研究者 シルヴァン

　ああ、久しぶりだ。
　うん、ありがとう。

[ 元気そうで何より、の言葉に、
笑みを浮かべて頷いたが、続く言葉に首を傾げる。

　どうして、今、王都の話？

　確かに、王都は人が多いから、
　比例して、綺麗な人とやらも多いだろう。]

　そうだな、王都は各地から人の集まるところだから、
　いろんな人がいたね。
[それほど親交を深めた人がいるわけではないけれど。]

　…ああ、でも、僕のことをお兄ちゃんと、
　呼んでくれる子はいなかったよ。

研究者 シルヴァン

[ それは目の前の君だけ──

　一瞬、あの頃の笑顔を浮かんで消えた。

　けれど、今の君は、真っ赤な顔で、怒っている、ようで。]

研究者 シルヴァン

　あっ、待って。

[ 花飾りを配って歩いている、と、踵を返して
　立ち去ろうとする彼女を止めようと、腕を伸ばした。]

　…忙しそうなのに、すまない。

[ でも、このまま別れてしまうのは、なんか嫌で。]

研究者 シルヴァン

今、忙しいなら…、
明日、明日少し時間をもらえないか？
久しぶりに一緒に祭りを楽しみたいんだ。
…だめかな？

[ 祭りを楽しんで、というなら、一緒に。
無理にとは言わない、って付け足しながらも、
引き止めた腕の力は、少し強かった、だろう* ]

花屋 フローラ

『”ジジ”ともう一人の幼馴染』

［そんな思い出があったから。
私はシュクルが飴に『勇気が出る飴』と名付けた時。
殊の外喜んだ。>>110

もちろん。シルヴァンを見送ってくれた私に勇気をくれたのは嘘じゃないけれど。
シュクルがお祭りの前に配る飴が。
『恋が叶う飴』とか。そういうのではなくて……
『勇気が出る飴』と言うのが。とっても。
とっても嬉しかったの。

それは”ジジ”が私にくれた大切な思い出にも似て。
毎年届ける『赤いガーベラ』にも似ていた。
快晴の空。きっと明日のお祭りもお天気。
今年から１８歳の私たち。

シュクルに花飾りをプレゼント出来たら良いなって。
勝手に一人で思ってた。**］

花屋 フローラ

再会

［『僕のことをお兄ちゃんと、呼んでくれる子はいなかったよ。』>>244


そりゃぁそうでしょうよ！！


でも違う！そうじゃない！！


あんまり腹が立って。惨めで。
私は真っ赤な顔でそれ以上何も言わずくるりと振り返ってその場を立ち去ろうとした。］

花屋 フローラ

［今は怒りで誤魔化してるけど。

気を抜いたら泣いちゃいそう。

どんな時だって。笑顔を絶やさず。
泣かないようにしてきたのに。
本当に。どんな時だって……。

心の中に雨が降りそうだったから。
本当にその場を逃げ出そうとしたら。
腕が伸びてきて。手を掴まれた。>>246］

花屋 フローラ

［思わず振り返って。ぽかんとシルヴァンを見上げてしまった。
手を掴む力は強くて。>>247
ああ。男の人なんだなって思った。
シルヴァンが私をお祭りに誘ってくれて。
楽しかった思い出が。一気に蘇って来た。>>108］

花屋 フローラ

［でも私は素直に頷けなくて。
少しだけ俯いてしまった。
王都にはいろんな人が居るんですって。
お兄ちゃんと呼んでくれる子は居なかったんですって。
だから私は俯いたまま。］


…………私。今年もう１８歳になったのよ。


［ポツリとそう呟いた。
シルヴァンのお誘いは。
何の意味も無いかもしれないから。
なんだか胸がしくしく痛んで。
顔を上げられなかった。**］

菓子屋 コウセツ

[ 互いの胸の内を隠したままだけのやりとりは、
　着地もやはり曖昧だ。>>233
　
　本当なら、
　誤魔化さずに全てを口にできたらよかったかもしれない。
　
　けれど、それは今は出来ればしたくなかった。
　彼女が誰かに誘われている事もなく、
　今誰を誘う予定があるわけでもないのなら
　
　彼女を見初める男がいるかいないかの答え合わせは
　今ではなく明日がいい。 ]
　
　（曖昧な言葉でその場を凌ごうだなんて、
　　なんだか悪い男になった気分だな…。）
　
[ 彼女の怒りや詰めよりは、
　向けられた所で不思議と嫌な気分にはならない。
　花を手渡せば緩むその表情は、
　やはり笑顔のほうが似合うと思った。 ]

菓子屋 コウセツ

　
　まぁそうか。
　もしも何かがあったとしても、
　相手が君のお眼鏡に叶わなければ意味もないしな。
　
[ 春を現すミモザの花。
　
　明日彼女を彩る花はどんなものだろう、と
　楽しげに目を細めた。>>234 ]

菓子屋 コウセツ

[ そうして、店に戻るらしい彼女に私は笑って頷く。 ]
　
　ああ、私もまだ広場の飾り付けが残ってるから
　このまま仕事に取り掛かるとするよ。
　
　君も、無理はしないようにな。
　
[ そう告げて、彼女が離れるならばその背を見送ろうか。>>235
　
　今日は祭りの前日。
　まだやることは山程あるし、
　彼女もまた忙しいことだろう。
　
　離れていく背に手を振って、
　私はまた別の街灯に向かって脚立を背負おった。* ]

飴職人 シュクル

回想 ラヴ

[>>206錬金術と魔法は近しくて、でも少し違う。
イメージだけの魔法よりも、錬金術の方が私のやりたかったことは出来たかもしれない。
魔法だって万能じゃないから何でも役に立つわけじゃない。

でもイメージだけで無限に広がる魔法なら、その方が色んな人のためになる。
錬金術みたいに理論があったりするわけじゃないから、やっぱり願掛けのおまじないにしかならないけど。

ラヴは私の意図を読み取ってくれたみたいだ。]

菓子屋 コウセツ

─ 回想：リトリコ ─
[ かつて幼い私達が学んだ学校に、
　三年前に赴任してきた女性が居る。
　リトリコという名の彼女は、私よりも年下なのに
　ずっと落ち着いていて子供にも好かれていて。
　時折私の店にも顔を出しては、
　焼餅を幾つか買って行ってくれていた。>>90
　
　こんな小さな村に都会から引っ越してくるだなんて
　もしかしたら退屈ではなかろうかと、
　最初のうちは村の良い所を紹介しようと
　皆の店を回る小さなツアーを組んだりした事もあったか。]
　
　都会よりも物は少ないかも知れないが…
　この村を気に入ってくれたら嬉しいよ。
　
[ そう告げた私の心配をよそに、
　店に訪れる彼女の表情の穏やかさは、
　この村での生活に馴染んだことを示してくれていて。
　そんな様子に、私はひっそり胸を撫で下ろしていたんだ。* ]

飴職人 シュクル

辛い時も、嬉しい時も、寂しくないように。

誰かが傍に居た方がいいけど。
いつも誰かが傍に居てくれるわけじゃないから。
少しでも寂しくならないようにって。

そうなってくれたら嬉しい。

飴職人 シュクル

[魔法の飴を作るきっかけは、ラヴにはかなり前から明かしていたっけ。
傍から見たら荒唐無稽な話だったかもしれない。

でも、村の中で、寂しいって涙を流す人が居なくなったらどれだけいいんだろうって。

子供ながらの小さな夢が形になったのが魔法の飴。

それも全部話したからかな。
あの時皆が探してくれて、ラヴが涙目で怒った時には酷いくらい後悔して。

もう二度とやったらいけないって。胸に刻み込んだんだ。]**

錬金術師 ラヴェーナ

―　回想・アロイス　―

ううん、ちょっと驚いただけー。
アロイスももう22だもんね。そんな話出て当然か。

なるはやだっけ？
今から鎖作るけど、だいたい三時間くらいかな。
後で取りに来てもいいし、
暇なら待っててもいいよ。お茶くらい出すし。

[意外かと尋ねるアロイスに首を横に振る。
なんていうか子供のころから見知ってる人から
"そういう"話を出されると不思議な気持ちになるってだけだ。

アロイスはアイオライトを気に入ったらしいので
石類が入っている棚の中からそれをひとつ取り出して。

鎖の方は錬金術で作る。
材料になる粉末と魔法薬を鍋の中に入れて、
大鍋でぐつぐつ煮詰めるんだ。
代金を受け取り、早速準備に取り掛かりながら、アロイスと会話をする。]