12 【突発】ヴァルハラ・ガレージ【R-18ランダ】
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【秘】 深紅九泉 ナデシコ > 空洞 ラグーン
[彼の主人が15年、或いはもっと前に亡くなったかは定かではなく。
優秀だと持ち上げられた分、積み上げられた敵の屍は如何程か。前線を退いた身ではどこで戦果をどれ程あげたか、もう判別すら付かないでいる。
戦争孤児に自分が仇だと告げて生きる希望を与える優しい嘘と同じものなのか。
それとも瑣末な罪悪感から逃れたいだけに吐いた嘘か、はたまた偶然の積み重ねの真実なのか。
仲良くしたいと願いながらも余計な言葉を紡ぐのは、どうしようもない癖なのだろう。
自分の体を飲み込んだカーボンの胸板部分をひと撫でし、大分マシになった心音を掌越しに聞く。
呆れるのか、落胆するのか、それとも怒るのか。
困らせるのだけは可哀想だな、なんて。
性格の悪いことを考えながら静かに目を伏せた。]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
[生身の身体には堪える寒さから守るような抱擁の中で、伏し目がちに見詰めたまま次の言葉を待った。
まだ低い体温では動きが鈍く、足指の先でシーツを摘んでは身体の下へ入れ込む様にしながら丸くなる。]
……理屈ではない、という言葉そのものが
一種の理屈なのだろうけど……
[あからさまに言葉を濁すのは、込み入った話を避けたい時の悪い癖。
自らの命にさえ執着がないからこそ、気にかけられる理由も大事にされる理由も分からなかった。
壊すどころか愛おしさを抱いてしまうなんて難儀な人。
だけどその退け方も、私は知らない。
らしくないね、なんて茶化す事が出来たのなら少しは楽になったのだろうけれど、此方から誘った手前言える筈もなく。]
んふ、 待っ て……ってば
[言葉を選んでいる内に強く抱きすくめられ、胸板にぶつかりそうになる顔をすんでのところで背けた。暫くされるがままになって、控えめな力でもがく。
覚えているのも、先に目覚めて待っているのも、いつも此方だけ。モノ同然に扱ってくれたらそれで良かった。
それで良かった、のに。]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
[やっとの事で腕の中から抜け出すと、怠い身体をゆっくりと起こす。肩まで掛けられていたシーツがはらりと膝の上に落ちた。
残っていた上衣をたくし上げ、背中から頭にかけてを脱ぎ去り、身体の前で合わせた両肘に生地が掛かるところで動きを止める。]
……それは、私がどんな業を抱えているか
知った上でそう、言っているのだよね……
[おずおずと片腕ずつを袖から抜く。
そうして衣服を傍らに放り、露わになった左胸には……
スキャン用の図形と被検体番号が刻まれていた。
ただそれだけで、どんな風に扱われて来たのかが否応なしに解ってしまうだろう。]
私は、私の生まれ持った名前をもう知らない
故郷の記憶は、目の前で焼かれていく場面だけ
愛情が何かだって、到底判る筈もないよ
……ううん、それだけじゃない
[母の温もりも、父の背中も、そこにあったはずなのに。字を綴る事さえ許されなかった短い季節の間に全て零れ落ちてしまった。たったひとつの名前を残して。
自嘲気味に笑ったのは、改めてこうして口にしてみれば如何に自分が傲慢な願いを抱いていたかを知ったから。“忘れて欲しくない”などとは烏滸がましい。]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
恥ずかしい出来事だっていつまでも覚えているよ？
三日に一度は気絶するよ？
……貴方より、先に逝くかも知れないんだよ
[孤独にはそれなりの理由が付き纏うもので。誰かに預けるには脆すぎたから、独りでそっと消える未来を何度も想像した。
薬も、煙草も、セックスも、気を紛らわすものを得る為のリスクは馬鹿にならず、余計に息苦しさを加速させた。
けれど、次こそは壊されたいと望んだ時から。
薄れゆく意識の中で安堵を覚えた瞬間から。
“この命に届いた者に全てを与える”という因果は、いつの間にか逆転していたのかも知れなかった。
────今は、愛の何たるかを知ってみたい。
往年の人々はそれを執着と呼んだ。*]
【秘】 武器商人 コープスリバイバー > 不眠不忘 ソウルキス
[腕の中から離れていった体温に、ほんの少しの寂しさを覚える。
このまま去られたらどうしようか、そんな馬鹿馬鹿しい妄想が、心の中に雪のように降り積もって行く。その妄想に雪解けは無く、しんしんと心を濡らして。
落ちるシーツを目で追って、上半身を起こしベッドの上に座り直す。
自身の褐色の身体は生身のパーツの方が少ないモノではあったが、外見は人工皮膚などで補われており、見てくれは普通のニンゲンと変わりはしない。
温もりこそあれど、四肢の芯は鋼とセラミック。柔らかさは違和感の無いようシリコンで構成されていた。
右半身のタトゥーはまるで、生身とパーツ個所を分ける亀裂のようで。
露わになった彼の左胸に、驚くような瞬きを一つ。そうして理解した事柄に眉を顰める。
語られる言葉に静かな相槌を落とし、彼の喪失を想う。
自分では想像の及ばない域の苦痛に歯がゆさを覚えた。
それでも、
ああ、全部分かってそう言ってる。そのつもりだ。
全て承知して、欲しいと願っている。
理解できることも、未だ及ばない箇所も、全て受け止めるつもりで。]
【秘】 武器商人 コープスリバイバー > 不眠不忘 ソウルキス
全部覚えててくれて構わない
[恥ずかしい事？それがどうした、俺を小突く材料にでもしてやれ。お前にとっては残酷かもしれないが、俺と言う存在がお前の中で永遠に引き延ばされて行く事はとても幸福に思えた。]
気絶したら介抱してやる
寝顔でも眺めながらさ
[それで、起き抜けにおはようって言ってやるよ、何度だって。]
ヒトの限界、寿命ぐらい理解してるし
もし先に逝っても、ずっと愛し続ける覚悟ぐらいある
[出会って僅かな間柄だが、俺は相当お前に入れ込んでる。
なんでだろうな、多分俺もどうかしてるんだ。
必死に口説き落とそうとしている自分に笑ってしまう。けれどお前の心に、命に向かって手を伸ばす、そのどれもが本当の言葉。]
分かるだろ？惚れてんだよ
[お前が飽くか、それか朽ちるまで、この腕の中に居てほしい。そう願う事は罪なのだろうか。
真剣な顔で右手を伸ばし、頬に触れる。まるで壊れ物を扱うかのように、愛おしい物を優しくなぞって。*]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
[永い孤独に芯まで凍り付いた魂が、燎原の火の如く止めどない感情に触れて融解し始める。凍傷を湯で解した様に、心の中の不安を司る箇所が鋭く痛んでいる。
己の業に誰かを巻き込み不幸にする恐怖と、それと同程度の未来への憧れがそこにあった。
乾いた頬に触れる温度は少し高く、観念したように瞳を細める。
脳は刻一刻と増えていく頁に唯一人を描き出す。
押し出され抜け落ちていった過去よりも、何より真っ直ぐな貴方の言葉を。]
……嗚呼、欲深く……なってしまうな
[呟いたのは、ずっと縛り付け抑制して来た自らの機微について。誰かに興味を抱けば自身の境遇に裏切られるという経験で満ちているからこそ、他者の深層には無関心でいたつもり。
けれど今貴方が高らかに唄う感情は、元を辿れば己と同じ原理なのだろうか。心の片側に誰かを必要とする事で、自分は凍った星を発てるだろうか。
今は拙く未熟な、見様見真似の愛情でも。いずれ貴方と釣り合う未来を密かに胸の中で描いた。]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
[今にも崩れそうな身体で這って。
人一人分の距離を、半ば倒れ込むようにして。
そうやって辿り着いた温もりの出処に頬を擦り寄せてから、厚い肩を掴んで転びかけた体勢を整える。
脚を畳めば視線は殆ど同じ高さ。一糸纏わぬ姿で赤子のように見詰めては薄く笑んで、その先にある小さな期待と思惑を隠さずに居る。]
分からないなら分からないなりにさ
ちゃんと知って、それから貴方に返したいものが出来た
[彼がしたように触れ、両手の指の腹で頬骨の形をなぞる。そして少し躊躇いがちに腕を下ろせばシーツに手をついて、顔を近付けながらもの欲しげに唇を開いた。
それは到底、先程までの行為とは不釣り合いなまでに純粋な仕草で。]
敢えて知識として得るのを避けてきた物事も
今はもう怖くない筈……だから、ね
ここに、ください。頭じゃなくて……
[大切にされる事。慮られる事。安心して身体を委ね、目を閉じて何も考えずに居られる魂の拠り所が在る事。
出来るなら、その喜びを知って、覚えて、同じ分を返せる様になりたい。
その為に。]
【秘】 不眠不忘 ソウルキス > 武器商人 コープスリバイバー
[────魂を揺るがす程の、情熱の口づけを。
この身体がずっと覚えているぐらいに刻んで。
改めて教えを請う様に、切実に目を閉じる。
破滅ではなく知識に貪欲となった今、期待に濡らした唇が意図よりもずっと婀娜めいて貴方を招き寄せた。*]
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
貴方の発言回数と内容は、私の予想の遥か上をいっておりましたので。
……500時で納め切るにはなかなか至難の業だ。
[う〜ん、微妙な点数。別に聞かなくても良かったかもな、なんて意地悪も言いたくなる。
AIに迷いを与えたところでろくなことなど起きないのに、おかしな人間だこと。内心が読み取れるのならまるで気持ちを整理できない小学生のようだ、などと言えただろうに。]
……そこまでしても払拭することのないトラウマであると知りながら、何故私に包み込まれたいなどと。
自分を追い詰めたところで結果は変わらないでしょう。……優秀とは程遠い馬鹿ですね、貴方。
[いい慣れた皮肉だった。言ったところで改められないことも知っている。
怖いだろうとわかっていながら手を貸した自分もきっと、同じ穴の狢みたいなもんだろう。言葉とは裏腹に、さっさと吐き出さず指示を待つあたりも薄情なものだ。
当てつけのようにも、不理解の不満をぶつけるようにも思える。
ペットが飼い主に似るように、機械も創造者に似る可能性があったりするものなのだろうか。果てを夢見て、神に近づこうとする、満たせぬ貪欲さ。一方通行な思考でさえも。]
…………今は、中に人がいますよ。貴方という人が。
人工知能とは、人からものを学ぶものでしょう？
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
……考えて、行き着く果てはいつも同じ答えです。
最早たらればの仮定などどうでもいい。
彼女の存在価値は何だったのか。ただ、機械弄りが三度の飯より好きだっただけの人間が、何故悪として死ななければならなかったのか。
争い事などまるでない、知識だけが湧き出る、楽園みたいな場所を夢見ていたはずだというのに────……
[単なる時間稼ぎとはいえ、機体の撃破数は15。元ある知識を最大限に活かした、コアを狙った攻撃方法は、戦士であれば誉高き偉業とはいえ、本人にとっては不名誉なことだっただろう。
元は唯のプログラマーだった。
誰よりも技術への好奇心があって、決まったルーティンがあって、平穏を愛する人だった。それがどうして、こんなことに。
数列の中央には、話す度に形が波形のように乱れる円がある。人工知能のコアとも呼べるそこは、今は混乱するかのように崩れ続けていた。
彼女の夢見た世界が、自分に託された理想が、今も尚夢物語のようにさえ感じる。]
………………………………。貴方は、分からないことばかりだな。
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
何故、今、それを？
[人工知能に復讐する機能など備わっていない。
敵や仇という認識自体も薄らぼんやりとしている上に、大した確証もなければ、責めて問い詰めることも難しい。
この身一人で突撃し、少しの自軍を刈り取られ、燃え盛りながら落下していく姿をどんな目で見ていたのだろう。それが貴方のみたかった景色そのものだったのだろうか。
……告白の結果、受けた反応はきっと、彼が1番望まないものだったかもしれない。]
……貴方は。
今は一体どうしたいのですか。
【秘】 武器商人 コープスリバイバー > 不眠不忘 ソウルキス
[胸の中に飛び込んで来たのは愛おしい熱。
笑みながらこちらの頬に触れる指先を、擽ったそうに笑っただろう。
シーツの上へと逃げていく指先を名残惜しそうに眼で追って、けれどそれでも近づいてきてくれるのなら、俺はそれを幸福と感じる。]
――そうか、
ならもう、引導の件はチャラでいいよな
[お互い返したい物、与えたい物があるのならば、そんな物騒な話は遠くへ放り投げてしまおう。
どうか、俺と、俺の愛を知る事を恐れないで欲しい。
忌避も恐れも、これから一緒に探って潰して、共有して行けばいいだろうから。]
好きだ
[惚れてるって言っただろ。好いている事を改めて告げて、シーツについた彼の右手に、左手を重ね縫い留めた。
昨夜乱れた娼婦から、何処かあどけなさの残る青年の物へと、相手の印象が切り替わる。
近づく顔に目を細めると、誘うそれに吸い寄せられるかのように、後頭部に右手を回し引き寄せると、眼を閉じゆっくりと口づけた。]
【秘】 武器商人 コープスリバイバー > 不眠不忘 ソウルキス
ん、
[舌で唇を割り、彼の舌を吸い上げると、甘く噛み、絡ませる。
溶け合う温度に満足感を覚えながら、何度も、何度も、熱く。
愛してるの言葉を溶かした口づけを、君に贈るから。
この愛を自分ごと覚えていて。*]
【秘】 深紅九泉 ナデシコ > 空洞 ラグーン
[幾つかのどうしてに、さぁ。なんて曖昧な答え。
自分でも分かっていないことが応えられるとでも、という棚上げ精神は一旦横に置くとしよう。
馬鹿と皮肉られて中からどう反撃したものか、と悩んだ訳ではない。決して。]
おじさんさぁ。
まだ見たことのない星とかにも行きたくて。
でもスーツ着用しなきゃ辿り着けない所もあるから、飽きるまで一緒に居てくれたら助かるんだけどな。って。
でももし、ラグーンくんに禍根があったら大変じゃない？
[困らせただろうかと言葉を変えて、崩れた円を見上げた。
人工知能だと認識している筈がどうにも、普通の人間と話している感覚が抜けてくれない。
真円を作れないそれに額をくっつけようと首を伸ばすが、さて如何程近付くだろうか。]
【秘】 深紅九泉 ナデシコ > 空洞 ラグーン
[要は、さ。]
おじさんに利用されてみない？っていうお誘い。
[いつかは君自身で答えを出せるかもしれないし、
いつまでも辿り着けないかもしれない。
単なるおじさんの気紛れだよ。と、小さく、付け足して。]
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
……本当に、わからない人だ。感性も、思考回路も。
[さんざ性的だと指摘され、挙げ句の果てにはこれだもの。
はいそうですねと首を振るには材料が足りなすぎて、ますます困ってしまった。
けれど、自分に足りないものは存在理由と与えられるべき指令であり、何れはここを離れなくてはいけないことも事実だったから。
いずれ、争いも何もない平和な場所に辿り着けたなら。
貴方のいるべき場所はここだったのだと知らせるために、その地に彼女を下ろしたい。
やっとの思いで拾い集めた、焦げついた主人だった灰が、懐の奥で眠っているから。
いつまでその気紛れが続くのかさえ予想もできないくせに、つい、その理由に縋りつきたくなってしまった。]
……私は優しくなどありませんよ。この通り、貴方に配慮することも出来ないし、酷い言葉を言う時もある。
……ですが、望むのであればなんだって、可能な範囲で叶えることはできるでしょう。
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
[1番に浮かぶのは、戸惑い。
嘗ては敵だったかもしれない相手と呑気に旅をしようと誘う者がいるかと吐き捨てたくもなる。沢山の質問を数珠繋ぎにしてしまいそうになるところを必死に抑えて、波長を落ち着かせようとする。
何を考えたところで、彼の心も、命の意味も計算だけでは導かれることはない。]
……要するに、私を都合よく利用するという体で、連れて行きたいのだと。
そういうことですか。
[コアが近いせいだろうか。
内部で流された返事は、外部で聞こえる機械音声とは裏腹に、ずっとクリアで聞き取りやすく、本当の人であるかのように思えるかもしれない。
寄せられた額は液晶部分で壁を隔てるようにこつん、とぶつかり。驚いたように大きく円が乱された。]
……私以外にも幾らでもいるでしょうに。
もっと苦しくなくて、ポンコツでもない機体なんて。
【秘】 空洞 ラグーン > 深紅九泉 ナデシコ
……どうぞ、何なりとご利用ください。
貴方の気が変わらないようにする努力は致しましょう。*
[空っぽの機体に、利用動機を注ぎ込む。
貴方を理解することと、彼女の弔い方を探るため。]
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