葬儀屋 ヌル

街外れの屋敷で

［その日は部屋で本を読んでいた。表通りで買ってきた、アイドルの本。
地味な女の子がスターに上りつめるまでのお話。
オクリビのいっていた『アイドル』がなんなのかよくわからなかったので、店員のお薦めだというものを買ってきたのだ。

夢中になって読んでいると、ボールで遊んでいたグリムがドアに向かっていく。］

どうしたの。

［着いてこいというように振り返り、そのまま部屋を出ていく。
本に栞を挟んで、後をついていく。お腹がすいたのかな。
しかし台所には行かず、玄関へと歩いていく。］

赤い悪魔 フィジシャン

[扉の向こうに駆け寄る家主の足音を聞けば、一歩下がり扉を開けやすいポジションに移動する。>>373
どうやら無駄足とならずに済んだようだ。抱いた土産を抱え直して、ようやっと見れた顔を見下ろすのだ。]

　随分熱烈な歓迎だね
　嬉しいよ

[自分の中にあるドロリとした暗色はなりを潜め、何時もの優しい顔でそう微笑む。

大人と数えても支障無い年齢にも拘らず、何処か幼い彼女。そんなアンバランスさに惹かれたのか、出会った時の気まぐれか、彼女の存在は他者とは別の箱へと大切にしまい込んである。
まるで花のようにほころぶ笑顔が酷く眩しく感じて、思わず目を細めた。>>374

この子の前では、わたしはいつか焼け落ちて灰となってしまいそうだから。
だから、少し恐ろしい。

――何故？]

荼毘葬送 オクリビ

[なお「本当にこの程度」>>472とこの女は言っているが、この返礼品の買い出しによって、ヌルの手伝いのお礼で貰ったパーツの売却代がそれなりに飛んでいったのは、今のところ秘密である。
　一方でこの手伝いを通じ、ヌルも『アイドル』を扱った本を買って読んでいた>>373ことは、まだこの時のオクリビは知らない話。]


　私がこれからどう生きていくかは、
　もう少しだけ、思考を整理してから
　きちんと自分で選択しますけれど――…