【鳴】 市川夢助

　部屋に備え付けの貸切りか…じゃあ俺達二人以外には誰も入ってこないんだな。ふうん…

[俺達の部屋は低めの階、廊下を渡った先の離れのような区画にある。遠くまでの見晴らしがいいというよりは、目の前に広がる川や庭園の眺めを楽しむような部屋になっているらしい。
備え付けなら向かう先も早い。手を繋いだまま時々詩音の様子をちらちら伺いつつ、露天風呂の脱衣場に辿り着く。
どうやら、それなりに広々として、浴槽からは山の木々も目前に見えそうだ。

こちらはさっそく服に手をかけて脱ぎ落し、半裸になってから手ぬぐいを取る。下半身をしっかり隠すには少々心もとないが…幸い今はそこそこ落ち着いているし、体を洗い終えてしまえばそれまでの話。

そこまで気にする事もなくガラッと扉を開けて中に入ろうとして、後ろにいるだろう詩音から声をかけられた]