アデルファ

It’s　an apple

　　先生の好物、幾つか知ってるけど
　　こっち（人間界）の好物は初めて聞きました。
　
　　去年は俺、遠足に参加してねーから。
　　こういう話をする機会も…

［なかったような、あったような…？

　樽の上で頬杖をついた。>>10
　舌鼓を打つ先生の横顔の
　眼鏡の隙間を覗いて目尻の皺を探している。
　先生は笑う時だけ笑い皺ができるんだっけ。違った？

　自分の傍に置かれているのは
　小腹が空いた際にちょうど良い大きさの
　小さめアップルパイと林檎ジュース。
　少々甘々な組み合わせではあった。］

ダアト

　　そうですね、パンプキンタウンでは食べられない
　　食べものも、こっちにはありますからね。　　

［文化も伝統も違うのだから、それは当然だ。
　だからこうして、人間界に足を運んだ際には
　期間限定の味を堪能することにしている。
　懐かしい風景の中に、新たな縁をもつ青年が
　傍に居る。］　　


　　今年は、こうして一緒に来られて嬉しいですよ。

［今日は、酒がよく進む。
　すっと目を細めると、目尻にだけ皺が寄る。
　授業の後に、お茶を飲みながら寛いでいる時。
　アデルファの、自分とは違う視点からの発言が、
　小気味良く感じられた時。
　そんな時に、弟子の前で見せてきた顔>>37］

ダアト

［アデルファの前にあるのは、控えめサイズの
　アップルパイと林檎ジュース。>>37
　けれど彼の視線の先は、それよりも。
　隣の屋台で客が買うクラフトビールと、
　こちらの手元のハードサイダーに向いている>>39］

　　
　　ああ。飲みます？

　　貴方、もう飲める歳……といって
　　いいんでしょうか。
　　幾つになるんでしたっけ？


［つい見た目に引きずられがちだが、
　彼がパンプキンタウンに来てから
　何年も経っている。
　他種族の成長と老化のスピードは測り難い。
　酒の話題を振った時に、若干返事が
　ぎこちなかったのは、時効ということにしましょう。］