氷室詩音

　
[だってどこかに一緒に出かけるのに適当な相手って、やっぱり夢助になるわけで。
休憩だってとりたかったわ。
ホテルのスイートタイムって書いてあったもの。休憩しながらアフターヌーンティーが頂けるなんて素敵じゃない？
なのに断られて、別にお金の事なんて気にしないのに……。
残念なんて思いたくないけど、残念なのは本音だった。
誘われたり奢られたりは嫌なのかしら？
確かに家格が少しうちの方が上とは言え、私は嫁入りする立場。
氷室の家自体は姉が継いでいるから大丈夫。とは言え、まだ子供ができてないから、万が一の時には──なんて話もある。私が二人産んで、一人は氷室の家にってね。
姉たちも仲が良いから大丈夫だとは思うし、逆に言えば私が子を成せなかった場合は──その場合、市川家は誰が継ぐのかしらね？
　
分かってる。私が悪い。素直になれない。
でも、素直になりたくて誘惑してみたって反応がアレじゃあ、虚しくもなってくる。
　
もし今回何もなかったなら私は──。]