ジョン

魔法の解けた町で

［翌、11月1日。正午。
　ハロウィンの魔法はすっかり解け消え、
　町の人たちはいつもと変わらない日常に
　戻っていただろうか。
　いや、祭りの後片付けに追われている人も
　いたかもしれない。

　しかし人々の様子をゆっくり観察する余裕
　など今の俺にはなかった。
　遠足が終わる時間が迫っているからだ。
　ただひたすらにオータムフィールドタウンの
　通りを一目散に駆け抜ける。］
　

ジョン

　　あっ、いた！
　　シフー！シィーーフーーー！！！


［目指したのは港。
　そこにいなければ宿や他の所を探して、
　目当てのその人を見つければ、
　大きく手を振りながら駆け寄った。］
　

ジョン

［この町を訪れた時にはなかった大きな荷物を
　背に抱え、その腕には小さな狼娘がすやすやと
　寝息をたてて眠っている。
　一息ついて呼吸を整えたら改めて向き合った。］


　　良かった、まだ出発してなくて。
　　一番にシフに紹介したくてさ。
　　チノっていうんだ。
　　疲れたみたいで寝ちゃったけど。


［頬を撫でれば、大きな耳がピクリと動いた。
　その顔にはどこか、父親らしさが滲んでいた
　かもしれない。］
　

ジョン

　　それでさ、あれから今後のことを
　　二人で話し合ったんだけど……


［そして至極真面目な顔を浮かべて、］
　

ジョン

　　――密航させてくれない？
　　この子も一緒に連れていきたくてさ。
　　パンプキンタウンに。

　　いや、ワトルも普通に説明すれば了承して
　　くれるとは思うんだけど。
　　シフの方が話は早いし、なにより帰るまでの
　　間にゆっくり話も出来るだろ？


［俺に何があったのか、シフも気になって
　るんじゃないかと思うのは俺の自惚れかな。
　もしそんなことがなくても、俺は勝手に
　話しちゃうんだけどね。
　船旅の間のひまつぶしくらいにはなるん
　じゃないかと思うんだ。］
　

ジョン

　　チノも行きたいって言ってくれたし、
　　あれから全速力で家に帰って荷物も
　　まとめてきたんだ。
　　次来れるのは来年だろうから。

　　チノの面倒を見てくれてた叔父さんたちには
　　娘ほったらかして何処行ってたんだ〜！って
　　説教1時間…いや2時間？くらいくらったけど。
　　他の家族？あ〜昔山火事で死んじゃった。

　　……だからさ、この子の元以外に
　　こっちに俺の帰る場所はないんだ。

　　それにやっぱり俺の帰る場所は
　　俺を受け入れてくれたパンプキンタウンで、
　　シフの所だと思うから。

　

ジョン

［居候が図々しく何言ってんだって話かな。
　けど、記憶を取り戻したところで、
　その気持ちは変わらなかったんだ。］


　　改めて。俺の名前はカレヴィ。
　　でもジョンでも、
　　どっちでも好きな方で呼んで。

　　それで
　　今後ともよろしくしてくれると嬉しい。


［君が難色を示すことがなければ、
　これからは親子共々お世話になるつもりで、
　手を差し出した。］
　

ジョン

いつか終わりを迎える日まで

［俺、何か間違った事いったかな。
　一瞬の沈黙>>252に首を傾げていれば、
　次いで出てきたのは肯定と、正論だ。>>253］


　　めちゃくちゃ正論説いてくるな！？
　　いや、うん、ちゃんとわかってるよ。
　　本当だよ、本当。

　　気ままな野良狼じゃなかったわけだし。
　　今までのようなその日暮らしの
　　生活は出来ないって。
　　これから頑張らないとね。


［それでも、俺は間違ったことは言ってないと
　思うんだ。］
　

ジョン

　　それ、めちゃくちゃ助かるやつ〜〜〜
　　ベッド？いや、そこは俺が用意するよ。
　　ちゃんと住むところが見つかったら
　　それ持っていけばいいし。

　　うん、ありがとう。
　　沢山甘えるかもしれないけど。
　　なんて、今更か。


［長々と立ち話をしてしまった。
　出発の汽笛が聴こえていたから、>>248
　これは出港を遅れさせているやつだろう。
　シフに苦情が行ったら申し訳ない。

　握られた手を強く握り返して、>>254
　引っ張られるがまま君へと乗り込んだ。］
　

ジョン

［ふと思い立ち、スマホで検索をかける。
　遡ればあの町の記事を見つけた。
　俺を殺そうとした日の数日後に、
　無事犯人が捕まったらしい。

　町の人がその時何を思ったのか。
　知ることはないだろうし、
　別に聞きたくもないと思う。

　ようこそと迎え入れてくれる君や、>>-220
　友人たちがまた俺にも出来たのだから。］**