研究者 シルヴァン

「研究ならどこでもできるから」

[そう言って、王都で学び、研究所に就いてものの、
懐かしい故郷へ戻ってきたのは、つい最近のこと。
言葉どおり、屋敷の自室にこもって、
王都から持ち帰った書物を読みふけったり、
屋敷の庭で薬草を育てたり、と気ままに暮らしている。

久々の…、18歳を超えてからは初めての参加になる
村の祭りに、どこか高揚する想いを感じながら、
男衆に混じって、広場の飾りつけや組木の準備をしていた。]

研究者 シルヴァン

[ 幼い頃は体が弱く、よく熱を出して
　寝込んでいたので、
　昔なじみの、特に年配の人からは、
　無理はするな、と、声をかけられてしまう。]

…あの頃よりかは、丈夫になったんだけどな。

[ ぼやきつつも、心配してくれる声には感謝を。]

研究者 シルヴァン

…ｸｼｭｯ。

[呟いた先から、小さなくしゃみを一つ。

慌てて辺りを見回したが、
先程声をかけてくれた御仁は近くにはいなかった。

ああ、良かった。
出掛ける前だったら、家僕に止められていたか、
散々着膨れさせられて、
作業の邪魔になっていただろう。

幼い頃から屋敷で働いている彼らにとっては、
か弱い幼子の印象が強いのだろう。
これでも彼らより背は高くなっているし、
腕っぷしは、力仕事を生業としている人たちに比べたら 線が細いかもしれないが、多少の重労働は問題はないのだ。だからといって、>>14腕相撲で勝負を挑もうとは思わないが**]

研究者 シルヴァン

─いつかの思い出

いいなぁ。

[アッシャー祭で結ばれた二人の、
仲睦まじい姿をみて、こぼれた言葉。
これ以上にないくらいに蕩けそうな笑顔で
　見つめ合う二人と、 その間にあるお菓子が
　ものすごく美味しそうで、
どちらにより憧れを感じたかは
　今となっては思い出せないが、
　自分の側にいた少女が満開の笑顔でくれた言葉>>36は、覚えている。

いい子だなぁ（かわいいなぁ）。「ありがとう」ってお礼を言っていたら、
　近くにいた大人が、にこにこ良い笑顔で、
　なんかふわふわしたお菓子を
　二人にってごちそうしてくれたんだっけ*]

研究者 シルヴァン

─あの頃

[同じ年頃の友達がいないわけではないけれど、
ひ弱だった少年はやんちゃな冒険にはついていかずに、
代わりに、本の世界を冒険するのが常だった。

まさか自分の元へ小さな冒険者>>69が
やってくるとは思わなかったけれど。
もちろんそれは嬉しいサプライズで。

自分の庭に興味を持ってくれたことに
気を良くして『図鑑』を見せたり、
自分が得た知識を色々披露したり。

だから、彼女が植物の栽培に興味を持ったら、
大喜びで、「フローラなら、できるよ。」

きっと僕より、きれいな花を咲かせられるよ。
　確信めいた強さで、答えたのだった。]

研究者 シルヴァン

[ そんな彼女にあんなことを言われて、
　大人たちに冷やかされることもあったけれど、
　今だけですよって涼しい顔で受け流して。

大人になったら、なかったことにして、なんて、
　言われてしまうだろう。
　もしかしたら忘れてしまうかも、しれない。

　それでも…*]

研究者 シルヴァン

─エキゾチックな幼馴染

[コウセツとは、年は違っていたけれど、
運動が苦手な彼と体力のない自分は、
波長があって、顔を合わせば
自然と話すことが多かったように思う。

コウセツの話す東方の国の話はとても魅力的で、
物語で読むよりもワクワクするものだった。
だから、彼が18になって、修行へ行ってしまった時は
驚いたものの、不思議と納得もできて、
自分も、しばらくは村を離れてみるべきでは？
と、思うようになったのは彼の影響もあっただろう。]

研究者 シルヴァン

[ 王都で治療を受ければ、病気もよくなる、という話もあったから。今までは村を離れたくない、と固辞していたけれど、自分も村の外に出るべきでは、と、思うようになった。

コウセツが１年後に戻ってきて、
お菓子屋さんを始める準備をしていて、
すれ違うように村を出ることとなったのは、
後ろ髪をひかれる思いだった。

開店祝いに、港町である王都で見つけた、東方の国の載った地図を贈ったのはきっと喜んでくれたはず。]

研究者 シルヴァン

[ 村を出るのは進学のため、と皆には行って出ていった。
半分本当で、半分は治療のため。王都での暮らしは、刺激的だった。とはいえ、観光はそこそこに学業と時々通院…そして稀に帰郷。そんな６年だった。]

研究者 シルヴァン

[あっという間の６年だったけれど、
暁亭には帰郷の度に、通っていたし、
屋敷に戻ってからは、週に１度は通っている。

餡の優しい甘さが結構気に入っている。
頭脳労働には甘いものがいい、というのも口癖になった。
村の人から前に売ってたお菓子の話を聞けば、
また作ってくれ、とねだっただろう。

最近では、祭が楽しみだ、なんて話もしたはず*]

研究者 シルヴァン

迷い込んだのは

[ 妖精が現れた。

彼女>>106と初めて会った時、そう思ったんだ。
言っても信じてくれないから、誰にも言ったことはない。
といいつつ、熱にうかされた時に口走ったことはあるかも。

　彼女の出自をきいて、その疑いを深くしたりして。
　ちなみに我が家は変わり者というのもあって、
　引きこもりがちの息子と仲良くしてくれる子は
　大歓迎の構えだったんじゃないかな。
　少なくとも、自分の前で、
　フローラのことを悪くいう人はいなかったよ。]

研究者 シルヴァン

[ それから、
　立派な花屋さんになっているのは知ってるよ。
　ふわり気まぐれに何処かへ飛んでいく妖精ではなく、自分をまっすぐに見あげて「おにいちゃん」って笑っていた妹分ではなく、今は──]

研究者 シルヴァン

現在・広場にて

　…フローラ？

[ こちらに戻って、姿を見たのは、
　今日が初めてではなかった。
　遠くからなら見たことがある。

　今日こそは、と思いながら、見送って、
　意を決してお店まで足を運んだ時に限って、
　配達中とかで、空振りで。

　ずっと会わずにいたのは…
　知りたいけれど知りたくない。
　ずっと聞きたかったけれど、聞けないことがあるから。

　もう、お兄ちゃんとは呼んでくれないんだ。
　だったら、あの言葉も…やっぱり…。

　ポロリ零れそうな言葉を飲み込んで。]

研究者 シルヴァン

　…誰かと思ったよ。すっかり見違えたなぁ。
　…きれいに、なった。

[ 眩しそうに目を細めて、微笑った**]

研究者 シルヴァン

再会

[ もしかして拗ねてる？

久々に真正面から幼馴染>>169を見て、既視感を覚えた。心の声はわからない。

　けれど、なんとなくそう思った。
　なんとなくだから、理由はわからないけれど。

　遠く離れた自分のことなど
　忘れて元気に過ごしているだろうと、
　虫のいいことを考えていたから。

　自身は、忘れることなんてなかったくせに。]

研究者 シルヴァン

　ああ、久しぶりだ。
　うん、ありがとう。

[ 元気そうで何より、の言葉に、
笑みを浮かべて頷いたが、続く言葉に首を傾げる。

　どうして、今、王都の話？

　確かに、王都は人が多いから、
　比例して、綺麗な人とやらも多いだろう。]

　そうだな、王都は各地から人の集まるところだから、
　いろんな人がいたね。
[それほど親交を深めた人がいるわけではないけれど。]

　…ああ、でも、僕のことをお兄ちゃんと、
　呼んでくれる子はいなかったよ。

研究者 シルヴァン

[ それは目の前の君だけ──

　一瞬、あの頃の笑顔を浮かんで消えた。

　けれど、今の君は、真っ赤な顔で、怒っている、ようで。]

研究者 シルヴァン

　あっ、待って。

[ 花飾りを配って歩いている、と、踵を返して
　立ち去ろうとする彼女を止めようと、腕を伸ばした。]

　…忙しそうなのに、すまない。

[ でも、このまま別れてしまうのは、なんか嫌で。]

研究者 シルヴァン

今、忙しいなら…、
明日、明日少し時間をもらえないか？
久しぶりに一緒に祭りを楽しみたいんだ。
…だめかな？

[ 祭りを楽しんで、というなら、一緒に。
無理にとは言わない、って付け足しながらも、
引き止めた腕の力は、少し強かった、だろう* ]

研究者 シルヴァン

[振り向いた君の、ぽかんとした表情>>251を見て、
ああ、やっぱり綺麗だ、なんて思ってしまう。
　
ずっとそばにいたら、こんな時に何を言えばいいか、
　わかっていたのかな？
　そもそも、こんな顔をさせなかったか…。

　そんなことを思っても今更だ。
　王都へ行く（君から離れる）と決めたのは自分だ。
　勝手をしいてる、という自覚はある。
　それでも今はここにいるから、
　今更でも、これくらい大目にみてほしい。]

研究者 シルヴァン

[ 俯いた彼女の返事をしばし待つ。
　やがて、その唇からこぼれたのは─>>252]




　……うん。覚えてる。
　　

　　　　だから、祭りの前に帰ってきたんだ。

研究者 シルヴァン

[ それから、再度、明日の約束をねだれば、
　彼女は応えてくれただろうか？]

研究者 シルヴァン

[ だんまりが続くようなら、流石に手を離して。]

　じゃあ、明日、鬼ごっこしよう。
　祭りの会場で。
　先に捕まえた方が勝ち。

　僕が勝ったら…しばらくは付き合って？

[ それならいいでしょ？って強引に約束。

　じゃあ、またね、と彼女を見送るのも
随分と久しぶりだ、なんてしみじみした後で、　
　自分もまた祭りの準備へと戻るのだった*]

研究者 シルヴァン

近い約束

[ そういえば、君はかくれんぼが得意だったよね。
　僕は、君が堪えきれずにくすくすと笑い出すまで、見つけることはできなかった気がする。不意に咳き込んで、止まらなくなってしまった時は、どこからか飛び出して、背中を撫でようとしてくれたっけ。
　今度は僕がちゃんと君を見つけよう。

　密かに意気込んでいたら、懐かしい単語>>283が耳に入る。]

…………ふわふわ！
　わかった！覚えておく。………ありがとう。

[ ふわふわのお菓子をくれたおじさん>>285。
　今も元気なのは、知っている。まさか今も、あの時の話で彼女を弄っているのは知らなかったけど。偶然会って、すごく上機嫌だったのは印象に残っている。]

研究者 シルヴァン

　なんなら今の内に、屋台を見つけておくのもいいか…。

[ そんなズルを企んでいれば、
　また明日、と、はにかむ笑顔を残して、
　彼女は立ち去っていった。
　もっとよく見たかったけれど、
　引き止めるのは我慢して]

　ああ、また明日。

[ その背中に同じように声をかけた。
　…明日、また会える。そうつぶやきながら、
　準備をちゃんとしないと、と、想いを新たにし、

　　　　　　　アッシャーの青い空を見上げた*]

研究者 シルヴァン

回想・コウセツと

　……草の味がする（甘くない）。

[ はじめて暁亭の飴を食べさせてもらった時に、
　そんな感想を告げたのは今ではいい思い出だ。
　そりゃそうだ、と至極真面目に返されたろうか。
　たとえ本人に言われなくても、
　不調が、喉から出やすい自分のために
　用意してくれたものと思えば、ありがたく頂戴し、
　たまの帰省で、補給しては、
　王都での学業のお供にしていたのだった。

　独特の風味も、多くの愛好家同様、クセになって、
　寒い日などは、お湯で溶かして飲んだりもした。
　一部の学友にはアッシャー村の名物と思われているかも。]

研究者 シルヴァン

[ 今は研究の合間の息抜き、と称して、
　暁亭の常連の一人になっている。]

　それはこっちのセリフ>>205だよ。

[ こうしてまたコウと過ごせて嬉しい、と。
　菓子は美味いし。

他の人から祭りで屋台を出している、と聞いていて、
　密かに楽しみにしていたのだが、
　本人から「今年は屋台を出さない」>>31ときいて、
　ついしょんもりとしてしまったのだった。]

研究者 シルヴァン

…ちょっとは、店を手伝うつもりはあったのに。

[ でも、屋台は出さない、お祭りには参加する…ということは…と、テーブル越しの幼馴染の顔をじっと見つめる。
思えば、コウセツとはそう言った話はしてこなかった。
しなくても事足りるというか、気恥ずかしいというか。
　それでも、よく話題に出る名前は…きっと。]

じゃあ、コウセツ。ちょっと踊りの練習しようか？

[ 不意に言い出して、運痴な友人と、
　コソ練なんぞもしたかもしれない*]

研究者 シルヴァン

時は過ぎ

[ ６年はあっという間だ。

昔、村の呪術師の話を聞きに行きたくて、
“ジジ”の家に押しかけようとしたことがある。
家の正面のよくわからない骨合成獣に戦いて
逃げ出したのが、１回め、
次は赤い熊に驚いて、逃げてしまった。
その姿は見たことはあっても、
遠目で見るのと、間近で見るとは大違いで。

好奇心が臆病に勝つことができたのは、
フローラと同じ年頃の少年（ライト）が、“ジジ”の側にいたからで。
王都に行く前はたまに話を聞きにいっていたはず。]

研究者 シルヴァン

[そんな“ジジ”が亡くなり、ライトが跡を継ぐこととなった。

ライトが、呪術（“ジジ”）の生き字引（忘れ形見）となったんだな。
羨ましい…と思うのはおこがましいだろうか。]

もっと話が聞きたかったな。

[思わず呟くと、複雑な顔をされることがある。
フローラと仲のよいラヴェーナもその一人だったかもしれない。]

研究者 シルヴァン

[ ６年はあっという間だ。

　フローラと同じ年頃の彼女が、
　父亡き後、錬金術師の跡をついだらしい。
　彼女もまた知識を受け継いだのだろう。

　屋敷に配達に来てくれた時に、
　フローラのことを尋ねたら、
　会わないの？と逆に聞かれてしまった>>301]

　…会わない、わけじゃない。
　会ってない、だけで。

[ なんてごにょごにょ言い訳をして、配達してもらった物をすぐ処置しないと、と、逃げるように引っ込んだ。]　

研究者 シルヴァン

[　自分とフローラの関係は、年齢差と身長差のある幼馴染。
　あのプロポーズめいた発言の後も、
　フローラからは「お兄ちゃん」と呼ばれていたし、
　フローラのことは可愛い妹分だと思っていた。
　「お兄ちゃん」に込められた想いに知るよしもなく。

　いつかは、そんなこともあったね、と、
　笑い話になるような、微笑ましい思い出だと。

　幼い頃の戯れが、彼女の“枷”になってはいけない、と、
　そんな想いも、王都行きを決めた理由の一つ。

　離れてしまえば、忘れてしまうだろうと。

　街で似た人がいれば振り返り、
　美味しい食事にありつけば、彼女にも…と思い、
　綺麗な景色を見れば、なぜ隣に彼女がいないのだろう、と思う。

　王都で学んだこと。治療を受けたこと。
　後悔はない。けれど、たったひとつ、たったひとつだけ──]

研究者 シルヴァン

[ 6年はあっという間だ。

　学校の先生が、自分と年の近い異郷の人、となっていた。

　彼女と初めて顔を合わしたのは、
　校長先生からの依頼で、
　屋敷にある文献を授業で使うため、
　そのお使いで来た時、だっただろう。]

　アッシャー村はどうですか？
　僕は最近戻ってきたばかりで、
　今どきのことは、先生の方が詳しいかもしれません。

　……お気に入りは見つかりましたか？

研究者 シルヴァン

[ ついつい村の売り込みをしてしまったが、
　暁亭などで、何度か顔を合わすようになれば、
　彼女の故郷の話も聞けただろうか。

　本を読みたい子がいれば、
　うちの屋敷に来るよう言ってください。
　そういうお手伝いをしてみたかったんです。
　
　そんなことも話したかもしれない**]