五十嵐螢

［変身後の僕の役割はバフの維持と更新、エネルギーの供給とガード。
そして、演出監督である。

　『声』という本来目に見えない音波攻撃はスピーカーで増強され、拡声された歌『声』には中空から舞い落ちてくる青白い雪と同じようにエネルギーが波紋として視覚効果を賦与している。
楽しそうに歌えば黄色のオーラを帯びた衝撃波が魔物目掛けて飛んでいき、どんよりしていると青いオーラなど詩ちゃんの気分に応じて色のついた音のビッグウェーブが次々に魔物の身を激震させて粉々に退魔していくのだ］

　『え、えと、四時方向、九時方向。
　　あと上からもくる――』

［衣服になっているものだから視界は全方位あり、詩ちゃんが楽しそうに歌って踊るに合わせてひらひら揺れる衣装から魔物を見つけるとスピーカーをそちらに向けていく。
撃ち漏らしがあると一気に接近されるのが両後衛の辛いところだ。
『声』なのである程度全方位攻撃だが仲魔を盾に魔物が突っ込んでくると近接距離まで来られることがある。

　一匹が倒れても次が、その次が倒れてもその次が僕らを狙ってくるという魔物の癖に俺の屍を越えていけという熱い展開をしてくると、僕は符で盾を作り勢いを止めていき最終的には衣服として受けるダメージを一手に受ける］