゃないかと。
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
だが今になってみて、漸く気づいた。
俺は既に「死んだもの」として、妻に会いに行くべきだったんじゃないか。
俺は “亡霊” として、今からあの人に会いに行ってもいいんじゃないか、ってな。
思えばカレンだって、あくまで俺が天国にいる身だと思って手紙を書いてくれている訳なんだから、あの子のもとにも “亡霊” として会いに行ったっていいんだ。
このことに気づけたのは、カペーシアさんの手紙のお陰だ。
手元に残り続ける手紙だけじゃ未練になる。置いていかれた側の君がそう言うのなら、きっとそうなんだろう。
生きているうちに一目だけでも会えるなら、その方がいい。
多分、俺も逆の立場なら、そう思うんじゃないかって気がしたしな。
【秘】 C＃m：宵月 ヴィブラト > E：旋風 カペーシア
率直に言えば、まだ少し躊躇う気持ちはある。
それでも一歩、踏み出してみようと思う。
あのふたりに未練を残させたままのうのうと生き長らえる方が、余程ひどい夫や父親になっちまうからな。
最後になったが、カペーシアさんとこうして手紙で繋がれたのも、何かの縁なんだろう。
これからもまた、何かしら手紙を書けたらと思っている。
君も、俺になんでも話してくれていい。
もちろん、他の同胞たちとも、 “お仲間” として気張らずに接していけたらと思っているさ。
カペーシアさん。これからも、よろしくな。
ブレンダン “ヴィブラト” クレセンツ
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