菓子屋 コウセツ

[ 村の中心から少し外れた場所にある、
　小さな菓子屋『暁亭（あかつきてい）』。
　どこか異国情緒な風情の内装に、
　並ぶのはやはりこの村にはあまり馴染みのない菓子たち。
　
　薬草の効いた飴に、餡が詰まった焼餅。
　華やかな見た目とは言えないが
　どこか素朴な東の味がするそれらは、
　全て私の故郷らしき国の菓子達だった。
　
　村の人々に受けると思って始めた商売ではない。
　子どもたちも飛びつかないかもしれない、
　そんな地味な商品たち。
　
　店の床材は村の自慢の石工>>14に。
　店の飾りとして、飴職人に飴細工を頼んだりしながら>>10
　作り上げたその店は、
　売上の為でもなく、どこかの誰のためでもなく
　かつての幼い自分の夢を叶える為だけの
　小さな夢の店だった。 ]

菓子屋 コウセツ

[ 生まれはこの村よりずっと遠い東の国。
　しかし赤子の頃にこの村に移り住んでからは、
　ずっとこの村で育ち生きてきた。
　通っていた学校も村の学校だった為、
　歳が近い子どもたちとは共に学んで育ってきた事だろう。
　
　そんな私とは違い、
　生まれも育ちも異国である家族から語られるのは、
　未だ見たことのない遠い国の伝統や景色の話。
　アッシャー村では聞いたこともないような、
　不思議な形の細工や着物のこと。
　
　アッシャー村のことは大好きだ。
　豊かな自然や人々も愛しい、自慢の村だ。
　けれどどうにも家族が話す故郷の話に惹かれてしまったのは、
　この体に流れる血のせいなのだろうか。 ]

菓子屋 コウセツ

[ そして私は18になった頃、
　未だ訪れたことのない故郷へと旅立った。
　およそ一年の期限付き。
　思う存分生まれの地を見て回った後、
　特に自国の料理や菓子に惚れ込んだ私は
　アッシャーに帰ってくるなり
　ひたすら家に籠もって菓子作りの修行にあけくれた。
　
　この村とは違うずっと遠い国の
　かつて私が生まれた見知らぬ土地の美味しい菓子を
　この村の人にも味わって、好きになって貰いたかったから。
　
　暫くは資金も無かった為、
　村と街を往復しながら出店で菓子を売る日々を続けて。
　
　そうして暁亭を村に構えることができたのは、
　およそ半年前──……つい最近のことである。 ]

菓子屋 コウセツ

─ 現在：中央広場の片隅 ─
[ そんなこんなでおよそ１年の不在期間があったとはいえ、
　人生の殆どをこの村で過ごしてきた私が
　この祝祭に参加するのはもう８度目の事だ。
　
　意中の相手に贈り物をする習わしは、
　当然知ってはいるものの。
　知っていながら何もせず、もう８年。
　
　今年こそは、と思いながらも
　今もこうして黙々と広場の飾りを作ってしまっている。]
　
　……よし、できた。
　
[ 作っているのは、家々や街頭を飾る花のモニュメント。
　日が暮れれば花の間から光が溢れ、
　美しく村を彩ってくれる事だろう。
　
　一つの飾りを作り終えると、
　広場にある街灯に飾りを下げる為に木製の脚立に登った。 ]

菓子屋 コウセツ

　
　（今年は、もう少し祭りに参加しよう…。）
　
[ 毎年何もできなかったのは、
　祭りだからと参加者に屋台で菓子を振る舞ったり
　祭りの仕事ばかりを好んでやっていた事も原因だった。
　
　だから、いい加減今年こそは…と
　周りにも今年は屋台を出さないと告げてある。
　
　せっかくの若い男女が主役の祭りだというのに、
　今参加しなくては一生独り身のままの気もしていて。
　
　……それに。]
　
　
　（気になる女性──か。）
　
[ 脚立の上、綺麗な花の飾りを括りつけると
　その場で暫し青空を仰ぎ見た。** ]

飴職人 シュクル

回想 コウセツ

[お菓子好きに悪い人はいない。
>>27他のお店とは趣を異にする異色のお菓子屋『暁亭』の飾りを作ったのは何を隠そう、私だ。

ちゃんと溶けないように作ったからベタベタする心配もないから安心。
異文化を受け入れる最初の段階としてお菓子は取り入れやすくていいと思いコウセツのお願いを引き受けることにした。

それが自分のためだったとしても、それが夢で、叶えたいならいくらでも協力はしてあげたくて。
それにあの焼餅やお菓子の数々、食べてみたいもん。
ちなみに薬草の効いた飴はあれは私の中ではお菓子じゃなくてお薬的な扱いだ。

『暁亭』が完成した日にはお手伝いしたお小遣いを求めるようにお菓子を食べさせろと、じーーーっと目で圧をかけたっけ。]**

飴職人 シュクル

現在

[魔法にも色々な形があって、私よりすごい魔法が使える人と聞いて一番に思い浮かぶのは錬金術が使えるラヴ。

>>5ラヴのお父さんのお店には小さい頃から私も足を運んだし、錬金術なんて私が使えるちっぽけな魔法と比べたらキラキラとしたものだもの。

好奇心の塊な私はラヴ親子の錬金術にいつも興味津々。
すごいすごいと、よくラヴの後ろをついていったのもつい昨日のことのように思える。
ラヴのお父さんが亡くなったと聞かされた時にはとてもショックだったことも未だに忘れられない。]

飴職人 シュクル

[そうそう。すごい魔法が使える人。
賑やかな村の陰にもう一人いたっけ。>>11
本当はどうなのか、未だに、に知らないけど。]

飴職人 シュクル

[村はアッシャー祭の準備でずっと賑やかだ。
私も装飾の方を手伝っていたけれど、少し落ち着いてきたみたいだったのでその場を一旦離れると呪術師ジジが生前に居を構えていた場所へ顔を出しに向かった。

なんで熊の毛皮を被ってるのとか、呪術師が実際どんなことをするのか。
私にはライトから話してもらう以外に知る術はないけど。
>>11先代のジジが村の為に苦心していたと噂程度には聞いていたから。]

── ── ── ──。

[>>12おどろおどろしいなにかの骨があったりと、まるでホラーハウスのような場所。
蹲るライトはなんだかとても疲れてるようにも見えて。
しばらくじーーっと見つめた後。]

大丈夫？

[ライトの目の前で屈むと心配をするように声をかけた。]*

花屋 フローラ

『大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになってあげる』

　

花屋 フローラ

［小さな子どもは。周りの目なんて何も気にせず。
笑いながらお兄ちゃんにそう告げた。*］
　

花屋 フローラ

[当時。微笑ましい目で見詰めていた村の人たち。
この季節になると揶揄われるの。少し恥ずかしい。］


も〜〜〜。それは小さい頃の話しでしょ？！
私だって今年で１８歳なんですよ。


［だからだよ。って揶揄ってくる村の人。
お兄ちゃんにまで被害が及んで無いと良い。］


私は村をお花で飾りつけるのに忙しいんです〜。
綺麗な花冠を作りたかったら。
是非。『花屋　フローラ』にお越しください。


［私はそういうとスカートを翻して。
村を飾り付けるための花籠をもって。
弾むように歩み去った。**］

呪術師 ライト

［徹夜明けの身に快晴の陽光は身体が溶けていく感じさえする。
熊の毛皮を被って直射日光に当たっていないのにこのまま地面に寝ころんで眠りたくなる。
きっと土と草が陽光を浴びた匂いがして気持ちいいだろう、そうに違いない。

はふう、と欠伸をして倒れようとしたその時だった。
>>35陽光が遮られて影が落ちてきた。
雲だろうかと勘違いすることはない。
雲一つない青空が広がっているのは先程確認しているし何よりもこの陰は動かない。
それにあまり大きくもない影でずっと見つめて来る視線を感じる］


……平気、うん、ちょっと徹夜しただけ。


［"しばらく"の沈黙の後の短い言葉に片手をあげて答える。

顔をあげなくても誰かは分かっている。
アッシャー村で生まれ育った中で齢が近しい子、所謂幼馴染が三人おり全員女の子でジジからは三人娘＋ライトと付属の弟のように言われていた。
実際、女の子の方が成長が早いので周囲からも弟みたいに見えていたかもしれないが声をかけてきたのはその一人］

呪術師 ライト

あの、シュルク……そこで屈まれるとさ。
頭をあげられないんだけどな。


［心配して声をかけてくれていることがわかるのだが、シュルクが屈むと視線を集めては失礼なところに自然と視線が向いてしまうことになる。
直立の状態でも集中して顔に視線を集めていることが危ういのに屈むと余計に難しくなる。

ぷるぷると震えながら普通に立ってくれることを願った**］

呪術師 ライト

回想　シュルクと昔のこと

［呪術師の知識を教えられ始めた時期は詳しく覚えてはいない。
呪術師"ジジ"という名前の中身は婆様だったが物心ついた頃から周囲の全ては呪いに満ちていた。

例えば、眠る前に聞かせてくれる星の物語。
例えば、森で迷った時に正しく方角を知る方法。

生活の全てが呪いに密着しておりそれら全てが呪術だった］


『あの星とな！　あの星とな！　あの星をな！
　結んでできるのが冠座でな！
　お姫様のティアラなんだって"ジジ"が言ってた！』


［夜空を一緒に見上げる機会があった時に嬉しそうにしながら覚えたての知識を披露したりしていたけれど、>>34魔法らしい魔法はあまり見せたことはなかったかもしれない。
それが子どもには眉に唾をつけた話みたいに感じられることも多いだろうけれど、村の長老たちは皆信じてくれている］

呪術師 ライト

［これまで普通に見せた呪いで言えば一度萎れた花を元気にすることや春に起こる目の痒みやくしゃみを減らすこと、夏場に蚊に刺されなくすること、秋に多くの実りを得ること、冬に風邪が引きにくくなることや村を囲う木壁に獣避けをしたりと効果を感じられることもあれば感じられないこともあっただろう。
それらはアッシャー村から外に出ないと気づけないことだけれど>>35問われればちゃんと伝えていった。

毛皮については、昨年末までは熊の毛皮を被ってはいなかった。
この赤毛熊の毛皮を被ることは呪術師"ジジ"を継承することを意味する。
先代を弔いにきてくれた皆の前で熊の毛皮を被り今代の"ジジ"となった。

どうして熊の毛皮を被るのかって聞かれたら――］


『悪い精霊が村に近づいてこなくするためだよ。
　赤毛の熊って森でも一番強い熊でさ。
　悪い精霊も怖がるくらいなんだ』


［って涙目で答えたことは記憶に新しい**］