荼毘葬送 オクリビ

　オクリビ。
　「ズィーの国」――「穴掘り帝国」のオクリビ。
　少し前までは「フアナ」の名前で、
　リリオ・カサ・ブランカに所属していました。


[幾らか低めた合成音で、一つ一つの音をゆっくりと紡いで名乗る。
　「リベリオンマウス」のメンバーが葬儀社を訪れた際は常に、フアナは表に出てこなかった。だからもし「カサブランカのフアナ」の存在を知ることがあったなら、他のリリオ職員や組織員など、彼女を知る他者からの伝聞のみからとなるだろう。]


　……信じては頂けないかもしれませんが。
　今の私は、貴方や、貴方の組織を潰すために、
　ここに来た訳ではありません。
　

“正直者” オーネスト

工場近く

[アイドルのオクリビちゃんです♡なんて名乗られてたら、より一層の怪訝な顔をしていたかもしれないが、そうはならず。鳥と女の顔を交互に見つつ、彼女の名乗りを待つ。そう、シンギュラリティの文字さえ出ようものなら感情的になっていたかもしれないが、彼女から出た言葉は、意外なものだった>>258]

　リリオ・カサ・ブランカ？

[穴掘り帝国とやらはまったくもってご存じないが、リリオ・カサ・ブランカなら流石に知っている。あらゆる組織に対して中立を貫く葬儀社だ。葬儀屋サンとはまた意が異なる。

リリオ・カサ・ブランカ？と繰り返す俺の顔は、少し驚いた顔をして、続く言葉を聞いただろう。

疑わしくないと言えばウソになる。寧ろ先ほどまで完全に少年アンドロイドに騙されていた俺だ、警戒心が強くなるのも当然のことで。鳥を連れているなら、尚更だ。

彼女が本当にリリオ・カサ・ブランカの者であるならば、一時でも身体を休めたい俺が、交戦する道理はない。だが、本当にシンギュラリティとは関係が無いのだろうか？
そしてそれよりも、あれだ。『穴掘り帝国』とは一体なんだ??? そんな国や組織が一体在っただろうか。]