氷室詩音

ー男嫌いの、その理由ー

　
[私が中学に入った頃、すでにその体つきは女子にしては背が高く、胸もどんどん大きくなってしまってきていた。
そんな頃でも初めのうちは夢助ともいつも通り関わっていたはずよ。
別に男に対しても好きとか嫌いとかなかったもの。
でもね、私の事を性欲の対象として見る男が現れ始めたのよね。
通りすがりの男が胸を見てきたり、こっそり噂していたり。教師だったり別の学校の生徒だったり、そう言えば中学時代の社会科見学の時にも嫌な思いをしたのよ。
それらはたいしたことでは無いのかもしれないわ。それでも怖かったし気持ち悪かったし、やめて欲しいと心の底から思ったものよ。
そういう男たちは私の弱みを握ろうとして、その隙を見つけられると──若しくは見つけたと思われると──それを理由に私を好きなようにしようと振る舞ってくる。
勿論、そんなものに屈したりなんかしないわ。
正当な方法で制御したし、時には虚勢を張って大丈夫だとして立ち振る舞ったの。
　
そして、それらの事を直接夢助に言いはしなかった。
夢助はそんな奴らとは違うという思いと、でも同じ男なんだってモヤモヤする気持ちが交錯していたから。]