石工 アロイス

回想・フローラ

（花なんて、売れるのか？）

[正直に言えば、それが第一の感想だった。
孤児院の出の、自分よりまだ年下の少女がこの村で生きていく術としては、なんだかとてもふわふわして頼りなく思えた。

この村は、ただでさえ山奥にあるのに、そんなに花が売れるもんだろうか。その上、その花は一から育てるのだという。
それも、整備された花畑でもない、荒れた岩がごろごろしている土地を耕して>>70。
当然、そんなものはあまりに無謀で、岩をコツコツ割るよりよっぽどきつい仕事に思えた。

見かねて仕事が終わってからのちょっとのつもりで手伝いはしたものの、すぐに音を上げるんだろうと思ったが、思いのほか彼女は意志が強かったらしく、結局最後まで手伝ってしまった。

本当は面倒くさいという顔もした…彼女に見えるようにはしなかったというだけだ。ただ、乗り掛かった舟だから、結局石を組んで花壇を作るところまでは一緒にやった。売り物の石は使えないから、それも難儀な作業ではあったのだが…]

花屋 フローラ

［私の口から零れた小さな呟き>>69に。

『フローラなら、できるよ。』>>79

と。大喜びで答えてくれた。
私より私の事信じてくれてるみたいで。
いっぱい背中を押してもらえて。
その時、私の将来の夢は、お花屋さんになった。

難しい事は分かってた。>>94
それでも幼い頃に教えて貰った図鑑で知った。
異国の花の種を取り寄せて貰ったりして。>>71
今も私は花屋を続けている。

それはあの日の。
確信めいた強い言葉が。何時も私の背中を支えてくれていたからだった。］

花屋 フローラ

回想：アロイスと『花屋フローラ』

［アロイスが思ったような感想は。>>94
きっと村の皆も思ったような感想だっただろう。
もっと。他の仕事はたくさんあった。
それこそ薬師に弟子入りしても良かった。
お針子や、食堂や、住み込みで働ける場所もたくさん。

それでも私はお花屋さんを選んで。
一から花を育てる事を選んだ。

まだ年若さの残る細い腕で。
岩を掘り起こして土を耕す姿を見て。
それでも…………
手を貸してくれたのは、アロイスだけだった。］