研究者 シルヴァン

『あと数年もすればくたばるガキのために
　金を使うくらいなら、俺にくれよぉっ！』

[ ずっと昔に勘当されていたらしい父の弟が、
　屋敷を譲り受けた父の元に
　金の無心にやってきたのは、
　僕がまだ１日の大半をベッドで
　熱に浮かされ夢うつつ過ごしていた幼い頃だ。]

研究者 シルヴァン

[ やっぱり僕は大人になれないまま、死んでしまうのかな…。叔父だった人がそっこーで叩き出された後も、その棘はずっと心の奥底で刺さったまま。]

研究者 シルヴァン

[ 大人になったら、なかったことにして、なんて、
　言われてしまうだろう。
　もしかしたら忘れてしまうかも、しれない。
だって僕は、君と一緒に大人になれないかもしれない。
　それでも… 自分からなかったことにすることはできなくて。 ]

研究者 シルヴァン

[ 生きたい。
　君と生きたい。

君がいてくれたから、
　僕は生きようと思った。
　君がいてくれたから、
　いつのまにか棘も消えていったんだ。

　遠い空の下でも
　いつでも君を感じることができたんだ。

　だからって放ったらかしすぎだって、
　君にも叱られてしまったけどね。

　望みはいつも胸の中にあった。
　それははやがて祈りになり、
　いつしか誓いとなって──]

研究者 シルヴァン

「……ヴァン！シルヴァン！」

[ 遠くで君の声がする。]

研究者 シルヴァン

…フローラ？

[ 君の家の揺り椅子で、うたた寝をしていたようだ。

　私が式の準備で忙しくしてるのに、
　いい気なものね、と怒られてしまったかな。
　でも、そんな時でも、どこか楽しそうなことを
　僕は知っているよ。]

研究者 シルヴァン

　…今は何をしてるんだっけ？

[ >>47僕の家までエスコートする役を
　誰に頼めばいいか悩んでいるという。
　本来なら親族の男性に頼むだけど、と、
　可愛い顔をしかめて悩んでいる彼女。

　きっと君がお願いしたら
　二つ返事で引き受けてくれる人は
　この村にいっぱいいると思うよ。

　それは君がこの村で生きてきた軌跡。でも─]

研究者 シルヴァン

　だったら、その役目、僕が引き受けるよ。
　…だって、僕は、君の大事な“お兄ちゃん”だろ？

[ やっぱりその座は誰にも渡したくはないな。
　君は僕に飛びついてくれたかな？
　王子様みたいって囁いてくれただろうか。

　僕が王子様なら、君はお姫様だね。
　ほら、僕だって君のことをお姫様抱っこできるくらいは
　元気になったんだよ。
　なんていって調子のいいことをいいながら、
　君のことを抱きかかえて見せる。]

研究者 シルヴァン

　どこへ連れていってくれるの、って？
[ このままどこまでも遠くへ、と言いたいところだけど、
　僕が連れていけるのは、隣の寝室で。]

研究者 シルヴァン

　悩みが一つ解決したから、
　少し休憩するといいんじゃないかな？

[ 頑張り屋さんなところは君の美点でもあり
　欠点でもあるからね。
ふかふかのベッドに君を寝かしつけよう。

　ご褒美をねだられたら、たくさんの口づけを君に。
　どちらのご褒美かわからなくなってしまえば、
　寝かしつけが失敗したとしても、幸せなひととき*]

研究者 シルヴァン

苺の花嫁さん

[ それでもやっぱり人前でスマートにキスをするのは
　慣れないままだったけれど、
　晴れ渡る空の下、誓いの口づけは、
　君の苺のような赤い唇へ。>>48

囃し立てられたら、顔は真っ赤になったけれど。]