石工 アロイス

[と言って食べ始めて一口、ぱっと表情が明るくなったのは間違いなく味によるものだろう。野菜はシャキシャキで、鶏はしっかり味がついて柔らかい。
いつもよりは食べる速度はゆっくりめにしたものの、どうしても俺の方が先に食べ終わり先生を待つようになる。

食べているのを待つ間、先生が食べる姿>>227を眺めていた。

気品を感じる食べ方。小さな口。白い歯。運ばれるサンドイッチ。
黙っていると頭がひっきりなしに試算を繰り返していた。
とめどなく同じことを何度も。だから、ふと口を開く。]

石工 アロイス

食べながら、ただ聞くだけ、聞いてもらえますか。

さっきリトリコ先生が聞いてた事ですけど。
俺は、リトリコ先生が”先生”じゃなくっても、
ずっとこの村にいてくれたら、嬉しいです。

あー、俺もついリトリコ先生の事先生って呼んじゃってますけど…
先生は俺より歳は上だし色々な事を知ってるし…
さっき頭撫でてもらったのも、なんか「先生」って感じがして。

だからただ名前で呼ぶのは抵抗があるし、「さん」付けは逆によそよそしいような気もして、そう呼んじゃってる、みたいな感じなんです。

先生がもし気になるなら、呼び方変えた方がいいんですかね。はは…

石工 アロイス

……でも、この村で子供たちに慕われてる先生の事、俺も短い間だけどずっと見てきましたし…
これからもそうだったら嬉しいなって思ってるのは本当です。
先生の昔の事とか俺何も知らないですけど、なんでもなくなったら辛いから。

先生がこの村で新しく色々なものを手にしてくれたらそれが一番いいかなって。

まあ、欲を言えば俺の……　あ。

[思わず口を滑らせそうになってはたと先生の顔を見つめて、それからふっと表情を柔らかくした。]

石工 アロイス

決めた。


……先生。　食べ終わったら、見てもらえますか。

俺の作った首飾り。

見てほしいんです、リトリコ先生に。


[そう決めて口にしまえば、かえって肝が座った気がした。
結局、あれこれと考え過ぎるのは俺のやり方ではない。

ラヴに言ったとおり、ダメだったらそれはそれで仕方がない…

だから、今の俺の気持ちをきちんと先生に伝えよう。
その目を見てはっきりと**]

石工 アロイス

広場外れ

[俺の方が最初は先生と祭を回れる事に緊張していたとか、多少とも浮かれていたのはあると思う。そして、いつどうやって差し出すか…そればかり気にしていたというのも確かだ。

だから、先生の顔が何となく浮かないような、視線が下に落ちている>>290のに気付いたのはこうして座って食事している間にようやくだった。
もちろん、考えている事>>291なんて気づかず…　いや、あるいは…そうだったらいいなぐらいには考えてもいたのだけれど、楽観的になるべきではないと考えて、あえてその可能性は追わずにいた。

そういう意味では、俺も上手くいかなかったときが怖いというラヴに対してあまり偉そうな事を言えた義理ではなかったのだろうが…]

石工 アロイス

…リトリコ先生？

[思わず声をかけたのは、先生の顔が浮かない…を通り越して目が潤んでいる>>292ように見えたからだ。視線も合わないというより、そらされているように見える。

そういうものを見て、自覚した。
首飾りを出さずにこのまま引っ張るのは俺のわがままで、先生にとっていい事は一つもない。俺にとっての結果が良くても悪くても、どちらでも。

だから、決心して声をかけた。
先生が最後の一口を食べ終えて、ナプキンで口を拭く>>293。前から思っていたけれど、本当に育ちがいいんだろうな。俺も、普段はあまりそうしないけれどていねいに口元を拭った。

それからピタを包んでいた紙を片付けて、サブポーチに入れていた木造の小箱を取り出す。それ自体も少し古風な彫刻が施された重厚なデザインだ。]

石工 アロイス

いえ、こちらこそ急かしたみたいになってしまってすみません。
…開けますよ。


[先生の顔にもう一度視線を向けて、一呼吸してから箱を開く。

菫色をしている事からその名がついた、青い青紫色をした三日月型のアイオライト。その三日月の先同士にぴたりと嵌る、十字のような星光を内側に閉じ込めたもう一つの丸いアイオライト。

そこから鎖が伸びて、手製のネックレスを形作っている。]

石工 アロイス

星のデザインで考えてたんですけど…

もう一回イメージを練り直したらね。
俺がこれを贈りたいと思っている人は、どっちかというと星よりは月のイメージでした。
柔らかく光って、優しく照らし出して人を導いてくれる…月です、やっぱり。

でも俺にとっては星でもあるでしょうね。
憧れて、届かせたくて手を伸ばす…　そういう人です。
その人に恥ずかしくないような一人前になりたい…
そう思って頑張っているようなところも正直あって。

月が色々に姿を変えていくように、
その人のいろいろな姿、いろいろな顔を…見ていけたらいいなって。

だから、こうなりました。

石工 アロイス

[先生の前に小箱に入った首飾りをそのまま差し出した。
そして、告げる。]


リトリコ先生。

…これは、先生のために作った首飾りです。
俺の気持ちです。


俺、先生の事がずっと好きでした。

受け取ってもらえないでしょうか。
それが、俺の望みです。

[自分でも驚くほどしっかりと落ち着いて、
先生の顔を正面から見ながらそう告げた**]

石工 アロイス

広場外れ

[リトリコ先生は第一声に綺麗、と言ってくれた>>336。それだけでなんだか全て報われるような気がした。たとえ結果がダメでも、どうでも。]

ええ、普段の石切りとは全然違うから結構苦労しましたけどね。
先生の話を聞いてから実際彫ったのはこの月の方ですけど…
悪くない出来かなって。

[こっちの方の才能もあるのだろうか。
などと言ったら親父に怒られてしまいそうだが。
褒めてもらえたのに気をよくして、先生の内心はやっぱりきちんと推し量れなかったかもしれないが。

でも、それ以上待たせはせずに首飾りを差し出した>>338から、それでなんとか許してほしい。]

石工 アロイス

はい、リトリコ先生にです。
…さすがに俺でも、実際に贈るわけでもない人に先に見せるのは…
ちょっと躊躇いますから。

…先生？

[その呆気にとられた表情>>339は、いつもの端正なものとは随分違って見えた。

…かわいい。
それが正直な感想だった。]


……はい、リトリコ先生のために。
端正で、綺麗で、気品があって、聡明で、静かに優しくみんなを照らしてくれる…
俺には届かないほどに素敵な人だと思ってます。
そんな先生に憧れて…　これを贈りたいと思いました。

石工 アロイス

…よかった。
そんな顔もするんですね。
そんなところが見られただけでも、…よかったです。

[顔を真っ赤に、視線を落として>>340。
贈ろうとする首飾りの答えは、すぐに返ってきた>>341。
そうだったらいいのにと思っていた答え。でも、実際に返ってくると予想以上に
胸が詰まる思いがした。聞けば、心臓が限界まで脈打った。
思わず身を乗り出してしまった。]


本当……ですか！？
え…本当に、俺の事……でも、なんでっ……

石工 アロイス

あ、いえっ！！
ありがとうございます。すごい…嬉しいです。
いえ、すごいってだけじゃなくて…　ちょっと、うまく言えないくらい…嬉しいです。
あ、はは……

[ここが祭りの広場の近くでなかったら叫んでしまいそうなほどの歓びが胸に溢れてくる。それを抑えて、首飾りを手に取る。
頭を垂れた先生の傍に寄って、首飾りをかけた。
先生の頭とさらさらした黒髪に指が触れて、そんな事だけで脈が速くなる。

アイオライトの三日月と星が胸元に輝いた。]

石工 アロイス

うん、イメージ通り。すごく似合います。
顔、上げてください。俺に見せてくれますか。
今の先生の顔。

[顔の近くに屈みこんだまま、語り掛ける。
頬に触れたまま、見上げたらきっと顔同士ぶつかってしまいそうなほどの近くで語り掛けた。
離れるのを忘れてしまうほどに、真近で見る先生の姿に、心奪われてしまっていたから*]

石工 アロイス

広場外れ

[かけた首飾りが巻き込んでいた髪をかき上げ>>359、ゆっくりと顔を持ち上げる先生の姿を、頬にかけた指を離すのも忘れて、至近距離でじっと眺めていた。

憧れ続けていた人の姿をこんな近くで見つめている、見つめる事ができるという事実が大きすぎて、他の事を忘れていた。

顔を上げた先生と目が合い>>360、その顔の近さと鼻をくすぐる香りに、俺の方も酔ったように動きを止めて見つめ合っていた。]

似合います、すごく。…思った通りです。
リコリト先生以外にこれをつけられる人…いないんじゃないかとできた時思いましたけど。

石工 アロイス

間違いじゃなかったみたいですね。

[首から下がった首飾りを掲げて、先生の顔の前に掲げる。
二つの輝きを見比べながら、その願い>>361を聞いた。

俺が「先生」と呼ぶのが敬愛のためだとしても、これはきっと聞かないわけにはいかないものだ。そう思ったから、ビロードのベストに縋る、俺のものよりはずっと細い指先に指を添えた。]

さん、付でもいいですか。

…リトリコ、さん。

……好きです。

石工 アロイス

俺は正直細やかな人間じゃないですけど…
でも、リトリコさんの事、心から、大事にしたいって思ってます。

でも、俺はまだ憧れるばかりでリトリコさんの事をすごく良く知ってるわけじゃない…
だから、教えてください。いろいろなこと。
リトリコさんの事、知っていること、好きな事、やりたい事…　なんでも、お互いに。

そうして……もしそうしても良いと思えたら、
俺の佳い人になってくれませんか。

[そう告げてから、もう一度一呼吸した。]

石工 アロイス

……なんだろう、色々考えてたのに全部頭から飛んじまったかもしれない。

…よかったら、俺と踊ってくれませんか。

それで、めいっぱい今日の祭りを楽しんで、それから…

……どうしましょうか。

[エスコートしないといけないのはわかっている。
わかっているのだが…その手に触れたまま、少し首をかしげて尋ねた**]