灯火の鼓動 エイビ

冷たく湿った夜風の湖畔

[ここは、賑わう街並みから遠く離れた森のそば。
　街燈すらも立たない一帯にひとつ、橙色の灯火。
　夜闇に沈む枯葉を踏む足音はひとつ。だが――]


　もっぺん聞いてもいいか？　やっぱさ、気になってよ。
　アンタ、わざわざなんで一人でここに？
　今夜なら菓子（Treat）狙いのガキらを出迎えたり飲み明かしたり、
　肝試しでもせめて大所帯で来るところだろうに。


[白カブのランタンを掲げながら先導するエイビは、
　相も変わらず足音のひとつも立てないまま、
　後ろについて歩くその人間に振り返って問う。]

灯火の鼓動 エイビ

[闇に鳴る足音は、そこで一度止まる。
　森の乾いた木の葉擦れと、湖の微かな漣ばかりが
　夜風の空気に融けていく。]


　まさかとは思うが――…


[同行者はそこで漸く、小さく口を開いた。
　この人間がここで一体何を打ち明けたかは、
　当人とエイビだけの秘密にしておこう。
　きっと、天国の天使たちにも地獄の悪魔たちにも、
　この秘密が知られはしまい。
　全てを見通す神がおわすならば、わからないけれども]

灯火の鼓動 エイビ

　……うん。　ああ。

　

灯火の鼓動 エイビ

[エイビは目を伏せ少しだけ思案の素振りを見せてから、
　ランタンを持たない方の手を、追従者に差し出した。]


　ま、そうして結局アンタは
　通りすがりのオレに、こうして
　「どこか」への道案内を求めたんだ。
　だったらその「どこか」ってやらも、
　オレが好きに決めさせて貰うぜ。いいな？


[鬼火がわらう、冷たく湿った闇の帰途。
　　未だ今を生きる人の耳には響かせまいと、
　　胸の裡にのみ呟くは、細くも強い蜘蛛の糸。]

灯火の鼓動 エイビ

　　（　素で死者（オレ）なんかが視えちまうのが
　　　　　元からだとしても、
　　　　　ココロまで追い詰められた所為だとしても――
　　　　　他の誰か（オレ）の手に縋りついたアンタを
　　　　　“向こう側”になんざ、連れてかせはしない。　）
　

追想 オクターヴ

『むかし、遠い昔、
　ひいひいおばあちゃんの、さらにおばあちゃん、
　もっともっと遠い昔のお話よ。

　わたしたちのご先祖様は、漁師をやっていたの。
　その漁師のご先祖様がある日、この島の海岸で
　とても美しい女の人と出会ったの。
　ご先祖様はその人を一目見て恋に落ちたそうだけど……』
　

追想 オクターヴ

『その女の人は、セルキー。アザラシの妖精だったのよ』


　

死者の日 イリハモニ

！たったひとりのハロウィンパーティ！

［10/31。深夜を回って日が変わった頃に
　俺は不意に目を覚ます。
　夜になれば街は静かで穏やかだ。聞こえてくるのは
　どこかの家で泥棒に番犬が吠える遠い平穏の音だけ］

　…ハッピーハロウィン、ご先祖様！
　かぼちゃの王様、ジャックオランタン！

［自室には自分一人だけ。
　弟も妹も父も母もジジババだって眠りの中。
　誰もお祝いしてくれねえなら、一人でご先祖様たちと
　こっそりハロウィンパーティするっきゃない！
　パペルピカドの応用で作ったかぼちゃの形の紙飾り。
　昼の外出中にこっそり買った小さな菓子類。
　アップルボビングが何か知らないからとりあえず買った
　リンゴ。
　役者を揃え、一人賑やかなハロウィンを祝う］

幽玄卿 テヌート

『本日20時より、リフ氏、ナハ氏、リミエッタ嬢とのコラボレーション配信を行う。
ハロウィンの夜を共に過ごせる者は来られたし。

【CRABGAME】Haunted house【幽玄卿/Riff/Naha/Limiretta】
https://*****�...
』

幽玄卿 テヌート

―31日　13時過ぎ―

[男は休憩時間に携帯端末でSNSを見て、前日に仕掛けておいた予約投稿で、本日の配信時間についての投稿が出来ている事を確認する。

枠の確保とサムネイル画像は準備していたのだが、コラボレーション相手達が事前に告知してくれている事に気付いたのが一昨日の事。

闇夜に浮かび上がる不気味な幽霊屋敷とタイトルを背景に、個性豊かな格好をした四人組が驚いたり叫んだり泣いたりしているような顔が並んでいる。
リフは都会に出てきた狼男のハーフ、ナハは廃屋で暮らすフランケンシュタイン、リミレッタは半魔のバーテンダーという設定で、リフとリミレッタは事務所に属しており、ナハと男は個人勢だ。]

幽玄卿 テヌート

[今回の『Haunted house』は、最大4名で協力プレイが出来るゲームである。

プレイヤーは雨宿りに入った幽霊屋敷に閉じ込められてしまう。
そこにはこの世ならざる者達がいた。
彼らは脱出する為に、この屋敷に隠された謎を解く事になる。

気になっていたのだが、謎解きや軽度のアクション要素もあるので迷っていたゲームを、一緒にプレイして貰える事になったのだ。
オフに通話していた内容を拾ってくれたナハには感謝だ。]

幽玄卿 テヌート

[今日はコンビニ勤務を終えた後に帰宅して夕食を終え、配信を行う予定になっている。

──もしかしたら、手紙の返事が届いているかもしれない。
そう考えると、配信以外でも楽しみで堪らない。]


……よし、残りの勤務も頑張るか。

[男は休憩を終えると、休憩室を出て行った。]

追想 オクターヴ

― 10月31日 ―

[なんだか今朝は、妙に自然と朝早く目が覚めた。
　今日がハロウィンの日だったな、なんてなんとなく思った。
　ふっと枕元を見てみたけれど、別に何の手紙も来てなかった。]

　なーんだ。

[「あの世からの手紙」が来てないかだなんて、なんか、期待しちゃってたんだな。]

追想 オクターヴ

[……んだけれど、郵便受けのほうにはちゃんと1通届いていて、先に起きていたおばあちゃんが、リビングにまで手紙を持ってきていた。
　昨日までみたいにあたしがなかなか起きてこないみたいだったら、枕元に置いておく心算だったんだって。]

　うにゃ？　これって……。

[昨日あたしがお返事書いたテヌートさんからの返事かな？　って最初に思った。だってあの手紙の封筒とおんなじ種類の封筒に見えたから（切手は黒猫のだった）。……郵便局ってこんな秒で手紙届けてくれたっけ？　ってかテヌートさん秒で返事書いてくれたの？
　って思ったんだけど、よく見たら宛先には「レミニィ嬢」って書かれてた。かっちりした感じの文字で。]

　あ。あー、これって……

[「れみにぃ」はあたしのOnetubeでのニックネーム。アカウント持ってるだけで、特に動画投稿とかしてるワケじゃないけど。その名前で手紙が来たってことは……。]

追想 オクターヴ

　え、え。ウソ。ウソ、ヤバっ、
　手紙ちゃんと届いたんだ！？　すごーい！

「あら？　もしかして、もしかして！
　あの世の人にお手紙を書いていたの、タヴィア？」

　いやそういうワケじゃないんだけど！
　そういうワケじゃないんだけどー…マジヤバ、ヤバっ！！

[だってその人の住所とか書いてないし知りもしないし。切手すら貼ってなかったし。
　それでちゃんと届くとか、これガチ奇跡じゃん〜！！　もしかしてのもしかしてのハロウィンの魔法ってヤツ！？]

追想 オクターヴ

[ってか幽玄卿さん、テヌートさんの手紙とおんなじレターセット使ってるんだな〜って思った。
　もしかして最近の配信でこのレターセット紹介とかして、テヌートさんもそれ見て使ってみたとかかな……なんて考えたりもしちゃったんだった。

　そんな感じであたしは朝ごはんを食べて早々、部屋に戻ってその封筒を開いたんだ。うん、あんまりにもテンションヤバすぎたせいで、ちゃんとメイクするのもマジで忘れてさ。]

死者の日 イリハモニ

『にぎやかだな』

　　　　　　『騒がしいな』

　　『愉快だな』


　『…あいつは何をやっているんだ？』

　

死者の日 イリハモニ

いよっ、ほ…！こんなもんかな…！

［見様見真似で作ったかぼちゃの切り紙飾りを壁から壁に伝わせる。
　昼間に買ってきたかぼちゃはまだ中身をくり抜けていないため
　ジャックオランタンの完成にはまだ時間がかかりそう。］

『何を作っているんだい？』
うし…バレないように彫れるかなっと…！
　　『イリ、相変わらず手先が器用だねえ』　

　［だがそれもまた一興。
　月の出る夜に、魂の灯火を思って
　かぼちゃをくり抜くのは、なかなか趣がある。
　
　それは現世に彷徨っている魂の器を作るような。
　現世と今世をつなぐ道標を作っているような。
　他の誰にも言えない背徳的な楽しさがあった。
　年老いた老人たちも　
　幼くして連れて行かれた子どもたちも
　さまようジャックの炎を頼りに帰ってきてくれたなら］

死者の日 イリハモニ

［更に。今日の俺にはハロウィンを…
　ちょっと不思議なことが起こるときを
　楽しむために、ある秘策を用意していた。

　コンコンゴリゴリとパンプキンを刳りぬきながら、
　半ば祈るように月の見える窓を見上げて
　その来訪を待つ］

『イリ、あんたに手紙だよ』"コトンｯ"

　！！！　『静かにしないとバレちまうぜ、イリ』
　　　ほ、ほんとにきた…！！！

［窓を開けてその下に取り付けていたお手製の死者の郵便受け（ブソン・デ・ムエルトス）に手を伸ばして引き上げる。
　霊界を通じて届く手紙…ならば自分の部屋の窓に取り付ければもしかして…？と思っていたが、大正解だ！！！届いた手紙は…なんと三通も！数日前に出した手紙の数と同じだ…！と感動しつつ、それぞれの封筒を眺めている。

さあっと風が吹く。
誰かが窓の外から入ってきたみたいに］

死者の日 イリハモニ

［こっ、かっ、こっ！と、
かぼちゃを彫り抜きながら手紙を片手で開く。

1通目は無地の生成り封筒。
出てきた文字は思ったよりも丸い。
拙さとあどけなさを感じるその文面は、
字が下手ってより、別種の芸術性を感じる］
『なんじゃあこれは、古文書かい？』
スゲ〜、同じ文字とは思えねえ…
　文字ってこんなに装飾できるんだ
　　『ギャル文字じゃあギャル文字じゃあ』
［かもめの絵柄の切手にハイビスカスのシール。
住所的にはなんとなく海沿いの地域っぽい？

…なるほど、海で死んだ"家族"のみんなに送った手紙が
どうやら別の人に届いたらしい。
誰かの視線を感じながらもペラペラと読みすすめていくと…］

追想 オクターヴ

　やっぱマジだ。
　マジで幽玄卿さんからだ。ヤバち……

[手紙の最初にちゃんとその名前が書かれているのを見て、あたしは改めてハロウィンの奇跡（たぶん）にハイテンション記録達成した。しかもさ、マジで返事なくても良かったのにお返事書いてくれたんだよ？
　宛名書きのもそうだったけど、文字の感じからして古風っていうか丁寧っていうかなんかそんな感じがした。マジリスナーさんに丁寧に向き合って感謝を伝えてくれるダンピールって感じ……いやダンピールっていうのはそういう「キャラ」ってだけなんだけどさ。]

　うん。うん。……

[こうしてあたしはその手紙を読み進めた。
　やっぱ当事者的にはむずかしいこと聞いちゃったよね、なんて一昨日のあたしを振り返ったりもしたワケなんだけど……]

死者の日 イリハモニ

…んえ！？え…！？
アレハンドロおじさん生きてる…！！？
『そ〜そー。アレ坊こっちきとらんのよなあ』
いやでも飲み屋にギターって…！！！
ゼッテーそうじゃん…！
『あいつ何しとるんじゃ〜ほんま〜』
なんだよそうならそうと連絡くらい…！！！
『忘れとるんでしょ。あの子らしいねえ』
［心当たりしかないワードの数々に思わず食いついてしまった。
アレハンドロおじさんは、ギターとともに漁に出て、そのまま海の向こうに連れて行かれてしまっていたが…まさか生きていたとは！

去年『アレハンドロおじさんも帰ってきたかな〜』とか言ってたのは何だったのか。
嬉しかった反面、連絡忘れるんじゃねえ！ちゃんと連絡してこい！とツッコミを入れたくなった］［見守っている魂たちも同意見のようだ］

追想 オクターヴ

　へ？　そうなの？

[いや、「ダンピール」ってそういうヤツなんだってどこかで聞いたかも……聞いてないかも……ちょっとその辺りは置いといて……あたしは目をぱちくりさせた。え？　「エクソシスト」なのってそういうこと？？　みたいな。
　まあなんだろ、その、マジでむずかしいどころじゃなく……。]

　何それエグち……めっちゃ軽く訊いてた……。
　うわー、うわー、うわあ………。

[この時のあたしは、わりとマジでガチで頭を抱えていた。
　いや、これただの「キャラ」の話なんだから、別にあたしが本気でやらかしたってワケじゃないハズなんだけど……。]

追想 オクターヴ

『……アザラシの毛皮をご先祖様に隠されて
　海に帰れなくなってしまったセルキーは、
　結局、ご先祖様と結婚することにしたの』

　え？　それマジヒドくね？　
　一方的に好かれて仲間のトコに帰れなくされて……
　マジご先祖勝手過ぎるヤツじゃん！

『ええ、ええ、そうね。
　それでも“アザラシ女房”はご先祖様を愛して、
　子供たちにも恵まれ、穏やかに暮らしたんだって』

　マジで？　ワケわかんね……。

『そう言い伝えられているのよ。
　でもタヴィア、あなたがそう感じるのも
　自然なことだとおばあちゃんは思うわ。
　だって、“アザラシ女房”はそれから…――』

死者の日 イリハモニ

［続くハロウィンの話を読むと、
どうやら手紙の送り主の住んでいる場所も
ハロウィンを盛大に祝う習慣はないっぽかった。
…だがそれでも、その国の中ではパレードをするらしいし、
小さなものでも祝い事をして、ご先祖様を思っているらしいところにはとても共感が持てた］
［似たような祭り。似たような想い］
［おまけにサメの話もしてくれた！シプリアノおじさんについては心当たりがないようだが（それはそうだ！きれいにペロリと食われちまった）、向こうの人でもサメは怖いようだ］

『サメぇ…サメには気をつけろぉ…ネードするぞぉ…』
ヒエ〜やっぱサメは怖いんだなあ…
シプリアノおじさんが安らかでありますよ〜に…！！！
『ついでに首が増えるぞぉ…芋煮になるぞぉ…』
それにしてもなんか気さくなやつだな、ランタンが完成したら、お返事かくか…！

［似た文化、似たお祭りが寄り添い合う。そんな不思議な感覚がするお手紙だった］

追想 オクターヴ

[……なんて、いつかおばあちゃんが話してくれた言い伝えの思い出も、なんかまた思い出しちゃったんだ。

　あたしは自然と、部屋にまで持ってきていたレターセットに手を伸ばしていた。]
　

追想 オクターヴ

　…………………………。

[なんでこんなこと書いちゃったんだろ。
　でも、ダンピールの幽玄卿さんに聞いてもらうんだったらいいかな。
　あたしの顔も本名も別に教えてない分、たぶん、お互いにそれなりに気軽にできる話だろうし。重くなってないといいな……]

追想 オクターヴ

　[あたしは、何者のつもりでいるの]

　　　　[あたしは普通の人間、
　　　　　　ただの人間、じゃなくて……]
　

追想 オクターヴ

[……だいじょうぶ。重っくるしい手紙にはなってない、ハズだ。

　そうだ、メイクメイク。なんか忘れてた。
　ちゃんと着替えて顔作って、鏡の前でギャルピキメて、それから手紙出しに行こう。

　……なんでこんなに必死になってるの、あたし]

追想 オクターヴ

「っ、もう、あの子ったらどういう心算……」

[鏡越しにヘアメイクとコーデバッチリキマってるの確認していたあたしの耳に、廊下越しにおばあちゃんの声が聞こえてきた。何かヘンな感じ。
　あたしはギャルピしてた手で、部屋のドアを開けた。]

　どーかしたの？　おばあちゃん。

「それがねぇ……」
　

追想 オクターヴ

「お母さんがね、こっちに来るって……
　ううん、もう来てるって言うのよ」

　え？

「タヴィアのことは暫く放っておいてって、
　わたしから電話して強く言っておいたのに」

　…………

「無理に会うことはないわ、タヴィア。
　あなたは部屋に隠れてなさい、
　インフルエンザのフリでもして……」
　

追想 オクターヴ

　　「って、ちょっと、タヴィア！」


[別に毛皮も何も持っていないのに、
　あたしの脚は自然と、廊下から外へと駆け出していた。

　この時ママが玄関先にまで来ちゃっていたかは、記憶にない。
　ただ、ただ、あたしは、まるで町を抜け出した時みたいに。
　はだしのままおばあちゃん家を出て行って、行って、行って……]

死者の日 イリハモニ

『いい色の南瓜だねえ。スープにすると美味そうだ』
［かぼちゃの中身が半分くり抜けた頃。
次の封筒に手を伸ばして、
そのデザインに見覚えを感じる。］

…テヌートさん？
『あれ、昨日と同じ人だ』『届けが遅れてすまんの〜』
［片手でペラリと中を見てみれば、その手紙は「カジェタノ大大叔父さん」宛に綴られた手紙を受け取ったらしき文面だった。彼が今も世界を飛び回っていること…そして彼が帰ってきてくれますようにと祈ってくれていた。］

『いや〜空の旅が楽しくてなあ。心配かけてすまんよお』
もらった手紙といい、テヌートさん丁寧な人だなあ。
ハロウィンの話、前よりもっとおもしれえ…！
アップルボビング、
どんなゲームかきになってたんだよな…！！！
『おやおや、もうハロウィンの話かい。好きだねえ』
［彼が語ってくれるハロウィンの話はとても面白かった。いろんなものを紹介してくれていた手紙だけでは完全にはイメージしきれなかったところが補完されていくようだ。…異国のハロウィンに夢を馳せる］

死者の日 イリハモニ

お返事書きてえなあ…！えーとえーと…
『けどまだ返事が来てないよぉ』
　　　　『届けるの大変だから、ちょっと待っててぇ』
…あ、そうだ。まだ昨日の返事もらってないのか。
それなら、昨日の返事を待ってからまとめて送ろうかな…

［手紙の返事について考えたところで、そういえばこちらが送った手紙がまだ届いてるかどうかわからないことに気づく。もしかしたらまた手紙がすれ違うかもな〜…とおもったので、テヌートさん宛は明日にでもゆっくり書こうと思う。……ハロウィンのことはあまり語れないぶん、『死者の日』の当日の雰囲気を伝えてやりてえなと思っての判断だ。］

…それはそれとして、
アップルボビングはやらねえとな…！
水を持ってこねえと…！『バレるなよ〜』

［かぼちゃはどんどんくり抜かれる。
ボウルに移された中身は明日の朝にでも
こっそりパイにしてしまおう。そう思いながら次の手紙へ］

幽玄卿 テヌート

―31日　17時半過ぎ―

[帰宅時にポストを覗けば、手紙が二通届いていた。
僅かに既視感を覚えるも、昨日の返事であれば早過ぎる。
霊界を通っているのであれば、不思議な事は起きるのかもしれないが。

宛名書きはいずれも男の名前。]

おお……。

[自分が書いた手紙の返事かもしれない。
男はわくわくしながらソファーに座って手紙の封を切る事にした。]

幽玄卿 テヌート

[一通目は丸みのある筆跡。
崖の上の灯台の切手を見た後に、文字を辿る。

手紙の贈り主は生きている普通の人間らしい。
男の手紙への返信のようで、男は思わずガッツポーズを取った。
何と、彼女の高祖母が霊界との手紙のやり取りを経験したようだ。
そういった話を聞くと、俄然、今の状況に説得力が出てくるような気がする。

彼女は死者から手紙が届いたら怖いと感じていたらしいが、実際に死者宛に書かれた手紙を読んで気持ちに変化があったようだ。
どうか、いなくなった友人と手紙のやり取りが出来ればいい。]

幽玄卿 テヌート

[どうやら最近ホラーコンテンツを見ているようで、どんなものを見ているのか気になった。
男のお勧めの配信者を書いてみてもいいだろうか。
布教のチャンス到来の予感に、男はわくわくした。
あまりに押し過ぎると引かれてしまうといけないので、控えめにしよう、と心に決めた。

そうして、もう一通の手紙に手を伸べる。
裏面を見て、目を瞠った。]

幽玄卿 テヌート

イリ・ハモニさんか！
もしかしてそれぞれ送り合っていたりするか？

[同姓同名という可能性もあるが、そんな予想を立てる。
この筆致に、灼熱と珈琲の国というのであれば、本人ではないだろうか。

どうやら彼の街では『死者の日』を盛大に祝って彼岸と此岸を繋ぐらしく、『死者の郵便受け』に手紙を入れると死者の魂と手紙のやり取りができるという伝承があるようだ。
『死者の郵便受け』というワードで検索をかけてみるが、上手くヒットしなかった。
男も詳細は知らないので、現地の人から話を聞くのは興味深い。
もしかすると、噂の原型は其処から来ているのかもしれない、などと、妄想めいた考察が捗る。]

幽玄卿 テヌート

[『死者の日』を祝う関係か、彼の街ではハロウィンを祝う風習はないようだ。
外でイベントを楽しむ傾向の強いハロウィンに比べて、内側で集まる傾向にあるらしい。
日常の延長で死者が傍にいるという感覚があるからか、先祖や生者達も楽しめる事がしたいと彼は書いていた。
生者が自分と違うものになるハロウィンに対して、生者と死者の垣根を無くす『死者の日』は、地域による死生観の違いだろうか。

文面からして相手は外の事に興味を持つ年頃の少年だろう。
故に、やった事のないハロウィンに興味が向かっているという一面もあるのだろうか。
男の書いたものは全てが経験したものではないが、面白いと書いて貰えて嬉しかった。

ミネラルウォーターを飲んで一息つくと、男は便箋を出し、ペンを走らせ始める。]

死者の日 イリハモニ

［そして最後の手紙は…！なんと…！！！］

『おお、有名人じゃ』『こっちでもよく聞く〜』
ま、ま、まじかあ…！！！ジャック…！！！
本物のジャックオランタンからの手紙だ…！！！
『まだ地上におったんか〜知らんかった』

［それは夢のような手紙だった…！！！どこかの国でサンタクロースに夢を見る子供たちのように目が輝く。
だってそう…！あのハロウィンの王様からの本物のメッセージなのだから…！

まだこの世を彷徨ってることを茶化しちゃったことについては、テヘッサーセン〜と舌を出しつつ…彼の教えてくれるハロウィンの数々は、どれもキラキラして見えた…！！！
テヌートさんにも教わったアップルボビングに、
ソウルケーキやバームブラック…！！！

たくさんの遊び心と愉快さが詰まったハロウィンを、
かつては恐れと畏れがあったハロウィンを、
今なお彼は楽しんでいる。ハロウィンの申し子は。
恐れを忘れられた後だって、その祭りは今だって楽しいのだ！］

幽玄卿 テヌート

[そうして書いた手紙はポストに投函した。

いつの間にか予想以上に時間が経っていたので、便箋の補充は明日にしようと決めて、後の時間は夕食や配信の準備に充てる事にした。]

死者の日 イリハモニ

［…手紙の最後の方に心当たりのある文言。
　「死者の日」を大切に。という言葉。

　ご先祖様や土地や、家族との繋がりを
　大切にしてほしいということばには、
　なんとなく痛いところを突かれた気がして
　苦笑いしてしまう。

　家族は近くにいて当たり前だった。
　これからも一生それは変わらないのだろう。
　その確信がある。
　それが退屈だから俺はハロウィンに夢を見ていた。
　けど…この血と魂のつながりは永遠に俺に流れ続ける

　だから、そう。今夜のハロウィンが終わったならば、
　この無骨なジャックオランタンと共に、
　死者の日を大切にしようと思ったんだ。］

死者の日 イリハモニ

　


［くり抜かれたかぼちゃ。
　　目と鼻と口を開いて、不気味に笑う。
　　　俺だけの一夜限りのハロウィンパーティー。

　誰かが一緒に笑ってくれた気がした。

　　　誰かと、家族とやっぱり楽しむ祭りは楽しかった］

死者の日 イリハモニ

…へへへっ…。

［お前が楽しいのであれば、それほど嬉しいことはない］

死者の日 イリハモニ

［机の上にジャックオランタンを飾って、
　中にろうそくを入れて灯す。反射する俺の影が
　ともに笑ってくれているようだった。
　　"私達は、いつもお前のそばに"
　青年は返事を書く準備を始める。
　ハロウィンの申し子へは、また。
　明日の死者の日を迎えてから…届くのなら。
　
　とにかくまずは、海の街の彼女宛に］

死者の日 イリハモニ

［したためた手紙をお手製のポストにコトンといれ、
　ご先祖様に、届けてくれと祈りを捧げる。
　霊魂を通して、手紙はゆらりと届けられる。
　今日は月が綺麗だ。
　何となく、この手紙はちゃんと届く気がした。］

…よーし、楽しむぞぉ…！！！
『おうおう、儂らも楽しむぞぉ』『お祭りだぁ〜！』

［まずは湯桶に水をたっぷり張ってと。
　そこにいくつかりんごを入れて、
　カプッ！と口に加えて見る！
　
　一人アップルボビング大会。
　床がびしょ濡れになるのも気にせず、
　水の弾ける音を楽しむのであった。
　…なぜだろう、くわえていないはずのりんごにも
　小さな歯型が、何故かついたような気がした］

幽玄卿 テヌート

―31日　20時―

[夕暮れの中、古びた教会が佇む待機画面は右端の方でNow Loading...と表示されていたが、時刻になれば、サムネイルと同じ闇夜にぼんやり浮かぶ不気味な幽霊屋敷を背景に四人が並ぶ。
皆、笑顔で身体を左右に揺らしながら口々に“ハッピーハロウィン！”と口にした。]

「都会にやって来た狼男のナハだよー。今夜も楽しい時間を過ごそうね。」
「こんばんは、フランケンシュタインのナハだ。」
「半魔のバーテンダーリミレッタよ。今日はよろしく。」

ダンピールのエクソシスト、幽玄卿だ。
今日は私のプレイしてみたいゲーム『Haunted house』にお付き合いいただく事になった。

「一人では手が出せないと言っていたからな。」
「久しぶりに四人で遊べて嬉しいよー。」
「企画を立ててくれたナハには感謝しているわ。」

幽玄卿 テヌート

[四人が賑やかに雑談をしながらプレイヤーキャラの選択を行う。
ハロウィン仕様でジャック・オー・ランタンや魔女の扮装などを選ぶ事が出来るようになっているらしい。
リフは狼の着ぐるみ、ナハは潜水服、リミレッタは魔女の扮装、幽玄卿はジャック・オー・ランタンの扮装をチョイスした。

そうして屋敷を舐めるようなカメラワークで映した後、プレイヤーが閉じ込められる短いムービーの後、探索が始まった。

屋敷はそれなりの広さがある為、二人組で回る事になる。
リフとナハ、リミレッタと幽玄卿。
TRPGのPCではなく、自らが演じるアバターの人格として話しながらの探索。
彼女とTRPGの思い出話をしながら屋敷内を歩いていると、不意にリミレッタが足を止める。]

「──……幽玄卿。」

幽玄卿 テヌート

どうした、リミレッ……Ahhhhh!

[ドンと言う衝撃音と共に、画面にドアアップで映ったのは、血の涙を流した亡霊の生気のない顔。
幽玄卿の音割れしそうな程の叫び声が響き渡る。]

「走って！」
分かった！

[相方の背を追いかけて振り切った後、男は道中で見つけた回復薬で精神を癒した。]

幽玄卿 テヌート

「落ち着いた？」
……ああ、すまない……。

[幽玄卿は一息ついた。
エクソシストも驚く事があるのね、と言うフォローに内心で苦笑いを浮かべながら相槌を打った。]

亡霊の背後に、扉のようなものが見えた気がする。
「暗かったけど……確かにあったかも。」
あの亡霊が移動するのなら、近付いてみたいな。
「もしくは何かで気を逸らすかね。」

[周辺でアイテムを探し周り、花瓶を投げるアクションがある事に気付き、意識を逸らす作戦に出る。

一方、リフとナハ組は、屋敷で暮らしていた家族に起きた悲劇の痕跡を発見していた──。]

幽玄卿 テヌート

[途中でもう一組と合流し、相方を変えながら、亡霊から逃れつつ、情報を集める。
亡霊を聖水で足止めや、アイテムで気を逸らすなど、途中でギミックもあるので飽きは来ない。

相方が変わればやり取りも変わり、最年少で社交的な性格のリフは男から『霊界との手紙のやり取り』の噂について拾い上げる。
彼はホラーやオカルトには詳しくないが、“楽しそう！”と乗り気だった。
言葉数の少ないナフは、廃屋(家)で飼っている猫の話をして心を和ませる。
男も近所の犬の話をしていたのだが、その直後に亡霊に遭遇して、悲鳴の二重奏が響き渡った。
どちらもアクションに慣れていない二人なので、画面がばたばたと揺れた。

アイテムや散りばめられたヒントを集め終え、四人は亡霊に悩まされていた家族の祖先が作っていた脱出口への扉を開く為に謎を解く。
プレイヤー達が脱出口を見つけた事に気付き、亡霊達が追いかけてくる。

彼らを妨害しながら続けたチェイスの先に、明かりが見えた──。]

幽玄卿 テヌート

「いやー、めちゃくちゃ叫んだ。楽しかったねー。」
「最後のチェイスは熱かったな。」
「チームワークは良かったんじゃない？」

皆、付き合ってくれてありがとう。

「どういたしましてー。」
「いい機会になった。」
「また遊びましょう。」

[三十分程度、四人で感想戦を行った後、リミレッタからオリジナルMVの公開の告知が行われた。
メインボーカルはリミレッタで、コーラスに他の三人が参加しているという試みだ。

自枠のコメントの流れが速くなったのが見える。
幽玄卿は楽曲を出した事がないのだから、リスナーにとってはサプライズだったろう。
近々、四人のチーム名も付けるか、といった話にもなったが、そろそろお開きの時間だ。]

幽玄卿 テヌート

[コメント欄が落ち着けば、四人は別れのあいさつを交わしてそれぞれの配信枠に戻っていく。
ゲームのプレイングに関してが主だが、楽曲に参加する事へのコメントも多かった。

男自身でも驚いているのだ。
けれど、これもいい経験だと思って先達に胸を貸して貰う事にした。]

リミレッタ嬢のMVも是非見に行ってくれ。
俺以外が素晴らしいんだ。

それでは、次回の配信は11月3日を予定している。
また会おう。

[男もリスナーのコメントを幾つか読んだ後に配信を終える。]

幽玄卿 テヌート

[リクライニングチェアで一息ついたところで、メッセージの通知音が鳴った。
リフからだ。

“いくらでも喋っていられる”という言葉に嘘がない程、彼は長時間配信もお手の物だ。
だからもう少し配信を続けていると思っていたのだが。]

『幽玄卿、明日の夜、話さない？
噂の話、もっと聞きたい！』

[明日は昼間にコンビニで働いた後、明後日は完全オフになっている。
男が了承する旨の返事を送れば、待ち合わせの時間と近くにあるカフェバーのURLが送られてきた。]

追想 オクターヴ

　……………どこ、ここ。
　ってか、いま何時……。

[手紙の返事を書いていたらいつの間にか夕方になってた、っていうだるだる休暇あるあるだたったのか。それとも、おばあちゃん家と飛び出してからものっすごく長い間、あてどもなくふらついてたってことなのか。
　まあいまさらどっちでもいいか……、ってワケでもないんだけど。]

　あ、手紙……。

[その手紙は、着てきたうさぎパーカーのちょっと大きめのポケットに仕舞われていた。しっかりしてるぜあたし。
　なんか変に冷静になったあたしは、とりあえず手紙だけでも出しちゃおうってこの時思って、あの海沿いの郵便局まで小走りで駆け出したんだ。]

追想 オクターヴ

[郵便局自体はもう閉まっちゃってた。
　ポストの中身の集荷も、明日からになっちゃうかも。
　でももしかしたら誰か郵便屋さんが気づいて配達してくれないかなーとか……いやそれは残業？ロードーキジュンホー違反？ってヤツなんだっけ。よくわかんないけど。
　いやいやもしかしたらのもしかしたらだ。また今夜ハロウィンの魔法が起こって届いてくれないかな〜とか……]

　……………

[遠くから小さく聞こえてくる音楽は、たぶんあの飲み屋からのだ。
　村のお年寄りたち（この時間なら若めの人もいるかも）がバイオリン？や笛で一斉にメロディ演奏して、ギターの伴奏もついてきて（なんか伴奏だけじゃない気もするけど）、手持ちの太鼓もダダダダダって鳴らされて…………。
　ハロウィンの夜だもんね。こんな地味な村でも、みんなめっちゃ楽しみたいよね。

　でもお仕事終わった郵便局のそばには、あたし以外の誰もいないんだ。]

追想 オクターヴ

　「わたしたちなら　ココにいるよ」
　

追想 オクターヴ

[誰か、あたしを探してないかな。

　おばあちゃん、心配させてるかな。
　おばあちゃんはもう年の所為であんまし身体動かないって言ってたから、村中走り回ってあたしを探しになんていけないと思う。
　他の人に頼んでるかな。誰か、来てくれるのかな。
　……誰もあたしのこと、探しになんて来ないのかな。

　そうだ、ママはここにもう来てるんだ。来ちゃってるんだ。
　じゃあママはあたしを探しに……]

追想 オクターヴ

[……来てるワケないじゃん。
　ママが探してるのは、求めてるのは、「未来のあたし」。
　ママにとって都合のいい、ここにはいない未来のあたしだ。
　ママは、それにパパも、いつだって、「今いるあたし」のことなんて見てくれなかったじゃない。]

『あのね、オクタヴィア、
　勉強は将来のために必要なんだ。
　この時代、ちゃんと大学まで行かないと、
　安定した仕事にもつけないし結婚もできない。
　将来の選択肢の幅が狭くなっちゃうんだよ』

[ね。ママはそう言い続けて、未来ばかりを見続けてた。
　そうやってさ、「今日の」あたしの誕生日のことだって、「そんなことより勉強して」なんて言って、祝ってくれなかったじゃん。

追想 オクターヴ

[だから、「今の」あたしが出会って好きになったギャルファッションだって。
　街で出会ったギャルの仲間たちとの毎日だって。
　ママはろくに頷いてくれなかった。今のあたしのこと、受け入れてくれなかった。]

『あのね、オクタヴィア。
　ママはあなたに、普通の暮らしをしてほしいの。
　穏やかに、人並みに暮らしてほしいの。
　そのためにもちゃんと落ち着いて、
　大学受験の準備だってちゃんとしてほしいんだ』

[「普通」って何？　あたしもママも普通の人間なんかじゃないのに。
　今のあたしが自然と望んだのが、ここにいるギャルなあたしだよ。
　未来のことなんて見えないし見られない、今しか見えないあたしの。]

追想 オクターヴ

[パパはママほどうるさく言わない。
　でも、仕事と自分の趣味にばっか出かけて、ママとはあたしの進学先のことで論争ばっかしてて、いざあたしと顔を合わせりゃ「勉強はかどってるか」ばっか言ってくるパパだって、ママと大して変わらない。

　学校で会ってた友達も、最初のほうはさ、たぶん、いい感じに仲良くなれそうだった。
　でもみんな次第に進路とか成績とか、塾とかなんとかのこと気にし始めて……。
　なんとなく、そこでもあたしは居心地悪くなり始めて……。]

追想 オクターヴ

[やっと、やっと見つけたと思ってたあたしの居場所。
　賑やかだけど他愛ない、仲間たちとのストリート。そんな今を、今のこの一瞬を精一杯楽しむ場所。
　でもそこだって永遠じゃないんだって、もう解ってる。
　だってあのコも、あのコも、……あのコだって、もう、]

追想 オクターヴ

　　　「わたしたちが、あなたの居場所だよ」
　　　　　　　　　　　　「わたしたちは、いなくならないよ」
　

追想 オクターヴ

[陽が落ちて暗くなって、潮風がふっと変わって。
　海の方に向かう強い風に促されるみたいに、あたしは真っ暗な海の方を見た。
　波間にいくつか……ううん、たくさん、何かが顔を出しているのが見えたんだ。]

　アザラシ？

[はっきり見えたワケじゃないけど、あたしはすぐにそう思った。解った。
　そう解った瞬間に、あたしのはだしの脚は動いていた。不思議と足の裏は痛くなかった。
　郵便局の前の道路から、海岸の岩場まで、あたしはひとりで歩いて行って、]

追想 オクターヴ

[……行って、いって、波の音を聞いたんだ。]


　　「おかえり、オクタヴィア」


　　　「おかえり、オクターヴ」


　　　　　「今夜なら、ココに帰ってこられるよ」


　「やっとまた、このハロウィンが巡ってきたから。
　　最後のあの夜から長かったけれど、
　　わたしたちはまた、こうしてあなたたちと繋がれるの」

追想 オクターヴ

　　　　　　今、帰るね。みんな。



[あたしは、波の中に飛び込んだ。]