26 ― 境界の先への手紙 ―
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こうして走り抜けている間に、コルデリアがぽつりと微かに零した問い>>323が耳に届く。
足は止めない。止められない。振り返りもできない。
ああ、手紙を書く時のように、悠長に冷静に考え抜いて語ることなんて、できやしないが――!
必死に走り続けて荒くなった呼吸のまま、俺は、答えた。
「いっぱい、いるから、だよッ、
アンタを、心配、してるヤツ、がッ!」
(326) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:12:29
……「いっぱい」というのは誇張だったかもしれない。現にバラ・トルーパーズの役人が「わざわざ残っている」なんて宣いやがった例がある。
それでも、少なくとも、俺以外にこの人を案じている存在がいることは事実なんだ。
蓬儡の旦那は、人の身にしてみれば遥かなる山のような御方で、人間への思いも確かにただの同情か憐憫なのかもしれない。それでも、確かにコルデリアを心配していた。
旦那が彼女のことをあれこれと聞けていないのは、当妖の言葉通り、単純に遣り取りの少なさの所為かもしれなかったが――煙霞山を束ねる上級妖魔としての責務やしがらみの所為もあって、「手を伸ばせ」なかったのかもしれない。
ああ、だからこその、あの追伸の一文だったのかもな。山の長よりもずっと自由で、かつ同じ短命の人間である俺に、「手を伸ばす」のを託したってやつだ。
(327) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:24:57
てをのばす てをのばす
いつのきおくか なんのきおくか
もう ■はしっている これはゆめ とおいゆめ
たすけたいとてをのばしつづけた そんなゆめ
…てをのばしても ふりはらわれてきたゆめ
たすかりたいなら どうかふりはらわないで
(328) sleepsheep 2024/10/03(Thu) 08:30:16
てをつなぐには りょうほうが
てをのばさなければ はじまらないのだから
(329) sleepsheep 2024/10/03(Thu) 08:30:47
それに言うまでもなく、エンデから逃れてきた多くの人々の存在がある。
あの“終焉”が起こる前にコルデリアの周辺にどんな人々がいたかは俺には定かには解らない――昔のエンデについての話に対してこの人が綴った想いの箇所も>>3:-21、読めなかったんだが。
それでも普通、滅びゆく故郷を追われた民にとって、同郷の民の存在は大きいもんだろ。
……俺だって、そうなんだ。故郷を捨てた身でありながら、そこに留まる友らを、ベアーたちを、想っている。
或いは、俺や旦那の元に手紙が来ていたくらいなんだ。
他にもコルデリアと手紙の遣り取りをしているひとが、いたんじゃないか。そのひとたちは、どうなんだ。
コルデリアの手紙から察するに、その中に彼女の友人――美術家のその人はいないんだろうがな。
……ガァドの「いろんなつながり」の中にコルデリアがいるかまでは、まあ、解らないんだが。
っていか結構な書き損じを残しちまうようなこの人に対してあの「探偵殺し」が何を思うかは……流石にこの時の俺の思考の中にはなかったし、今もちょっと考えられないでいる。
(330) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:48:23
……そう、深いことなんてこの時の俺には、何も考えられちゃいなかった。考えられないなりに、俺は、コルデリアへ背中越しに答えを続けたんだ。
「アンタを、助けたくても、助けられ、ない、
そういう、ヤツが、いるんだよ!」
走る。ひた走る。
少しずつ、日の光が木々と“獣道”の隙間から差し込み始める。
「知ってるんだぞ、俺は、……アンタ、が、
蓬儡の、旦那にも、手紙、送ってた、こと、
あのひと、も、アンタ、を、心配してたッ、」
(331) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:48:44
ああ、コルデリアと、美術家の友との間に、実際のところ何があったのかは判りやしない。
友がこの小惑星を出る前のこと。友との別れ際のこと。別れてからのこと――相手の居所も知れないくらいに疎遠になっていること。
あの美術家とただのビジネス上の付き合いだった俺も、まだ、あの絵描きの心の深い部分まで零されちゃあいない、けれど。
それでも、このくらいは、言いたくもなったんだよ。
「アンタのご友人だって、そうだろうさ!
……実際のアンタらの事情は知らないがッ、
互いに言葉を繋げば、想いを、繋げば、
手を伸ばしてみりゃ、変わることもあるだろッ!」
(332) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:49:24
――悪い、ガァド。これじゃお前さんの言の葉の受け売りだな。
それでもさ、少なくとも「友の居所も判らないくらいに疎遠にはなってるんだろう」ってことだけは察せられたから、俺はコルデリアにああ>>332言ったんだ。
「もし、旦那、や、友の、こと、が、
信じられないって、いう、なら、」
――光が、みえる。
木々の海の向こう側に、トーチバードの金と紅の翼がみえる!
「俺だけでも、信じろッ、コルデリア!
俺が、アンタに手を伸ばすから!」
(333) sakanoka 2024/10/03(Thu) 08:59:55
俺はコルデリアを背負ったまま、トーチバードの胴体部分の搭乗口に滑り込んだ。背後を任せていたクロウも、ホバー音を建てながら機内に入り込み、搭乗口をロックする。
「クロウ、コルデリアを頼む!」
「マスター マーチェンド リョウカイ デス
コルデリア サマ ヲ オマモリ イタシマス」
決して広くはない機内の中、コルデリアを座席のひとつの上に静かに下ろしてから、俺は操縦席に就いた。離陸時に機体が揺れるから、その際にはクロウにアームで病身の彼女を支えて貰わないと。
こうしてエンデの空を発ってからは、事前に役所側から指定されたバラ・トルーパーズで検疫だけ済ませて――そのまますぐにゲッカへと直行する。コルデリアをバラの医療機関に診て貰うことも考えたが、シップの乗り降りが立て続けになることで身体に負担がことが考えられたため、このフライトを選んだ。
今頃ならおそらく、早ければ、俺からの手紙がもう蓬儡の旦那のもとに着いている頃だろう。だから心の準備くらいはできている筈だ。“この”可愛らしいトーチバードをすぐに俺のシップだと認識してくれるかはまた別だが。
(334) sakanoka 2024/10/03(Thu) 09:22:31
あの小惑星の、カタコンベ有するあの半地下の建物に残されているもの――家屋の主が亡くなっていたならば持ち帰っていただろうもののことをふと思ったのは、この一連の決死行が落ち着いてからのことだった。*
(335) sakanoka 2024/10/03(Thu) 09:22:50
エンデ出立前:バラ・トルーパーズ
……で、そんな決死行の前に、書いていた手紙のことだ。
俺は“柄長の鳥”の妖精に、短く、こう書き綴って返していた。
『柄長の鳥の あなたへ
翼をもがれずに済んだ小鳥のあなたに
遠くの空からでも 火の鳥は灯を掲げます
そして火の鳥が小鳥の傍に降り立つ時
あなた繕ってくれた翼を広げて
その眼差しを重ねて あなたを守ります
火と灯の鳥より』
(336) sakanoka 2024/10/03(Thu) 09:33:52
…………。
俺はそろそろ、自分の中の想いを認めないといけない頃合いらしい。
(337) sakanoka 2024/10/03(Thu) 09:34:45
揺れる背の上、途切れ途切れの微睡みのなか、
それでも至近距離の彼の声はよく響いた。
どうやらいっぱいいる、らしい。
心配をしてくれている人、助けたいと思っている人
現にこうして目の前にまで来てくれているのだ、
その言葉に嘘は無いのだろう。
一度手が離れて、滅びゆく小惑星に残って、
そうして段々とひとが居なくなって、
全部、私に繋がる縁は途切れたと思っていた。
…… たったの数枚の手紙でこんな場所にまで、
誰かが来てくれるなんてことも、
その向こうに居る人たちが存外に大勢いて、
私のことを案じていたなど、考えもしなかった。
(338) uiro 2024/10/03(Thu) 09:36:47
私も私だ、あの日に全部断ち切った気でいて、
未練がましく手紙なんて書いているから。
泥の手紙の主に散々煽られたこと、
なにひとつ言い返す言葉もない。本当は。
「 ………… 」
もうじき死ぬから、どうせ無駄になりますよ。
なんてことを言えないくらいの気迫に、
黙りこくったまま、すこし後ろを振り返った。
緑が溢れ返る終いの小惑星。すきだった私の故郷。
今やっとすこしだけ、あの日この小惑星を去った
かれらの気持ちが理解できる気がした。
(339) uiro 2024/10/03(Thu) 09:40:41
「 …………いいの? 」
咳きこむ間に問うたのは、何に対してだったか。
私はここから去ってもいいのか。
生きることを望んでもいいのか。
差し伸べられた手を掴んでいいのか。
いいよ、と 納骨堂のほうからなにか聞こえた、
そんなような気がした。
私の都合のいい、気のせいなのかもしれないが。
(340) uiro 2024/10/03(Thu) 09:41:39
ところで此度のエンデの渡航に際しては、滞在期限が儲けられていた。
言い方を変えれば――“いつまでに帰れるか”の予定がはっきりと見えていたってことだ。
ここで俺は、届いた手紙への返信ではない手紙を――いや、厳密に言えば「出し損ねていた」返信を、ここで改めて綴ることにした。
(341) sakanoka 2024/10/03(Thu) 09:47:20
ゲッカの山主。かつて遠くに行った友人。
それから眼前のマーチェンド。
彼らを信じられないわけじゃ無い。
ただ、要らぬ手を掛けさせる自分が嫌で、──
── そういうのがよくないのだったか。
助けたかった側の人たちの言葉が、
届いていた手紙から、今なら少なからずわかる。
「 ごめん、なさい、…… あり がとう 」
切れ切れにそう呟いたのは、届いたかはわからないが。
(342) uiro 2024/10/03(Thu) 09:47:43
かくしてこの日、エンデの星から
生きている人の姿は消え去った。
(343) uiro 2024/10/03(Thu) 09:48:53
…時はめぐる。
リジェットVでの生活は、静寂の海に比べたら
日が昇って、沈んでが とても早く感じる。
いろんな人と、いろんな生き物たち…キメラたちとの共同生活は楽しかった。人とのふれあいが好きな泥は、比較的実験や農作業等々いろんなものに協力を惜しまなかった。
…だれかと はなす
だれかとせいかつするのが、たのしい。
いつかであいたいひとはたくさんいる。
もっと、であいたいばしょがある。
(344) sleepsheep 2024/10/03(Thu) 09:53:24
1日が終わる。日が沈む。
皆がゆっくり休む頃になったなら…
泥の男は口を開く。
『…今日も オツカレ さま。
コンヤは… クマサン脱走事件のはなしでも』
物語を語る泥は。 今日も誰かに物語を伝う。**
(345) sleepsheep 2024/10/03(Thu) 09:55:17
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