19 【R18】アッシャー村の春の祝祭3
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先生 リトリコ
［かぷり、と小さく食した最中に、食べ終わった彼へと無作法ながら視線を向けて 小さく頷いてみせる。>>252
続く言葉は、自身が吐露してしまった不安感に寄り添う優しさが溢れていて。>>252
その一つ一つに心の淵から温かさが沁みていくような錯覚を覚え。
少しだけ、……ほんの少しだけ、視界が潤んでしまったのは内緒の話だ。
どうしよう。どう、しよう。
彼には好きな方がいらっしゃるのに、それなのに。
言い淀んだその言葉の先>>253が、どうか私と同じ思いならいいのにと。
貴方の傍で、知らないものを、新しいものを一緒に見ることができたら。
身勝手な我儘が頭の中をぐるぐると駆け巡って、彼の顔を直視できずに 逸らしてしまった。
だからこそ、彼の柔らかな笑みを見損なってしまったのだけれども。］
先生 リトリコ
これを、自分で作られたのですか。
とても精巧にカットされていますね……。
流石、アロイスさん。
［形から、その首飾りを宛てる相手を月とイメージしたのだろうか。両端に置かれたその小さな丸さは、何だろう。つらつらと推測は立つものの、その先にある相手がちらついて離れない。見せてほしい、とそう呟いたのは他の誰でもない私なのに、と。自然と陰っていく表情筋を律して、笑みを張り付けて その首飾りを眺めた。
優しく照らして人を導いている、彼にとって憧れの存在。>>303
————ずっと憧れていた方が、いらっしゃったのね。
ならば、叶わなくて当然だ。そんなに焦がれていた方がいらっしゃるのなら、応援をしよう。
相手に寄り添って考えられる彼だ、きっと思いは届くし、結ばれるだろう。］
先生 リトリコ
わた、し。
［律していたはずの表情筋が解けて、呆けた表情になってしまう。
そんなはしたない顔を他に見せることなんてあってはならないのに、そんなことさえも些事に思えてしまうほどに 溢れ出してくる情感に思考が攫われてしまって。思考が、追い付かない。］
先生 リトリコ
わたし、のため。
［ゆっくりと彼の言葉をなぞるように、唇を動かして その言葉の意味を噛み締めていく。言葉と意味が直結したその瞬間、ぶわあと一気に頬が真っ赤になっていき、視線がまた地に落ちていく。
あの、……あの。そうやって、言葉に窮する自身は、〝先生〟として見る影もない有様で。］
先生 リトリコ
………、あの。
あの、…………私も。
［顔を上げれば、正面を見据えて 何時も通り真摯な眼差しで此方を見詰める彼の姿があった。
きゅう、とスカートを握り締めて、ひと時も彼から逸らさないように、真っ直ぐに向いて。］
私も、……その首飾りが
私に向けられたものだったらいいのに、と 思ってまして
貴方の隣に居ることができる方が、……私であればいいと
［ばくばくと、巡っていく鼓動の速さが煩く感じる。浅く息を吸って。］
先生 リトリコ
私も、……アロイスさんのことが、その。
……好き、です。
この首飾りも、想いも全て、……受け取らせて、ください。
［そう言って 泣きそうな笑みを浮かべた後、彼の前で頭を垂れる。
首飾りを自身に掛けやすいように、——彼の手で付けてほしいと言わんばかりに。*］
先生 リトリコ
……っ、……ぁ
［あまりにも、……あまりにも近くに、彼の顔があったから。
茹で蛸のように更に真っ赤な頬に、緩み切った口元を隠すこともできずに。
想い人から注がれる眼差しの熱に、きっと酔ってしまったのだと思いたい。］
先生 リトリコ
—広場外れ—
［リトリコさん。>>363
自身の名を呼ぶその甘さを孕む響きにすいと目を細めて、でも。
もうちょっとだけ、欲張りになってもいいのなら。］
……呼び捨て、とかどうでしょうか。
［あろ、いす。
尻すぼみになっていく声のままで、彼の名前を口腔で転がしてみる。
さん付けだと、遠く感じるのだと彼は言った。先生付けだと、〝先生〟としての自分だけを求められているような気がして、遠く感じるのが私。ならば、と。此方からやってみれば 優しい彼はそれに応えてくれるかもしれないと。〝先生〟の肩書きを脱いだ私は、彼に近付くことを許された私は、そんなことを考えてしまう。彼は幻滅してしまうだろうか、それとも。
指先を包み込む大きな手は、そんな不安も消してしまうほどに、温かい。］
先生 リトリコ
………私も、知りたいです。
［彼のことが知りたい。これまでの道筋や、好きなもの。これから先のこと。］
太陽みたいな人だな、と思ってたんです。
［彼が見ていたのと同じように、私だって見ていたのだ。
日夜仕事に励んでいるからこそ、時折でしか村の中で見ることは叶わなかったが。
少しだけ不器用さんで、でも真っ直ぐに向き合える人なのだろうと。
〝先生〟としての私は、そう思っていた。
太陽のように燦々と、周囲を照らしてくれるような、そんな人だと。］
先生 リトリコ
でも、それだけじゃないんだって。
……こうやって、話していて気付くことができました。
そして、その……惹かれ、ました。貴方に。
［寄り添ってくれる優しさや、頼もしさを感じる一面。
それはこの首飾りの石のように、角度を変えれば色味を変えて。］
もっと、私も……貴方のことを知りたい。
貴方と一緒に、同じものを見て、同じもので笑いたい。
［傍に居たら、もっと違う貴方が見られるのだろう。
そして、優しい貴方の隣ならば きっと私も素面で穏やかに微笑むことができるだろう。］
【秘】 先生 リトリコ > 石工 アロイス
［近付く顔に、その意味にすいと瞼を閉ざして 降り落ちた感触を味わう。
ビロードへと縋る手を、そっと包み込む彼の指先に絡めて きゅうと握り締めた。
やがて離れていくのを目を薄く開き、名残惜しく彼の口元を視線で辿って。］
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