1日目 / 25 【R18】異世界の門と恋の彼方

25 【R18】異世界の門と恋の彼方

衣代和かほ

――10日間のこと――

[２日目の夜、おやすみをちゃんと念話で伝えた。
部屋には変わらずひとりだった。
布団の中で息を潜め、深夜になると元の世界の服に着替えて。
指輪を棚の引き出しの奥に仕舞い込む。

逃げ出そうと思っていた。

元より生まれ育った世界に帰ろうとは考えていない。
都合よく跡形もなく消えられたならそれでいい。

母は悲しむだろう。
でも1年もすれば立ち直り、3年後には薄れてくれる。
ならばそれでいい。彼女はきっと強いから。

魔物が存在し、路地裏には闇が潜むらしいこの世界なら、元の世界よりよほど自然にいなくなることができるはず。
この世界で生き抜く思考もまた、存在していなかった。

異邦人の勝手な行動なのだから、ピギーはいない時なのだから、あまり彼が責められませんように。]