衣代和かほ

――深夜――

[目覚めたとき、すぐには状況が理解できなかった。
息苦しさに被っていた布団をはねのけると、右手からコロンと転がり落ちる何かの音。
片手で頭を抑えながら床のそれを拾うと指輪だった。

そこでようやく、色んなことを思い出す。]

　……どれくらい寝てたんだろ。

[カーテンも雨戸も開けっぱなしだった窓の外、空は真っ暗なように見えるから、深夜近いのだろうか。
ベッドの上に座るところまでは身体を起こせたが、ゆらゆらするばかりで何もする気にならない。
着替えて、靴を履いて、と頭の中ではシミュレーションできるのに、勝手に鳴るのはお腹ばかりだった。]

　困った、おなかすいた。

[思えばバイトの後にドーナツを食べたものの、その前は軽い朝昼兼用のサンドイッチを食べたきりだ。
飯が必要になったら、と言われたけれど、毎日3食運ぶつもりなのか、――さすがに大変すぎやしないだろうか。
どれくらい離れたところに住居があるのか分からないが、そういう意味で一緒に、と言っていたのかもしれない。]