【叫】 五十嵐螢

［ぬりぬりしてるけど背中は手が届かないな。
寮だと雑に壁に薬を塗った紙を張ってクマみたいに背中擦り付けてるけど流石にお宿の壁でそんなことはできない。
前は全部塗り終わり少し途方にくれていると扉が空いて廊下の寒気が入り込んできて身震いしてしまう］

　うぅっ、さむっ……え？

［今、誰かいた？
聞きなれた声を聞いた気がしたが振り返れば扉は閉まった状態だった。
まさか、古いお宿だから妖精か幽霊でもいるのだろうか。
魔物とは違う生命体が使役されている可能性を考え手を荷物の方へと伸ばしていくとまた扉が開いて――］

　えっ、詩ちゃん？

［上半身全裸姿でところどころに緑紫なお薬が塗られているぼでーを真正面から晒してしまう。
僕が手を伸ばした方は二人の荷物が置かれている方だ。
そこにと指さされれば僕の手が詩ちゃんのバッグに向かっているようにも見えよう。

　睨まれたってここは僕の部屋であることも確定だ。
何故なら僕の荷物も此処にある］