菓子屋 コウセツ

　─ 祭りの日に ─
[ 昼間の明るさに、緩やかに陰りが見えて。
　オレンジ色の光の中に、ぽつぽつと煌めく星が見え始めた頃。
　
　私とラヴにとって一生に一度の特別な日が、
　穏やかに終りを迎えようとしていた。
　
　君を失うことを恐れたあの日から二年の月日が経って。
　
　あの日抱きとめた君と今、
　こうして恋人として寄り添うことが出来ている。 ]

菓子屋 コウセツ

[ 意地っ張りで、素直じゃなくて、
　でも誰よりも私を求め、私の愛を受け止めてくれる、
　拗ねた顔も笑った顔もとびきり可愛い、
　私だけのお姫様。 ]
　
　
　──なぁラヴ。
　来年はまた、祭りで店を出そうと思うんだ。
　君さえよかったら…二人で。
　
[ 街灯の花飾りがら透けた光が、
　花びら越しに淡い木漏れ日のような光に変わる。
　
　祝祭の帰り道、君と交わす言葉は
　君と迎える未来の話。 ]

菓子屋 コウセツ

[ 今日という特別な祝祭を終えても、
　また祝祭はやってくる。
　
　季節が巡り、恋人でなかった私達が
　恋人として──やがて夫婦として、参加する時がくるだろう。
　何度月日が巡っても、
　私の隣に微笑む君が居てくれて。
　喜びも悲しみも、二人で分け合って生きていく。 ]
　
　
　──……
　
[ 繋いだ手を、ゆらゆらと揺らしながら。
　やがて梟の声が聞こえるほどに夜が更けるまで、
　私は君の手を離さずに
　今日という日を惜しんで会話を弾ませていた。
　
　君への愛を、未来を。尽きぬ話を──ずっと。* ]

菓子屋 コウセツ

─ はにかみ屋の乙女に捧ぐ、
　　　　ミモザのもう一つの花言葉 ─

　　　
[ そうして私達が結ばれた祝祭の日から、いくつかの季節は巡り。
　
　この村に住まう錬金術師の少女と青年の庭先に、
　杏とミモザが花咲くようになった頃。
　
　温かな風吹き抜ける空の下、
　またこの村に一組の夫婦が生まれたことだろう。
　
　少しドジで、妻を溺愛している菓子屋の夫と
　たまに意地を張るけれど、夫のことが大好きな事がわかる
　お似合いな鴛鴦夫婦。
　
　その後のアッシャー村の祝祭では、
　二人で営む出店のとある菓子が、
　その菓子に込められた言葉と共に一つの目玉になったとか。]

菓子屋 コウセツ

　


*『真実の愛として
　もう一度この花を君に捧ぐよ。>>0:410』*