ルイス・キャロル（村建て）

タラッシリアでは多くの神を祀った教団がいくつか存在しますが、信徒が多く、街のシンボルとなっている神は交易と商売、そして豊穣を司る女神『ターレディアン』です。

タラッシリアが自由都市として制定されたのは100年ほど前の6月初旬で、毎年6月初めの一週間は"ターレディアンの饗宴（狂宴）"という祝祭が行われます。
この祝祭は深緑の季節と女神に感謝をし、都市の発展を祈り、ターレディアンの加護を得る為の恒例行事です。

これは昼夜構わず行われる無礼講の祝宴で、一年で最も自由な一週間と言われています。
町民だけでなく、他地方からも人が多く訪れ、男女の出会いの場としても機能してます。

しかし、訪れる者は人間ばかりではなく、人ならざるものも紛れ込んでいるという噂がまことしやかに囁かれており。

『女神ターレディアンを見かけた。』
『神隠しにあったように姿を消した者が居る。』
『魔物に誘惑をされた。』

等々という話もあります。
「酔っ払って夢を見たのだろう」、「旅人と共に駆け落ちをしたのだろう」などと人々は真偽を定かにはせず、噂として人の口の端に上る程度で大事にはなっていません。
それだけ、この祝祭の時期は一年で最も、人の出入りが激しいのです。

今年もまた、タラリス市長の挨拶と共に"ターレディアンの饗宴（狂宴）"が始まるのだった──。

(#1) 2023/06/06(Tue) 00:18:13